出立
> 「クーガだ。多少荒事には慣れてんが、メインは斥候、よろしく頼むぜ。美人ちゃん?」
「びじ――?
ああ、プリアーシェです、クーガさん」
悪意がないのは解っている。
まあ、こういう職業に就くような人族の間では挨拶代わりの軽口だ。
自分の姿かたちについては自覚がある――というよりも、『整った形にしすぎると近寄り難くなる』という理由で敢えて『どこにでもいそうな容貌』に造られた、というのだから、過分な期待など抱きようがない。
それでも十人並みよりは整った容貌にしてくれたのは設計者の親心というものだろうか。
こういう軽口は真に受けてはいけない、というのが世代を超えた経験則で、しかも『こういう軽口でちょっと気分がよくなる』(というか、まあ、そういった反応を示す)というのが世代を超えたフィードバックの成果だったりする。
いずれこのあたりはあまり矛盾のないように纏められる予定だったのだろうけれど。
これだからプロトタイプは、と少々ぼやきたい気分になる。
自分のことながら面倒な話だ。
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
> 「ああ、前にちょっとな。」
知り合いなのですか、という私の質問に、クーガさんが答える。
あまりよい関係でなかった、と察せられるような表情だ。
もしくはその仕事に関して、なにかよくない記憶があるか。
そういう関係の相手に、おそらくは重要で、かつ内密の仕事を依頼するというのはどういうことだろう。
少し考えて、今は情報が足りないな、と判断する。
棚上げが私の結論だった。
> 「状況的に急いだ方がいいだろう、直に出れんなら出たほうが良い。」
依頼は受ける、ということよね。
では、と答え、私は席を立つ。
荷物はそう多くないし、まとめてあるから旅支度に時間はかからない。
彼の――クーガさんの言うとおり、すぐに出られるだろう。
■PLから
とりあえずレスレス(''