【C3-2】駆け出す運命

 GM(あんみつ) [2015/10/23 22:58:57] 
 

>「少しの間だけれど 世話になるよ」

二ェストルはフィンと二人分の部屋を一週間分ほど予約を取った。
部屋はそれなりに扱いやすいスペースに整えられていた。
室内の飾りは少なめで機能性を重視している。
冒険者たちがよく使うからこそであろうか。

   *   *   *

いらない荷物を部屋に残して、二ェストルは花開く街へと繰り出す。
目指す先は――黒銀の鍵盤亭である。
それなりにお高い店で、道楽に訪れた金持ちたちが泊まりに使うらしい。

持てる者が金を使う先には様々なものがある。
衣食住は言わずもがな、趣味に付き合い......時には更なる富を求めて。
そして、その中の一つこそ――情報である。

そう考えてきたのか。
二ェストルはこの場所で演奏をして情報でも集めようと試みたのだが。

>「― ッ!!」

無情にも二ェストルのシタールの弦は切れた。
道行く者たちを引き止める演奏などできなかったのだ。
幾人かは二ェストルの方を少しは眺めるも、彼らは止まることなく進み続けた。
話に耽っている者たちも特に関心はなかったようだ。

「やぁ、こんなところで合うとは奇遇だねぇ。
 ――情報を集めるのならばもっとやりやすいところを僕なら勧めるけどね」

二ェストルに話しかけてきたのは――先ほど七色の調べ亭にいたリオンである。
優雅を気取ったその風貌は、どこか嫌味ったらしく聞こえる面もある。

「彼女――プリアーシェさんだったかな?
 ヴォルディークの家から依頼を受けるなんて物好きなことだねぇ。
 あの家は呪われてるという噂があるからね。
 この街の人間はあそこに関わるのを恐れているからね」

ヴォルディーク家は呪われているという噂があるそうだ。
一族が消え、姉が消え、他にも幾つかの不幸が襲ったそうだ。
ただ所詮は噂であり、一笑に付す者も少なからずいるとは言われるが。

「昔とは時代が違ってね。
 かつての偉大なる貢献者だか知らないけれど、今では若い男の当主が一人さ」

あまり彼はヴォルディーク家に対して良い感情を抱いていないようだ。
実はそういった人も少なくはないのかもしれない。
それほど呪いの噂とはこの街にとっては強烈なものであるのだ。

「それで君は彼に協力するのかな?
 当然僕はやる気はないけれどね。
 いずれは消える運命さ――僕の貴重な時間を割くには勿体無いと思うだろう?」

彼は今でもグラディウスとやりあっていた時と気持ちは変わらないようだ。
いずれ過ぎ去る嵐なら立ち向かわず家の中で時間を過ごせばいい。

「それでも、弦を切ってしまった不運な君に一つだけ教えよう」

つかつかと二ェストルのすぐそばに歩み寄り。

「僕も動いていたわけではないけど、少しくらいは知っていてね。
 例えば、4番街で死んだ3人目の犠牲者。
 目を閉じた状態で見つかったんだそうだ。
 だからどうしたって話かもしれないけどね」

   *   *   *

フィンとアポロの二人は菓子屋の前のベンチに腰掛けながらおやつタイムを楽しむ。

>「アポロ、これ、おいしい!」

フィンが素直に感想を漏らすと。

「だろー!
 おれたちにとってのパラダイスなんだぜ、ここ」

隣でチョコレートを齧りならアポロは笑って言う。
その頬には茶色い食べこぼしがついている。

>「......アポロさ、今日から外で遊んでいいってお家のひとに言われたんでしょ?どうしてだか言われた?犯人がつかまったとか、聞いた?」

「だって、最後の事件が終わってからもう一週間だぜ?
 みんな終わったなーて思ってんだ。
 外歩いても全然話とか聞かないしさ」

コンチェルティアに住む多くの人は事件のことなど気にかけなくなってきたのだろう。
もともとそういった陰惨な話題は似合わぬ街だ。
昨日見た公演や好みの踊り子の話などに花を咲かせる方がらしいところだ。

――そんなアポロを残して、フィンは一度ポチを通して連絡をとる。
使い魔とは便利なものである。

   *   *   *

「うまかったー!」

アポロの手にあるのはビスケットの包みだ。
二ェストルに持って行ってあげるのだという。

フィンの目から見えるのは穏やかなコンチェルティアの風景。
巻き込まれた立場の冒険者たち以外は皆活き活きとした表情である。

フィンとアポロが七色の調べ亭まであと半分になるかというところで。
――その事故は起こった。

ちょうど街角を曲がった瞬間。
通りの店をぼんやりと眺めながら、フィンの隣を歩くアポロの体がビクッと揺れる。
彼は勢いよくフィンの方を振り向き――言った。

「フィン!
 ――そこにいたら危ないよ」

その瞬間。
フィンも悟るであろう。
それはタビットという種族が持ちうる超大で鋭敏な感覚――第六感。
フィンたちの左手から、何か黒い影が飛んでくる予感。

それは現実のものとなる。

「あっ」

上の方から女性の小さな悲鳴が聞こえる。
そして、階段から転がり落ちてくる黒い大きな鞄。
既に危険を察知していたフィンはなんなく衝突を免れる。
しかし、鞄はフィンの傍の地面に落下した時の衝撃で思いっきり広がり、中身が溢れ出て舞い上がる。
宙にふわりと舞い広がるのは幾重もの羊皮紙――記されていたのは楽譜か。

「大丈夫でしたか?」

上から黒く長い髪をした女性が階段を駆け下りてくる。

「おい、フィン大丈夫か?」

気づけば、アポロは少し離れた場所から覗き込んでいた。
今のごたついた瞬間につい手を離してしまっていたようである。

「なぁ、怪我とかしてないか?
 薬とかいるか?
 ん、薬?――あああああ!やっべー」

フィンが怪我してないかそばに来て確認しようとしたアポロであったが。
自ら発した薬というワードに著しい反応を示し、大きな声を上げる。
フィンの大きな耳にとっては少なくないダメージであったかもしれない。

「風邪用の薬買って来いって言われてたの忘れてたぜ!
 やべー......このままじゃ怒られんじゃん!
 ごめん、フィンおれ買ってから帰る!」

アポロはそう言って駆け出した。

「あ、おれんち5番街の広場の近くな!
 青い屋根のうちで、隣のオレンジっぽいのがアイリの家だぞ!
 じゃ、ちゃちゃっと買ってくるぜ!」

アポロはフィンの方に向けて大きく手を振ったかと思うと――人ごみの中に消えていった。
冒険者として手馴れたフィンであれば追いかけるのは難しくもないだろう。

そんなフィンの顔にぶち当たってきたのは楽譜の一節。
目の前で鞄の持ち主たる女性が一つ一つ拾い上げている。
見るだけで不憫である。

――そういえばフィンは見ていただろうか。
先ほどアポロが警告した瞬間。
彼の茶褐色の目がやや赤らんで見えた瞬間を。


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あんみつ@GMより

二ェストルとフィンについて両者進行致しました。

二ェストルはリオンからヴォルディーク家の評判について聞けますね。
あまりよくは思っていないようです。

フィンのダイス一つ目は危険感知判定に使いました。
アポロの警告ボーナス2点を加えて目標値15なので余裕の成功でした。

フィンのダイス二つ目は回避判定に使いました。目標値7でした。
7に足りなかったため、回避動作の際にアポロの手を離してしまいます。

フィンは冒険者レベル+知力ボーナスで目標15の判定を試みてください。
成功すれば、アポロの瞳の異変を察知できます。

二ェストルはお好きな行動をお取りください。
リオンと会話しても適当なところを訪ねても宿に帰っても構いません。

フィンは次の行動を決定してください。
主な選択肢は2つです。

・アポロを追う
・目の前の女性を手伝う

基本的にはどちらかの行動しか取れません。
どちらを取るかはらしい行動を取ればよいのではないでしょうか(*´∀`*)

もし合流したい場合、そのことを明記して頂ければ随時合流を可能とします。