コンチェルティアの森へ
宿を出る前にナゴーヤ殿がいるカウンターへ向かい、コンチェルティアの噂を聞くことが出来た。
>「最近はどうやら雲行きが怪しいな、貴族の令嬢が邪教の教団に攫わてからだ。
> ついこの前は、何やら立て続けで人殺しもあったそうだ――しかもキナ臭いやつがな」
どうやら、かの街は華やかなりし、と言うだけではないらしい。目的はその周辺の森であるから、なるべく関わり合いにならないよう行動したいものだった。
保存食も3日分貰う事が出来た。全員分に配られたそれは、もはや慣れた味だった。
◇ ◇ ◇
ティキがニコデムス君を迎えに行くと言うので、私も同行させてもらう。
竜の仔と聞いて興味がわいたのか、全員で行くことになった。
ライダーギルド。騎獣と呼ばれる生き物たちを管理、育成、調教する組織だ。
私はあまり自分では利用しないが、ティキの連れとしては何度か足を運んでいる。
いつ来ても興味深い場所である。
馬の嘶く声、ドラゴンのいびき。上空には調教中らしきペガサスの姿も見える。
お互いを相棒として動く戦場での姿に、私は何度見惚れただろう。
ドラゴンの調教係であるケイト嬢は今日も元気そうだ。はつらつとした姿は、ハッとするほど美しい。
連れられてきたニコデムスはもうティキを相棒として認識しているらしい。ほかのものにレンタルされても反応が悪い、とのことだった。ライダーギルドには悪いが、大変に微笑ましいことである。
ティキがニコデムスと対面し、妖精を呼ぶ。エコー。小さな少女の姿の妖精。
>「この前のうさぎさんだ」
彼女にそう言われ、返事をする前に消えられてしまった。かの妖精は全く人見知りで、可愛らしいものである。
>「―さてみんな、寄ってもらって悪かったね。出発しようか」
「ええ、行きましょうか」
ティキと、ニコデムスの号令で、私達は街道を進むことになった。
◇ ◇ ◇
道中二日目の夜、私は日課となった紅茶を入れて、炎を囲んでいた。
紅茶が苦手なティキには、気に入って貰えたらしい緑茶を入れる。
美しい夜だった。脅威はなく、空は晴れ渡っている。月と、それに負けじと輝く星たち。
月と星にまつわる逸話はたくさんある。そう、あれは...
>「こういう綺麗な夜空を見ると、少しロマンチックな気分になるんだ。
> 恋の歌でも歌いすぎて――ついつい当てられたかな」
「良いことだと思いますよ。情緒豊かな証でしょう。それこそ、吟遊詩人には執拗な資質です」
依頼人のオレット氏は、道中弱音を吐かなかった。吟遊詩人であるのだから、旅には慣れていると言う事もあるのだろう。少しずつではあるが表情も柔らかくなって、態度も気安くなった。
コンチェルティアにまつわる恋の話。この場合注目すべきは妖精の助力があったと言う事だろうか。
「あぁ、その話は私も存じておりますよ。確か他の話もあったはずですね。確か...」
私の知っている逸話も話してみると、存外多くの妖精に関する話が残っていることが分かる。
ならば、これは根も葉もない話ではないのだろう。
>「僕の探している人について聞きたいって言ってましたよね。
実はうまく説明するのが難しいんだ。
僕の幼馴染だけど幼馴染じゃなくて......知っている人だけど知らない人。
――でも間違いなく、僕にとっては大切な思い出深い人なんだ」
覚えていたのか。そうは思ったが、なにやら表現は曖昧で、不確かなものだ。はぐらかされているような気もするし、何やら言う決心がまだついていないような気もする。
しかし、かの人のために、と言う芯の部分は確かなようだ。
ならば、おいおい話してくれることもあるだろう。私は納得することにした。
「では、直接森へ行く、と言う事で宜しいですね」
ナゴーヤ殿に聞いた話をすると、皆の意見は一致した。保存食の余裕があるし、万が一の時は食料の買い出しにのみ行けばよい、と言う結論になる。
紅茶の蓄えが少なくなっていることだけが、唯一の不満だった。
GMさんへ
ゴーレム作ってても良いですか?寝る前に作るかんじでお願いします