せまる危機

 フィン(雪虫) [2015/11/03 01:21:49] 
 

 >「お、フィンじゃん。どした、こんな所に?」

 クーガさんはびっくりしたみたいだ。僕だってびっくりしたけど、コンチェルティアに観光にきたことや、アポロと出会ってから目にした、この子のふしぎな能力のことを話した。
 そんな僕たちの横で、アポロはなんていうか、「ひいて」いる。

 >「本当に......怖くないんだよな?
   こいつ、すっげぇ怖いぞ?」

 「アポロ、『こいつ』とか言わないの。見た目はこわいけど...クーガさんはほんとうに優しいし、信じられるひとだよ」

 いまの状況だと、あんまり説得力はないかもしれないけど、だってほんとうのことだもの。僕はいちおう、アポロにきちんと話した。

 >「こいつもあんたの連れか?」

 野太い声がした。さっき【七色の調べ亭】でケンカをしていたたくましい冒険者...グラディウスさんといったっけ。
 そしてその後ろから姿のをあらわしたのは、【手羽先亭】所属のプリアーシェさんだった。

 >「おや? すこし遅れてしまったかな?」

 「ネスさん、ポチ!」

 そこにネスさんもやってきた。よかった、無事に会えた......。ふたことみこと、再会のあいさつをして、ポチをこちらに受けとる。

 >「アポロ、さっきはきちんと挨拶もせずにごめんなさいね。
   フィンさんとネスさんを案内してくれてありがとう。
   よかったら、私も近いうちに街を案内してもらっていいかしら?」

 ちいさなアポロと目線をあわせて話すプリアーシェさんを、僕は好ましいと思った。

 >「それと、そこのお兄さんも私の仕事仲間なの。
   見た目はちょっと怖いかもしれないけど、腕利きの冒険者なのよ。
   私たち、ルキスラから来てこの街で仕事をしてるんだけど、来たばかりだからよくわからなくてね。
   あなたが街に詳しいなら色々教えてもらえると助かるんだ」

 アポロににっこりとして彼女は続ける。

 >「さっきもちょっと言ったと思うけど、フィンさんやネスさんとは同じ店の冒険者なの。
   少し、仕事の話でお友達を――フィンさんを借りてもいい?」

 仕事の話、という言葉で、僕の胸にすこし緊張がはしった。 
 プリアーシェさんはネスさんと僕に語りかけた。

 >「お話したとおり、私とクーガさんは今、この街で仕事をしています。
   先ほどの宿のご主人、アンネさんからは、協力をいただいた上で問題が解決すれば、報酬を頂けるというお話をいただきました。
   私たちの依頼人にも、協力に応じて報酬を出してくれるよう、交渉はできるかと思います。
   もしお手すきでしたら、可能な範囲でご協力頂けると心強いのですけれど。いかがですか?」

 >「ご協力いただけるのであれば、少し込み入った話をしなければなりません。
   諸々報告などもありますから、私たちの依頼人のところで、というのはいかがでしょう」

 ネスさんはゆったりと僕達に歩み寄ってきた。

 >「...うーん? わたしは観光に来ているだけだし
   せっかく 小さな友人もできたからねぇ...」

 ネスさんはアポロの肩に手をおいて、魔動機文明語でこう言った。

 >『 彼らを危険に晒したくはないね 』

 アポロを危険にさらしたくないということなら、僕もおなじだった。ネスさんの気持ちはよくわかるつもり。
 でも、プリアーシェさんとクーガさんが何をしていて、僕に何ができるのか、話を聞いてみなくちゃわからない......。

 「アポロ、あのね、今からお仕事の話、するからちょっと待ってて?どこかに行っちゃだめだよ?」

 つないだ手をたしかめる。それから僕はみんなに話しはじめた。

 「おふたりのお仕事をお手伝いすることに問題はありません。僕は観光でコンチェルティアに来ていますし、手はあいています。僕でよければ、よろこんで。でも、せっかく仲良くなれたアポロを危ない目にはあわせたくありません。心配のしすぎと思われるかもしれませんけど、この子をちゃんと家に送り届けてからにしたいんです」

 いったい、ふたりはどんな件でコンチェルティアに呼ばれてきたんだろう。【七色の調べ亭】で殺人事件のことを言いつのっていたグラディウスさんがいま、プリアーシェさんのかたわらにいる。ということは......。 

 「コンチェルティアではいま、未解決の連続殺人がおきていると聞いています。おふたりのお仕事は、それにかかわるものですか?」

 その問いに、プリアーシェさんが答えたのは耳をうたがうような内容だった。
 ルキスラからふたりが招かれたのは、やっぱり連続殺人の捜査のため。そしてその被害者はいまのところ全員......。
 予言者、だという......。
 心当たりがあるのですか、そう言うプリアーシェさんに、それからネスさんとクーガさんに、僕ははりついたのどから声を押しだした。魔動機文明語だ。

 『じつは、この子、アポロ...。クーガさんにはすこし話したんですけど、どうやら「これから起こること」を見る力があるようなんです。いつでも、というわけではなさそうなんですけど...。本人はそのことに気づいていないようで、そのときの記憶もあいまいです。でも、たしかに僕は見ました。タビットの勘より先に、危険を予知したんです......』

 アポロが「予言者」と言われる能力の持ち主だったなら。アポロが、狙われる......?殺人者に、アポロが。
 
 そんなこと、ぜったいにゆるせるわけないじゃないか!
 
 僕はふたたび交易共通語で話す。

 「わかりました。おふたりの捜査に、協力させてください。アポロを守るために、犯人をつきとめなきゃ......」

 うつむいたまま、つないだ手をぎゅっとにぎりしめた。

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PL(雪虫)より

フィンの次の行動は【どこか落ちついて相談できる場所へ(ヴォルディーク家含む)】です。
アポロが万一ごねたらお兄ちゃん力で説得をこころみます。

アポロの身の危険をフィンも理解しました。ここからはアポロを守るために全力で動きます。
みなさんにも、アポロの未来視について簡単にご報告しました。
その部分は魔動機文明語にしてあるので、かんたんには盗みぎきされないと思いますが...