【E1-1】幼き予言者
どれだけの時間空を飛んでいただろうか。
タタラも無事空中で合流し、風によってその体は流されていく。
詳しいことはわからない。
いつの間にか冒険者たちの目下にあるのは森ではなく円形の街が。
「あれは......コンチェルティア?」
眼下を眺めつつオレットが呟いた。
どうやら風に乗せられて気がつけば南下していたらしい。
その事実をぼんやりと認識できたのも一瞬のこと。
すっと体が落ちていく感覚がした。
いや、感覚ではない――実際に落ちている。
ある一点に向かって吸い込まれるように。
強烈な重力を感じながら下へと下へと引き寄せられていく。
ニコデムスに乗れば空を飛ぶことができるかもしれないが――体が上手く動かない。
街はいつの間にか眼前に幅広く広がり。
目前に迫ってくるのは豪奢な屋敷。
このままでは地面に墜落する。
――そう感じたその瞬間。
再度ふわりと体に風がまとわりつく感触。
気がつけば自らの足で何の衝撃もなく降り立っていた。
「ここは......。
どうしてここに?」
見渡せば広い庭と大きな屋敷。
一人のタビットが庭の向こうで何らかの作業をしている。
突然ドアが開く音。
屋敷から何人かの人が飛び出してきた。
* * *
「どうかされましたか?
......あれ?
あの人たちはいったい......いや、まさかあれは......?」
フィンがアポロを引き連れて庭へ出てくるとミハイルがこちらに駆け寄ってくる。
しかしその意識は一瞬でフィンたちから突如現れた来訪者の方へと向けられていた。
中でも赤い帽子を被った金色の髪の詩人らしき青年にその視線は注力されていた。
フィンも振り向けば、ヴェンデルベルトやティキなど知己の者がいることに気づくだろう。
「――ミハイル」
逆もまた然りである――銀髪の少年と手を繋いで現れたフィンたちの存在を認識する。
井戸に水を汲みに来たプリアーシェとエミール。
ポチの運んできた手紙を見て降りてきた二ェストルもまた謎の来訪者の存在を知るだろう。
たとえ面識がなくとも彼らが漂わせる雰囲気、そしてフィンたちの様子から。
少なくともアポロの命を狙ってきた敵ではなさそうだと感じられる。
カイルは先ほどの部屋の窓から様子を伺っているようだ。
オレットに対して一瞬だけ強い睨みを入れてからは静かに眺めているようだ。
「――風が吹いてる」
フィンの右側でアポロは言う。
その瞳の色は炎のようにより赤々として。
一度大きく眼を見開いた。
* * *
「白花祭りの刻。
青き乙女は最大の夢を見る。
役目を果たした巫女は魂を祭壇に捧げられるだろう。
然れど太陽と月がそれを阻む。
太陽は青き空に浮かぶ金色の輪。
月は銀色の光を映す白い弓。
花々と竜たちの力を受けて。
太陽の昇る頃、青き乙女に奇跡が起きるだろう。
――かつて月神に捧げられた古き地下神殿にて」
アポロはまるで長きを生きた老人――いや神に等しきもののような語り口調で言葉を発する。
最後の一言を言い終えたあと。
アポロの体は力が抜けたように庭に崩れていく。
フィンの左手に重みがかかる。
アポロの様子を伺えば......問題はない。
――ただ眠っているだけだ。
寝息の音がちゃんと聞こえる。
「今のは......まさか予言?
ぼ、僕カイルさんに伝えてきます!」
わたわたと慌ただしくミハイルは邸内へと駆け出していく。
庭の様子を見ていたカイルも異変にどうやら気づいたらしい。
「予言......これがテンペストが僕たちに聞かせたかったものなのかな?」
オレットは街の北側の方に顔を向ける。
そこに広がっているはずの森の中。
緑の空間にいるはずの妖精に思いを馳せて。
「――でも、どういう意味なんだろう?」
* * *
――しばらくして。
ミハイルが再びタビットにしては速いスピードで戻ってくる。
「カイルさんが皆さんにお話があるそうです。
プリアーシェさんはそのクーガさんも連れてきて欲しいと。
あと......その......えっと」
うまく言葉を続けられないミハイル。
見ていてあまり落ち着かないようだ。
「君にも来て欲しいって――オレット」
一瞬。
ほんの一瞬の沈黙。
「――わかったよ......ミハイル。
でもこの人たちも連れて行ってもいいかな。
いきなりここに飛ばされてきちゃったから」
オレットは共に森から飛ばされてきた冒険者たちも連れて行きたいようだ。
もっともニコデムスなどは流石に連れて行けないだろうが。
貴族の庭園らしく季節の花によって飾られたこの庭はニコデムスにとって居心地がいいかもしれない。
「フィンさんたちとお知り合いなんですよね。
ルキスラからいらした冒険者の皆さん。
――それなら構いません。
是非いらっしゃってください」
ミハイルは四人の冒険者にも声をかけた。
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あんみつ@GMより
エンディングシーンその1です。
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森ルートの4名と1匹はヴォルディーク邸の庭に着陸します。
うまい具合に成功しているはずですが、場合によっては多少変な遠方しても問題ないです(・∋・)
森ルートと街ルートのそれぞれの冒険者たちが顔見知りかどうかは完全にお任せします。
少なくともミハイルとオレット。
そしてフィンとヴェンデルベルト及びティキは知り合いということですかね(・∋・)
アポロは予言後眠ってしまいます。
一応病気知識やその他もろもろ試してみた場合、単純に疲れて眠っているだけだとわかりますね。
最後の場面ですが、できるだけカイルの誘いに乗ってあげてくれると助かります。
クーガはエミールよりプリアーシェに呼ばれた方が喜びそうなので、プリアーシェに頼みます。
一部詳細については次回の記事で。