【C1-4】妖精の御許へ進む覚悟
>「と、言う事はテンペストは大変に知性の高い妖精と言う事ですね。魂の疵に惑わされることなく美し
いものを見出せる目を持っている。リナリア嬢。あなたを、この世界に受け入れたように」
どうやらヴェンデルベルトはリナリアの正体を見抜いたようだ。
彼女がその身に穢れを負っているということを。
妖精が忌み嫌うという穢れをだ。
「あなたは器についてどう思う?
器にはいい出来のもの、たいしたことないもの、駄作と言えるもの、それぞれあるでしょう?
でも器は本来は脇役、中に何かを入れるもの。
器によって価値が変わることもあるけれど、中身によって新しい価値を得ることもある。
――私にとってこの体は所詮器。テンペストが評価したのは中身、そう思っているわ」
といっても、リナリアの器としての価値の高さは極上のものであるが。
穢れという玉の瑕さえなければ。
>「貴方は何を望んだのですか、何を願ったのですか」
そんなリナリアにヴェンデルベルトは質問を投げかける。
彼女がテンペストに見初められた伝承の歌姫なのであれば。
彼女にもなにか望みがあったのではないだろうか、そう考えたのだ。
「私の望み?テンペストについての話かしら。
私は何も望んでいなかったわ、いや一個だけ望んでいたのかしら......歌いたい、と。
だから私はここにいて、テンペストは私をここに置いている」
リナリアはオレットのように意識的に望みを叶えたかったわけではないらしい。
気がつけば歌いたいという思いが望みになり、結果としてテンペストに叶えられたというところか。
>「貴方はここから出ることはあるのですか?食料はどうしているのですか?森で妖精を見たと言うのは
貴方のことですか?」
ヴェンデルベルトは更に質問を続ける。
「この世界にいる限り......テンペストがいる限り。
私は何も食べなくてもいいし、寝なくてもいいの。
――でも、それじゃ面白くないでしょう?
だから私は時々街に出て美味しいものを食べたり、遊んだりしているわ。
テンペストはもう全然森から出て行かないけれど。
妖精を森で見たというのならばそれは私を見間違えたか......それとも」
リナリアはプラリネの後ろの方に少し視線をやる。
それと同時に後ろから「わあっ!」と大きな声。
振り向けばいつの間にか緑色の帽子と服を着た男の姿がいた。
風の妖精――パックである。
「彼らかもしれないわね。
妖精たちはここにいることもあれば森にいることもあるから」
ふとヴェンデルベルトはリナリアの持つ緑色のハープに目をやる。
現世では目にしたことのない品に興味をそそられたのかもしれない。
「このハープが気になるの?
壊さなければ手にとって見ても構わないわ」
ヴェンデルベルトが間近で見ると、先程タタラの折った枝とほぼ同じ材質のようだ。
普通のハープと違うのは、目の前のこれが加工された跡がないことだ。
それはまるで最初からこの姿であったかの如く。
また、寂しくないかという問いかけについては。
ここにときどき訪れる妖精たちがいる。
そして、外の森にいる小動物たち。
リナリアにとってはそれで十分なのだ、刺激は時たま街に出れば良い。
>「テンペストと貴方は、いつもこうやって離れた場所にいるのですか?歌声だけ届くように?」
絶え間なく続く次の質問は。
リリアナとテンペストの二人のあり方についてだ。
穢れを帯びた者と穢れを忌む者。
幾ら歌が二つを繋ぐ橋になろうとも、そこには少なくとも壁があるように見える。
「そうね、本来なら私たちはあまり近づくべきではない存在。
いつも一緒にいるなんてことはもちろんないわ。
でも、ずっと離れているわけではない。直接会うことも勿論あるわ。
テンペストも穢れを嫌うだけの愚図ではないもの、ある程度の分別はあるわよ」
この言葉はタタラにとってはもしかすると朗報であろうか。
少なくとも穢れてる存在と絶対に会わないというわけではないらしい。
>「リナリア嬢。是非ともあなたとオレットさんの共演を聞きたいのですが、お願いできますでしょうか?」
一連の猛攻の最後は質問というよりかは嘆願である。
「歌うのは構わないわ。
いつでもどこでも歌ってあげる。
でも、あなたたちは私の力を借りに来たわけではないのでしょう?
あなたたちが本当に美しくあるのであれば、私の歌など必要ないはずよ」
リナリアはヴェンデルベルトの思惑をなんとなくとはいえ、悟っているようだ。
それを踏まえて、彼の願いを暗に拒否した。
ちなみにヴェンデルベルトの態度はあまり気にしていないようである。
――流石にニコデムスが迫っていったときは多少驚いていたようではあるが。
>「......色々と失礼しました。美人に目がないんです、こいつは......」
ティキの謝罪に対して。
「あら、そうなの?
なかなか可愛い子なのね」
と、ニコデムスに向かって微笑んだ。
ちなみにティキは"嵐"の名を持つ妖精の噂について聞いたことがあるかもしれない。
それがテンペストのことだとは、当時は思っていなかったろうが。
今はどうであろうか。
続けてティキが自らとニコデムスについてリナリアに語った後。
>「......テンペストというのは、どういう人物......妖精なのでしょうか。退屈しているとか言っていましたが」
リナリアではなく、彼女は奥に待っているテンペストについて尋ねる。
「テンペストはね、風の妖精。
退屈しちゃったというよりかは、簡単に言うと飽きちゃったの。
もうこの世の美しいものはあらかた見ちゃったって。
でも、そんなことあるはずがないわ。
人の数だけ美しいものはこの世界にある。
――ところで、美しいものと聞いてあなたたちは何を思い浮かべる?」
リナリアは問いかける。
美しいものとはなんであるか。
「歌、踊り、絵画、彫刻――それら芸術は勿論そうね。
でも、他にも肉体や精神、記憶にだって美しさは宿るでしょう?
要は審美眼に適うかどうか、ただそれだけ。
勝利や争いだって見方を変えれば美しいかもしれないわ」
* * *
一方でタタラに対して放った辛辣な言葉。
それは彼女を若干萎縮させるのに十分であった。
>『あんた何言ってるんすか?初対面の人にそんなこと言って非常識っすよ。だいたいあんたもナイトメアでしょう?だったらナイトメアがそんなことでどんな扱い受けてきたか知ってるはずっすよね?』
そんなリナリアの言葉にプラリネは反射的に反論する。
自由を尊ぶル=ロウドの神官らしき行動である。
「――そうね、あなたは正しいわ。
テンペストは穢れを嫌悪している。
妖精であるのだからそこはもう仕方ないわね。
でも、妖精は穢れを嫌うだけの知能しかないわけではないわ。
我慢もできるし妥協もできる......テンペストのような格の高い妖精なら尚更ね。
だから、大切なのは――わかるでしょう?」
リリアナの顔がタタラの目の前に近づく。
そして、唇が紡ぎ出す言葉は。
「大切なのは、あなたがどうしたいか。
そして、どうするかじゃないかしら?」
リリアナのいるこの泉の奥にはさらに続く道がある。
そこを通っていけば、テンペストに会えるだろうか。
* * *
>「ところでオレットさん。あなたの『望み』は風の妖精に叶えて貰える事が出来そうなものなのですか?」
ふとヴェンデルベルトはオレットに思いついた質問を投げかけてみる。
そういえば、彼の望みの詳細はまだ話されていない。
「どうだろう、実際どうかは僕にもわからないな。
でも、僕の探し人は――彼女はおそらくどこかに捕まっている。
妖精の力は彼女を救い出すための鍵になればいいと思っているんだ」
オレットが探すのは、どこかに囚われた女性らしい。
救出――その意味に関しては妖精の戦う力は役に立つかもしれない。
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あんみつ@GMより
いろいろとお返しをしただけ。
パックについて魔物知識判定ができます。目標値は12/19。
ティキは正体に関してだけは自動成功です。
皆さんは次の行動を決定してください。
主な選択肢は4つです。
・さらに奥へ行く
・とどまる
・かえる
他に起こしたい行動がございましたら、そちらでも構いません。
この行動につきましてはPT全員で合わせる必要はありません。
もちろんオレットは先に行くつもりです。