【A1-3】語り手の夜

 GM(あんみつ) [2015/10/05 22:25:03] 
 

オレットの依頼を受諾した四人は、共にルキスラを発ち、コンチェルティアを目指す。
西方まで三日ほどの旅路である。

街道を行く前に四人は大切な場所へと向かう。
ティキの相棒――雷竜ニコデムスを迎えに行くのだ。

   *   *   *
 
ルキスラを少し出たところの郊外に目的の場所はあった。
ライダーギルド――行商が、旅人が、そして冒険者の騎手たちが集う夢の園である。
馬の嘶く声。聞こえてくる大きないびきは奥の方で眠る竜のものであろうか。
少し離れたところに見える倉庫には魔導バイクでも入っているのかもしれない。

「よう、ティキじゃねえか。
 あいつってば、しょんぼり寂しそうにしてたぜ?」

ギルドの領内に踏み入れたティキに届くのは、大きくハスキーな声。
振り返るとそこにいるのは赤色のかなり短めに刈り上げられた背の高く程よく筋肉のついた日に焼けたシルエット。
その勇ましい顔つきだけを見れば男のようだが。
――豊満な胸部を強調するように露出度の高い衣服が女性としての魅力を振りまいている。
彼女こそギルドのメンバーの一人で、主にドラゴンの世話を担当している――ケイトである。
もちろん雷竜であるニコデムスも彼女の担当である。

「ちゃんと、俺がお前の代わりにお世話してやったからな。
 でもなぁ、昔に比べると最近あいつ昔に俺に対してちょっとつれないんだよな。
 絶対お前のせいだと思うわ、うん。
 ま、すぐ連れてくるからそこで待ってろよ」

ケイトの言う通り、お目当ての相棒は直ぐにやってきた。

「ほらよ、おまちどうさん」

紫紺の鱗。パートナーとお揃いの青緑の瞳を持つ竜の赤子。
雷竜ニコデムス――ティキの眼前に姿を現した。

「ドラゴンか――僕もあまり見たことはないけど、やっぱりかっこいいものだね。
 主人公の勇者の相棒によくなるのもわかる気がするよ」

「なぁんだ、兄ちゃん。ひょろ弱そうだけどよくわかってんじゃねぇか。
 ちょっとだけ見直したぜ」

ニコデムスに対して素直な感想をこぼすオレットに対して、ケイトのからかいが飛んだ。

   *   *   *
 
それなりの冒険者が四人と竜が控えているからか。
狼等の野生動物や低級な妖魔たちとの本格的な遭遇もなく、
彼らの歩みは極めて順調なものであった。

道中二日目の夜、五人と一匹は草叢の上で夜が明けるのを待っていた。
穏やかで心地よい風が背中を撫でていく。
空は晴れきって、空に真ん丸と浮かぶ月が綺麗だ。
星はまるでどこまでも続くように広がっている。

「こういう綺麗な夜空を見ると、少しロマンチックな気分になるんだ。
 恋の歌でも歌いすぎて――ついつい当てられたかな」

オレットは丁寧な当初の状態と比べると、
だいぶ砕けた――でも穏やかな様子で話していた。
これが、どちらかというと本来の彼なのであろう。

「恋の歌と言えば――そうだ。
 少しだけ話した伝承の中ではコンチェルティアの森に住む妖精が、
 ある男の愛しい人へ想う愛の深さに胸を打たれて力を貸したそうだよ。
 なんでも、昔高い塔の上から降りられなかった女性(ひと)を助けるために、
 彼は妖精の力を借りてその天辺まで舞い上がって助けたんだそうだ。
 面白い話だよね......君たちはこの話、本当のことだと思うかい?」

普通に考えれば、荒唐無稽な話である。
だが、事実は小説よりも奇なりともいう。
この出来事が真実かどうか物語の登場人物のみ知るところである。
今という時代を生きる者たちは、この出来事を伝承という歌物語を通して想像するしかない。
――若しくは物語の鍵となる妖精本人に尋ねるか。

ちなみにヴェンデルベルトはこの伝承の内容についても覚えがあった。
他に至高の歌い手と呼ばれた乙女の声をその力で世界中に届けたとか。
卑しい商人が大きな翡翠を持ち込んだ時は宝石だけ奪って商人を地の果てまで吹き飛ばしたとか。
嘘みたいな伝承の中にその妖精が登場していることを彼は知っている。

「僕は――本当だと思いたいな。
 そうすれば僕の願いも叶うかもしれないから......そういえば」

オレットはふと思い出したようにヴェンデルベルトの方を見やる。

「僕の探している人について聞きたいって言ってましたよね。
 実はうまく説明するのが難しいんだ。
 僕の幼馴染だけど幼馴染じゃなくて......知っている人だけど知らない人。
 ――でも間違いなく、僕にとっては大切な思い出深い人なんだ」

星を見上げてしみじみとオレットは語る。
ヴェンデルベルトは少しはぐらかされたと感じてもいいかもしれない。
それでも、彼の気持ちはこの場にいる四人――若しくはもう一匹にも伝わるだろう。
ちょうど夜空の隅で流星が駆けたように見えたのは幻だったであろうか。

「あ、そういえば君たちはこのまま直接森に向かうかい?
 それとも少しコンチェルティアで休んでから行くかな。
 僕はどっちでもいいよ――もちろん早く森に行きたいとは思うけれど。
 僕は君たちを信じてるから。君たちに任せるよ」


―――――――――――――――――――――――――――――――

あんみつ@GMより

こちらがメイン進行です。
少なくともこちらの記事に対してはお返しを宜しくお願い致します。

前半部はライダーギルドでのシーンです。
【ケイト・ガルグイユ】について『演者の一覧』に登録しておきます。
ニコデムスとの感動の再会シーンも描こうとしましたが、
いつもと違うニコデムスになるのもあれなので、出た瞬間で止めました(・∋・)
キャスパーさんはお好きに書いて良いのですよ。勿論他の方々も。

後半部はルキスラを少し出たあとの夜のシーンです。
柑橘さんのダイスの出目はここで使用させていただきました。

>少しだけヴェンデルベルトの返しを追記しております。

皆さんは今後の行動をご決定ください。
主な選択肢は2つです。

・コンチェルティアの森にそのまま向かう。
・一度コンチェルティアを訪ねる。

他にも行いたい行動があればそちらでも構いません。
オレットは皆様に完全にお任せします。

また次シーンも時間を一気に進めますので、
この場面で質問がございましたら、こちらでお願いします。