【A1-1】詩人の見る夢
一言で言えば喧騒。
人によっては愉快と呼ぶかもしれない。
その日の火竜の手羽先亭は賑やかだった。
どうやらあるパーティーが遺跡で一山当てたらしい。
肉の匂い。酒の空気。隠し味に辛味を添えて。
彼らの奢りで真昼間から大盤振る舞いだ。
そんな中に彼らはいた。
近頃その名を耳にする【探求者《Seekers》】。
そのメンバーであるヴェンデルベルトとティキの二人。
そしてまだ雛鳥のように未来に満ちた冒険者――タタラとプラリネだ。
大騒ぎの中心にいるか。
はたまたそれは近くで傍観しているか。
それとも関する事なく、ただ静かに過ごしているか。
今この瞬間は其々であった。
――彼がこの店を訪ねるまでは。
* * *
彼の名はオレット・フォルバードという。
金色の肩までかかる煌く紙の上に深い朱色の帽子をかぶっている。
よく目立つ風貌もそのはず、彼は旅の吟遊詩人だという。
そして今この場にいる四人の冒険者にとっては――依頼人だ。
オレットが手羽先亭を訪れたのはつい先刻のこと。
彼は店内の酒宴には目もくれず、手馴れた様子でナゴーヤの元へ赴いた。
オレットが持ち込んだ依頼に対して名乗りを上げ、ナゴーヤが選んだのはこの四人。
そして、肝心の依頼内容はというと......。
「コンチェルティアに訪れたことはあるかい?
あの街の近くに森があるんだ。
そこまで僕を案内して欲しいんだ......今の僕はあんまり強くないからね」
ルキスラから西方へ三日ほど往った先には一つの街がある。
その名も"花開く街"コンチェルティア。
詩歌や絵画、舞踏や演劇など芸術に夢を馳せる者たちが集うとされる街だ。
その北方に広がっている森林こそ、此度の依頼の目的地――コンチェルティアの森である。
比較的穏やかで凶暴な魔物もほとんど見かけないという森であるが、
そこには強大な妖精が隠れ棲んでいるという伝承もあるという。
「よかったら、その森に住む妖精を探すのを手伝って欲しいんだ。
もしいないなら、それでも構わない。
僕もいろんな伝承を歌ってきたけれど、その中には完全な創作だって少なくない。
それでも、僕は可能性に賭けてみたい......そう思ってる」
頭の固い人間が見れば、馬鹿な男だと断ずるかもしれない。
それでも、彼の蒼い目には決意の心が浮かんでいた。
何かが欠落して、その何かを追い求める寂しさを漂わせて。
「僕には、助けたい人がいる。
けれど、僕はあまりにも無力だった。
所詮旅の詩人にすぎなかった。
でも、僕は諦めきれなかった。
諦めなかったから......僕は少しは戦える力だって手に入れた」
そう話すオレットの腰にぶら下がるのは小さな小箱だ。
まだ新しいそのケースは、小さな宝石箱だろうか。
「嘘の可能性が高くても、僕は諦めない。
伝承の中ではかの妖精は人間に大いなる力を授けたらしい。
僕はもっと強くなりたい。
そのためならば、歌い続けられるし。戦い続けられる。
だから、どうか......」
オレットは四人の冒険者の顔を一つ一つ眺めていく。
その瞳に迷いはない。
「どうかお願いします。
前もって渡せるお金はありませんが、結果によらずお礼はさせていただきます。
だから......僕に皆さんの力を貸してください」
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あんみつ@GMより
こちらヴェンデルベルトとティキの探求者《Seekers》のおふたりと、
タタラとプラリネ用のカテゴリです。
4人のPCの日記はこのカテゴリにご記載ください。
皆さんは手羽先亭でオレットからの依頼を受けたところです。
その前の手羽先亭での一時はお好きなようにお書きください。
また、【オレット・フォルバード】を『演者の一覧』に登録しておきます。
【"花開く街"コンチェルティア】について見識判定が可能です。
目標値は8。成功すれば『出立の曲目』に記されたことがわかります。
【コンチェルティアの森】について見識判定が可能です。
目標値は12。成功すれば『出立の曲目』に記されたことがわかります。
【コンチェルティアの森】について見識判定が成功したPCのみ、
【妖精の伝承】について見識判定が可能です。
目標値は15。成功すれば『出立の曲目』に記されたことがわかります。
次シーンは時間を一気に進めますので、
何か依頼に関して質問がございましたら、こちらでお願いします。
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