相棒たち
>「よう、ティキじゃねえか。
あいつってば、しょんぼり寂しそうにしてたぜ?」
ライダーギルドへ踏み込んですぐ、聞きなれた声がすっ飛んでくる。
そちらを振り返ると、思った通り大柄な女性が立っていた。
「ケイト、久しぶり。最近勉強してるものがあって、ちょっとね」
>「ちゃんと、俺がお前の代わりにお世話してやったからな。
でもなぁ、昔に比べると最近あいつ昔に俺に対してちょっとつれないんだよな。
絶対お前のせいだと思うわ、うん。
ま、すぐ連れてくるからそこで待ってろよ」
聞いて、ぶはっと噴き出した。
「そりゃ悪かったね。でも、あいつはもう私のものだよ」
聞いているのかいないのか、ケイトは一度騎獣舎へ入っていくと、すぐに私の騎獣を連れてきた。
>「ほらよ、おまちどうさん」
連れてこられた私の騎獣。幼龍は大きく伸びをした。
日の元に照らされ、紫紺の鱗は一層深く輝いている。
『ニコデムス。調子は?』
私が声をかけてやると、ニコデムスは翼をばたばたやりながら唸る。
『ナマってるかも。ナニしてたの?』
「えっとね......」
「―おいで」
腿に巻き付けた宝石ケースを見せながら、翡翠が入っているあたりをこつこつと叩く。
途端に宝石が輝き小さな影がふわりと出てきたかと思うと、すぐに私の髪の中へ隠れてしまった。
「エコー、またよろしく」
「よろしくー」
今呼び出したのは風の妖精、エコーだ。恥ずかしがり屋だが、返事だけはかならずしてくれる。
「今回はこの面子で仕事だから、顔覚えておいて。そしたら帰っていいよ」
エコーは髪の中から顔だけ出して、みんなをぐるりと見回した。
「この前のうさぎさんだ」
本当に小さな声で少しほっとしたように言うと、ヴェンさんが何か言う前に顔を引っ込め、そのまま姿を消してしまった。
あのエコー、ヴェンさんを覚えていたか。もしかしたら、ミントのことも覚えているのだろうか。
ニコデムスに向き直り、再び声をかける。
『見た、今の?たまにこういうのと一緒に行くことがあるだろうから、覚えておいて』
『......ワカった』
そうこうしていると、タタラが興奮気味に私にたずねてきた。
>「ティキさん!ドラゴン、さわってみてもいいですか?」
「いいよ、一応あごの下あたりには触れないようにね。『―攻撃するなよ、ニコ』」
>「よろしくおねがいしまーす...」
うん、少々イラッと来ているみたいだが、撫でられても大人しくしている。いい子だから、そんなに睨んでやるな。
それにしてもいきなり頬を触りに行くなんて、意外と物怖じしない娘なんだろうか。
「―さてみんな、寄ってもらって悪かったね。出発しようか」
皆に声をかけ、龍の背に跨る。久々の仕事に、ニコデムスは落雷のような咆哮をあげた。
* * *
二日目の夜。
愛用の槍の手入れをしていると、オレットはふいに語りだした。その視線を追うと、星と月とが真っ黒な空に煌々と光っていた。ああ、確かによい夜だ。
彼が語ったのは、妖精の助けを借りたという歌物語だった。
>君たちはこの話、本当のことだと思うかい?」
本当かどうか、か。
自分の宝石のケースに手を当て、ゆっくりと撫でる。
「大地を揺らす。大河の流れを変える。物を一瞬にして灰にする。瞬間移動、姿を消す、記憶を奪う。全て妖精の力で可能なことだ」
実際に己が使ったわけではない。だが、私だって勉強したのだ。
「その話に妖精が本当に絡んでいるのなら、風に人を乗せるぐらい造作もないだろうさ」
私は出発の折、一度妖精を呼び出した。あれができるのは、ものを少し浮かすくらいのものだろうか。だがもっと高位の妖精であったら、おとぎ話のような事でもあっさりやってのけてしまうのではと思う。
>「あ、そういえば君たちはこのまま直接森に向かうかい?
それとも少しコンチェルティアで休んでから行くかな。
僕はどっちでもいいよ――もちろん早く森に行きたいとは思うけれど。
僕は君たちを信じてるから。君たちに任せるよ」
「このまま直接、森へ向かいたい。出発前にヴェンさんが、宿の主人に街で事件が起こっていると聞いたそうだ」
コンチェルティアには私も寄ってみたいが、今は仕事。全員にまだまだ余裕はあるし、無理して不穏な話の上がっている場所に行くこともないだろう。
「もちろん護衛はきっちりやる。―探し人、見つかるといいね」
最後にそう声をかけて、私は再び武具の手入れに戻ることにした。
PL
長いかも。ギルドにて、フェアリーウィッシュ行使しました。
19:36:59 キャスパー@ティキ 行使判定 2d+5 Dice:2D6[2,4]+5=11
『』内の台詞はドラゴン語です。ドラゴン語を取得している人のみ理解できるってことで。