【C3-3】それぞれの道上で
フィンは決して見逃すことがなかった。
ほんの一瞬アポロが見せた異変を。
彼の目に映っていた赤い太陽のような焔を。
そして、アポロが自分よりも先に危機を知ったという事実を。
――その時の嫌な感覚がフィンの気持ちを逸らせる。
目の前で困っている女性を助けようとするよりも早く。
>「あ、あの、ごめんなさい!」
顔に覆い被さった分の楽譜をしっかり彼女に返し。
薬屋へ駆け出したアポロを体が追いかけていた。
>「どなたか!この方を手伝ってください!おねがいします!」
ただ彼女を無視せず、誰かに助けを依頼するというところはフィンの美点だろうか。
そんなフィンに向けて黒い髪の女性は優しく微笑んだ。
* * *
フィンは走る。
我武者羅に何度も人とぶつかりそうになりながらも。
>「アポロっ!アポロ!」
思いっきりアポロに向けて声をかけながら。
「......あれ?フィンじゃん。
なんでそんな勢いで追いかけてきてんだ?」
その全力さが時の運を動かしたのか。
フィンのかける声にアポロは足をぴたりと止める。
>「アポロ...!」
長い人混みの波をくぐり抜け。
ようやく見つけたその銀色の髪。
フィンはアポロの手をがしっと掴む。
またいきなり離れたりすることのないように。
「わわ、なんだよ急に!
......てか、大丈夫かよ、フィン」
アポロはいきなり腕を掴まれて非常に驚いたようであったが。
息も絶え絶えなフィンの様子を見て今度は心配そうな顔になる。
それはまるで年相応の無垢な子供の姿であった。
>「アポロ......。さっきのなに......」
けれどフィンは気づいている。
彼がただの子供ではないことに。
「さっきの?
なんだそれ?」
アポロの反応は別段わざとらしいものではない。
まるで本当に何も知らないかのようだ。
>「アポロの目......なに......。どうして、わかったの......あぶない、こと......」
>「アポロ...。さっき...君、あぶない、って教えてくれたよね。僕が、気づくよりも先に
」>「君は、僕が危険に気づくより前に、それを教えてくれた。どうして、わかったの...?」
フィンは少しずつ息を整えながらアポロに尋ねる。
自分より先に危険を見た赤い目の秘密を。
けれど、アポロはフィンの求める答えはくれなかった。
なにせ――。
「何言ってんだよ、フィン。
さっきのはフィンが教えてくれたんだろ?
危なかったよなー、超ビビったぜ」
アポロはあの瞬間のことを覚えていない。
フィンが見たのは白昼夢にすぎないのか?
そうではない。あのシーンは今でもはっきり思い出せるほどリアルであった。
つまり、記憶が混濁しているのはアポロの方なのであろう。
その理由は――おそらくあの時の彼の変異にある。
「それよりさー、おれ薬買わなきゃ怒られちゃうんだよ。
だから、離してくれって、な!」
引きずられながらアポロはフィンに掴まれた腕をぶんぶんと振った。
* * *
二ェストルはリオンの真意を探ろうとする。
けれど、彼の言葉には嘘はなさそうであった。
事件に興味がないというのは本当のことなのであろう。
リオンとの話の途中、ポチに動きがあった。
どうやらフィンとアポロが戻ってくるらしい。
>「うん 呼び出しがかかってしまったねぇ
> また聞きたいことができたら君を訪ねていくよ」
「君とは事件以外のことで出来たら話がしたいね。
まあ、好きにすればいいさ。
――僕は演劇の一本でも見に行くとするかな」
無駄に気障ったらしく優雅に手を振ってリオンもその場をあとにした。
* * *
二ェストルが奏での広場に戻ろうとする道中。
黒く長い髪の女性が大きな黒い鞄を持って向かってくるのが見えた。
重そうに一歩一歩鞄を持ち歩きながらこちらへ向かってくる。
すれ違う瞬間。
彼女は二ェストルの顔を見て少し微笑んで会釈した。
誰かと間違えたのかもしれない。
それとも二ェストルの周りの人に挨拶をしたのだろうか。
彼女はゆっくりではあるが、急ぎ足でその場を歩き去っていく。
二言三言くらいであれば話しかけることができるだろうか。
* * *
もし、彼らがそのまま奏での広場に歩みを進めるのであれば。
そこにはクーガたちの姿があるであろう。
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あんみつ@GMより
フィンは無事アポロを捕まえることができます。
フィンは次の行動を選んでください。
主な選択肢は2つです。
・奏での広場に行く
・アポロと薬屋に行く
このシーンではどちらかしか選択はできません。
二ェストルは広場で向かう途中、黒髪の女性と遭遇します。
二ェストルは次の行動を選んでください。
主な選択肢は2つです。
・奏での広場に行く
・彼女と話す
本文にもある通り、二言三言程度であれば広場に向かいながら可能です。
それ以上話す場合は次シーンでは広場に到着できません。
広場に向かうことを選択した場合は、
その時に広場にいるクーガや、
他の広場に帰ることを選択したPCたちと合流できるところまで、
書いていただいて構いません。