交渉

 プリアーシェ(Lain) [2015/10/17 17:42:51] 
 

> 「七色の調べ亭だ。
>  3番街で一番大きな店だから、すぐにわかるだろう」

「わかりました、ありがとうございます」


※ ※ ※ ※ ※ ※ ※


> 「だいたいのことは、言われなくともわかっていたつもりさ。
>  ただ、俺と協力したことであの家が――ヴィクトリアが巻き込まれていくのは見たくなかった。
>  力を借りるべきであることは分かっていても、気持ちが許さなかった」

 人間というのは不思議なものだ。
 最適解を把握しながら、あえて最適でない行動をすることがある。

 人に近づくということは、つまり、そういった欠点も含めて近づくということでもある。
 そのあたりを、私を作ったひとたちはどう考えていたのか。
 今となっては知るすべもない。

 しかし、『あえて最適でない行動をとりうる』というのが人の特性であるならば、人として振る舞え、ということは、そういうこと――必ずしも最適でない行動をとりうるということを想定に入れた上で己の行動を選択せよ、ということでもあろう。
 シミュレーションとしては要素が複雑化しすぎて先を追いきれない。

 わからないことをわからないままで意思決定せよ。
 あるいは、想定外の事態に対応できるバッファを用意しておけ。

 ひとまず私に理解・解決可能な形に命題を置き換え、そういうものなのだなと心にしまう。


> 「プリアーシェさんが仰ったように、キャピレット邸へとこれから向かいますね」

> 「これから、調査の方に行かれるんですよね。
>  ――どうかお気を付けて」

「お手間をかけますが、よろしくお願いします」

 キャピレット邸へ向かうというミハイルさんと玄関前で別れ、私は冒険者の店へ――七色の調べ亭へ向かった。


※ ※ ※ ※ ※ ※ ※


 冒険者の店はすぐに見つかった。
 なるほど、大きな店構えだ。

 けれど、なにか様子がおかしい。
 賑わいというのではなく、どちらかといえば騒ぎ。有体に言えば争う物音と声。


> 「つまり、このまま放っておけっていうことかよ?
>  この店の中に犯人がいるかもしんねえのに、黙って見過ごせってか?ああ?」


> 「違うよ、君は間違っている。
>  たまたまこの店のエンブレムが現場にあっただけで、それが事件と関わっている証拠はない。
>  ――それに、あの事件はもう終わりかけているじゃないか。
>  静まりかけている事件を今になって掘り起こす必要はないだろう?」


 店内で対峙するふたりの冒険者が主張しあう。
 なるほど意見が割れているか。たしかに、いずれ過ぎ去る嵐であれば、頭を低くしてやり過ごすという手段もありうる。

 まあ、実際そうであれば楽なのだけれども、ミハイルさんやエミールさんの話を聞く限り、そうは思えない。

 割って入るには自信がないし、そもそも私は余所者だし、ご主人にお話を――と思っていたら、よく通る声が聞こえた。


> 「あんたたち、いい加減にしなさいな。
>  これ以上暴れるなら店の外――いや、街の外でやりなさい」

> 「私はあんたたちに大喧嘩させるために店番を頼んだわけじゃないのよ」


 この口ぶり。場を収めたのが、どうやらこの店のご主人のようだ。


> 「でもよぉ、アンネの姉さん」

> 「グラディウス、黙ってやるのよ。
>  リオン、勿論貴方もよ」


 女主人がアンネ、ナイトメアがグラディウス、優男がリオン。
 なるほど、と心に留めておく。

 ふと周囲を見回すと、目に留まったものがあった。
 銀髪の少年と、そしてふたりの冒険者。
 ふたりともルキスラで会ったことがある。たしか同じ宿の冒険者。

 名は、なんといったかしら。

 一人の――タビットのほうが、手羽先亭のエンブレムを身に着けているのを確認して、記憶に間違いがないことを確かめる。

「こんなところで同じ店の方とお会いできるとは思いませんでした。
 プリアーシェといいます。仕事の話で来たのですが、ひどい有様ですね」

 会釈して近づき、そう声をかけた。

 場が収まったところで、2人はここに宿を取るつもりのようだ。
 そういえばこの銀髪の子は誰なのだろう。依頼人、というわけでもなさそうだし。

「では、私はこちらの御主人とお話がありますので。
 よろしければ、また後程」

 もう一度会釈して、カウンターへ向かった。


※ ※ ※ ※ ※ ※ ※


「この店の御主人はあなたでしょうか。
 仕事のお話があります。ヴォルディーク家からの――カイル・ヴォルディークからの要請です」

 言いながら、信任状をカウンターに置く。

「用件についてはおわかりでしょう。
 コンチェルティアを騒がす事件の解決について、です。
 カイルさんは、この店に協力を依頼したいと考えておられます。
 申し遅れましたが私はプリアーシェ。ルキスラの冒険者の店、火竜の手羽先亭の冒険者です。
 今回、故あってカイルさんの使者を務めています」

 店の片付けをしているふたりにちらりと視線を送り、続ける。

「先ほどのお二方のお話、聞かせていただきました。
 カイルさんは、残念ながら、事件はまだ終わっていないと考えています。
 理由は――今は、ある筋から得た情報により、としか申し上げられません。
 この店は第4の事件で名誉を汚された。そのような中、5件目が起きたらどうなるか、想像するのは容易いことかと存じます。
 そして、グラディウスさんがおっしゃったとおり、今この店はよくない立場に立たされています。
 例のエンブレムが本物であるにせよ偽物であるにせよ、汚名を雪ぐにはこの店の手で犯人を挙げるか、少なくとも解決に協力したという世評を得る他ない、と考えます。
 問題は、解決に必要な情報ですが――私の見るところ、情報の入手にも苦労されるのではありませんか?」

 衛兵からにせよ、聞き込みにせよ、犯人の一味と疑われた店の冒険者に協力的な態度を取る者がどれだけいるか。

「ヴォルディーク家が提供するのは情報と、そしてあなた方が解決に向けて協力をしたという風評です。
 この店に提供していただきたいものは人手――それも、腕利きの冒険者という人手です。
 私たち――ヴォルディーク家と七色の調べ亭の利害は概ね一致すると考えますが、いかがでしょうか?」


※ ※ ※ ※ ※ ※ ※


 一旦話を区切ったあとで、私は重ねてアンネさんに問いかける。

「エンブレムについて、少し教えてください。
 この店のエンブレムは、例えば、番号を刻印するなどして真偽や持ち主が特定できる種類のものでしょうか。
 あるいは、形を似せてしまえば外見から真偽を判断しがたい種類のものでしょうか」

「もう1点、4件目の事件から現在まで、連絡の取れていないエンブレムの持ち主はおられますか?」

 言葉を切り、反応を確かめてさらに続ける。

「私もカイルさんも、この店の冒険者が犯罪に関わったとは考えておりません。
 エンブレムを偽造されたか、あるいは正当な持ち主から奪ったエンブレムか、といったところと考えています。
 そのあたりについて手がかりが得られれば、と思うのですが」

 ああそれと、と付け加える。

「聞き込みその他の情報収集に人手が入用なら、他の店の冒険者を臨時で雇われてはいかがでしょう。
 先ほど宿を求めた冒険者の二人組は、ルキスラの同じ店に所属する冒険者で、私の顔見知りです。
 少なくとも身許は確かですから、もしお困りでしたら、そういった手段もあると心に留めていただければ」



■PLから

◆前回分の行動宣言追記

  • 前金の配分:プリアーシェ500/クーガ1500
  • ピアス:プリアーシェ/クーガ、ヴォルディーク家/キャピレット家(ミハイルに渡す)、予備1組(プリアーシェが所持)

 宣言してなかった気がしますのでここで確定させておきます。すみません!


◆やること

  • お仕事の話を堂々とカウンターでやります。べつに聞かれて困らない範囲。
  • グラディウスとリオンにはむしろ聞かせる気で話してます。
  • 要約すると「あんたら自分の手で犯人挙げないと詰むけど情報も入手苦しくね?情報渡す&事後処理サポートするから協力してくんない?」というお話です。
  • エンブレムについて質問「偽造防止措置は取られているか」「シリアルで持ち主は特定可能か」「エンブレムの持ち主で事件以降連絡が取れない奴はいるか」の3点です。
  • ついでに「聞き込みとかの人手が要るならそこにルキスラの冒険者おるで」と軽くご紹介しておきます。


■ダイス

Lain@プリアーシェ ありばど見識判定:七色の調べ亭 2d6+8 Dice:2D6[6,5]+8=19
Lain@プリアーシェ ありばど判定:フィンネスと顔見知り? 2d6+9 Dice:2D6[1,4]+9=14
Lain@プリアーシェ 知ってる、顔見知り(''