己が望みを
ヴェンデルベルト(柑橘) [2015/10/27 00:54:34]
>「...うおおおおおおおおおおっ!!」
翡翠の枝と格闘していると、タタラ嬢が勇ましく突進してきた。
ナイフで傷をつけ、そこから降り取る方法は堂に入った物だった。
>「はい、ヴェンデルベルトさん!
どうぞ!」
「有難うございます。見事なものですね」
切れ目に目をやれば綺麗な断面を覗かせている。ホクホクとした気分でこれもまた丁寧に背負い袋に仕舞いこんだ。
◇ ◇ ◇
>「強大な風の力を中央やや右寄りに感じると、言っていた。そして左の道に、微弱な穢れを持つ者がいるとも。弱い蛮族のそれよりも小さな......」
>「―穢れを嫌う妖精だ、左の道にいるとは考えにくいけれど、どうする」
ティキが再び妖精を呼び出し、この場所の事を訪ねたようだ。
「つまり、この歌を歌っているのは穢れを持った者だと?」
美しい歌だと思っていた。今でも、それを聞いてもなおずっと聞いていたいと思わせる歌だ。
「穢れとは、そのものの美しさを損ねるものでは決して無いのでしょうか。
私は、この歌を歌っているのがそうだと知っても尚、この歌は美しいと思います。
もっと傍で聞きたい、とも」
妖精の歌だ。妖精が人間を愛した歌。そして、人間が妖精を愛した歌。
「力を貸して貰るかどうかは分かりません。危険かもしれない。
けれど、私はこの声の主とオレットさん、あなたの共演を見たいと思います。
そしてそれはきっと素晴らしいものになると言う確信がある」
これは私の我がままである。願望であり、欲望である。
「ティキ、タタラ嬢。プラリネ君。この爺の望みに付き合っては貰えませんか?
私が先頭を歩きますので」
危険があるならば察して見せよう。私はタビットなのだから。
あくまで左推し!