【C2-3】動く男、佇む男
デイジーの答えを聞いたクーガが決めた行動とは。
>「デイジー。さっき言ってたグラスランナーに会いてぇんだが
>"普通の状態なら"別に問題ないが今のご時世だろ?
>できれば保険が欲しい、すまんが紹介状を一筆もらえねぇか?
>お礼といっちゃぁなんだが、ここで上等な酒1本買わせてもらうからよ。」
デイジーがわざとらしく漏らしたとあるグラスランナーに会いにいくというものであった。
気になるところには自ら引っ掛かっていく――それがクーガという男である。
>「あ、出来れば酒はヴィンサントかレモンチェッロみたいな甘い奴を頼む。
>辛い奴は苦手なんでね。」
デイジーにちゃっかり紹介状を頼みつつ、クーガは一本の酒を頼む。
「あら、意外と可愛いところあるのね、ふふ。
じゃあ......好きなもの持って行っていいわよ」
酒瓶の中では甘いものの中でも安いものから強いものまで揃っている。
好きなものを持って行っていいとのことではあるが。
果たしてかわいいと形容されるグラスランナーはどんなお酒が好みであろうか。
* * *
奏での広場に、お目当てのグラスランナーがいた。
ベンチの上でぼけーっと仰向けに寝転んでいる。
「むにゃむにゃ......デイジー姉さん......」
ムニャムニャ寝言をつぶやきながらお腹を掻いていた彼であったが。
ゴロンと寝返りを打とうとした瞬間。
その体は広場のベンチの上から思いっきり投げ出され。
――クーガの前で墜落した。
「ぐわああああああああ!」
突然の奇声。
「いってえええええええ!」
そして目の前で思いっきり跳ね上がる。
栗毛色のくるくるした毛とまるまるとした顔のグラスランナーである。
「――はっ」
その目がクーガを捉えたかと思うと。
「て、てめー!
ジロジロと見てんじゃねーよ!
オレを誰だと思ってんだ!」
腕をバタバタバタと振りながら、可愛い声で悪態をついてくる。
「花の夜想曲期待の新人!
美人で強いデイジー親衛隊003番!
エース・ラ・リトルとはオレ様のことだぜ!」
白い歯をむき出しにして、親指で自分の胸を指す。
彼渾身の決めポーズである。
そのまま20秒ほどステイしている。
「かっこいいだろ?
さっすがだなー、オレ。
最強だなー、オレ」
彼はクーガの反応に明らかに期待している。
いい反応をしてあげればきっと更に調子に乗ってくれるだろう。
「あー、寝てたらのどかわいたなー。
酒飲みたいぜー!」
見ていればなんとなくわかることであるが、
このエースという男――バカでクズである。
でもどこか憎めないのはグラスランナーの性であろうか。
「あれ、まだいたの?」
それは、クーガに投げかけられた言葉である。
すっかり自分の世界に入っていたようだ。
* * *
一方七色の調べ亭にてグラディウスという協力者を得たプリアーシェは、
5番街のある家を目指し歩いていた。
――アンネ曰く。
「なるほど、彼に会いたいのね。
うちの冒険者の子たちも何度か会いに行ったことはあるらしいけれど。
結果はあまり芳しくなかったそうよ。
好きなことしか喋らないんだから当然ね。
でも知識と発想力は――本物だそうよ」
そんな男であるらしい。
モーリス・ルーペという男は。
* * *
部屋を埋め尽くすのは羊皮紙や書物の数々。
そこにあるのは生活感なのではなく、知識欲。
作業机に読みかけの本を置いたあとで、彼は椅子ごとくるりと回転させて振り向いた。
「それで、僕に用とはいったいなんだろうか、お嬢さん?」
こちらを向いた彼の黒い色の瞳に映すのはなんだろうか。
塗りたくられた欺瞞であろうか。
奥に隠れた一筋の真実か。
「おそらく何か調べているのではないか?
それで、どこかの噂で私のことを聞いて――訪ねてみたってところだろうか。
君はたぶん、コンチェルティアの冒険者じゃないな?
最近この街の冒険者はめっきり顔を見せなくなったからな。
おかげで自由に時間を過ごせるのは嬉しいものだ」
パイプから膨れ上がる淡い色の煙。
チェアにもたれ掛かり軋む音がする。
「君が調べていることは例の事件についてだろう。
考えるまでもない、他にこの街に謎の出来事などないのだから。
――そうだな、私を訪ねる前に君は幾つか既に調べたことがあるのではないかな。
君は聡明そうだし......何より君は合理的な思考をしそうだ。
いきなり私のところのような怪しいところに飛び込んできたりはしないだろう?」
おそらくモーリスはプリアーシェの小さな秘密に気づいているのだろう。
「――そこでだ。よかったら君の思うところを聞かせてもらえないか。
犯人は男だと思うかな、それとも女か?
単独か、それとも複数か。
動機はなんだと思う?なぜ四人も殺されたんだ?
そして、この先どうなる可能性が高いだろうか。
事件は終わっているのか?まだ続くのか?
正当性などいらないさ、君の妄想でも構わない。
概して推理とは......芸術とはそういうものであろう?」
咥えていたパイプを一度離し、プリアーシェの顔を見つめる。
その瞳は――真実を追い求める獣のように鋭い。
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あんみつ@GMより
今回からプリアーシェはこちらのカテゴリにカムバックです(*´∀`*)
クーガは今まで通りお書きください!
クーガが奏での広場へと移動する旨、了解いたしました。
【エース・ラ・リトル】を『演者の一覧』に登録しておきます。
お酒は30~300Gまで好きな値段のものをお選びください。
クーガはこのシーンで好きなように動いていただいて構いません。
別にエースのことを無視してやってもええです (・∋・)
プリアーシェは5番街の男のところに向かうこと了解致しました。
【モーリス・ルーペ】を『演者の一覧』に登録しておきます。
プリアーシェは自分の考えを話すように促されています。
ですが、無視して質問とか思いっきりぶつけても問題ナッシングです。