【D2-4】各々が守るもの

 GM(あんみつ) [2015/11/12 00:20:21] 
 

>「おやおや フィンとの約束はどうしたんだい?
> そんなに退屈なら、私を手伝ってもらえると嬉しいんだけれどな?」

不満を今にも爆発させそうなアポロを見兼ねて、二ェストルはノックしてからアポロのいる部屋を訪ねる。

「あ、ネス兄ちゃん。
 もう怪我は大丈夫?」

二ェストルが顔を見せると、口を尖らせていたアポロの頬が緩む。
そんな様子を見て部屋の隅で壁のもたれ掛かっていたエミールは、ゆっくりと体を持ち上げて。
二ェストルの方へと歩み寄ってくる。

「残念だけど、この子の相手は君の方が少し向いているようだね。
 僕は、部屋の外で飛び出していかないように見てるとするよ......それじゃ」

そう言ってエミールは小脇に楽器を抱えながら、部屋をあとにする。
エミールが出て行ったあとアポロはキラキラとした目をしながら。

「ネス兄ちゃん、ここ空いてるぜ、ここ!」

子供が座るにはちょっと大きすぎるソファの空いた部分を右手でぽんぽんと叩く。
なかなか座り心地の良さそうな椅子である。

「あ、そういえばネス兄ちゃんにお土産あるんだぜ?
 ほら、これこれ!」

アポロがフィンと一緒に買ったビスケットの包みだ。
くどすぎない適度な甘味で大人の味である。

「これ、"おとなのあじ"なんだって!
 アイリが言ってたんだー。
 おれ、ちゃんと好きそうなやつわかってんだ!
 ネス兄ちゃん、おれって大人だよなー?」

二ェストルの方に思いっきり見せている満面の笑顔は年相応で大人らしさの欠片もないが。
それでも、すごく嬉しそうだ。
――己に迫っている危機など全く気付いていないらしい。

「ネス兄ちゃんさっき楽器触ってただろ?
 なんか上手そうだよなー、フィンよりは絶対上手そう。
 ね、ね!なんか演奏してくれよ!」

アポロは二ェストルのおかげで退屈など忘れてしまったようだ。
これならいきなり外へ飛び出したりすることなどないだろう。

   *   *   *

フィンにはこの楽譜の正体がわかってしまった。
この後に起こりうる恐ろしい状況についても。

>「楽譜は折りたたんだり、丸めたりして持ち運びがしやすいです。もしこの曲の楽譜が複数つくられていたら......だれがどこでアンデッドを召喚しようとしているのか、見当もつきません」

「そうですね......可能性はあるかと思います。
 その場合局所的な対応では被害を防ぎにくいかもしれません」

ミハイルはフィンの言葉に同意する。
不死者を召喚するという楽譜が幾つもあるのであれば、街を混乱させるのに十分だろう。

一方で銀色の髪をした衛兵の彼。
アポロという名前の息子を持つという彼が、アポロの父親でないかとフィンたちは推測した。

>「アポロを...。5番街のアポロをヴォルディーク家で保護しています。おそらくアンデッドを呼びだした『無限の探求者』は、このところの連続殺人にも関わっていると思われます。被害者はみんな『予言者』をなのっていました」

>「アポロには、ときどき『これから起こること』を見とおす力がある。そのとき、彼の瞳が真っ赤にそまる。そして、そのことは彼自身知らない。......そうですよね」

そんな彼に対してフィンは自らが知る――アポロと現状について語る。
予言者が狙われている事実とアポロ自身が予言者である可能性、否――確信。

「あなたは、いったい......?」

フィンのタビット故の可愛らしい姿のせいか、強い警戒の念を感じるということはない。
だが、多少の疑念を抱いた目で見つめる。
親として見知らぬ者が子供の秘密を知っているとすれば詮無きことか。

>「僕はフィン・ティモシーといいます。ルキスラの冒険者です。ヴォルディーク家ご当主からの依頼を受けてうごいています。でも、依頼とはべつに、僕はアポロを守りたいんです。急にこんなことを言われて、おどろかれたかもしれませんけど......。でも、今のところアポロは安全です。彼の力について、危険については知らせていません」

そんなアポロの父親に対して、フィンは誠実な姿勢で語る。

「そういうことでしたか......」

彼は少し思い悩むような複雑そうな表情で言う。

「私は見ての通り衛兵の詰所で働いている――ユピテル・カリスという者です。
 フィンさん、おそらくあなたの言うアポロは確かに私の息子でしょう。
 あの子には......確かに予言のような力があることを勿論私も知っていました。
 そして、一連の事件が預言者を狙って起こされたものであることも......。
 だから、アポロには家を出ないように行っていたのですが、やはり結構我慢させていたようでして。
 事件から一週間が過ぎたこともあり、一日くらいは自由に......と思っていたのですが」

事件は決して終わっておらず、アポロが本当の標的であったのだと。
ユピテルの愛しい息子に対するちょっとした甘さが――危険な事態を引き起こしてしまったのかもしれない。
それとも逆であろうか――アポロが今日街に出てフィンたちと出会ったことは幸運なことだったのか。
全ては結末が出揃う瞬間に明かされるであろう。
予言者でなければ、未来のことなど知りようもない。

フィンとユピテルの話が一段落した後で、様子を見ていたクーガが話を切り出す。

>「別に俺のことは信用しなくてもいいから、この親書とフィンのことは信用してくれ。」

カイルから受け取った親書をユピテルに差し出す。

「これは......ヴォルディーク家の方からですか。
 カイル殿のことでしたらよく存じております。
 時に神殿にいらっしゃりますから」

この街のザイアの神殿と衛兵の詰所はほぼイコールである。
ユピテルもカイルの顔を見る機会はよくあっただろう。

>「で、俺たちが頼みてぇのは街の治安を可能な限り守ってほしいんだ。
>今、俺の仲間がザイア神殿と冒険者の店に協力求めに行くらしいから、確実に両方とも力を貸してくれるだろうな。」

>「で、俺はこれから"花の夜想曲"にテロリスト共を探す目と耳になるように頼みに行く。
>こいつはどう転ぶかわかんね。ただ、あんたにはこの親書と今言ったことを上に届けて、
>その後はアポロとあんたの家族・・・それとご近所さんを守ってくれ。
>そしたら、あとは無傷のアポロが帰ってくんのを待っててくれればいい。」

クーガが要求したのは、ユピテル延いては衛兵たちの力を借りることである。
今回のアンデッドによる襲撃――それが街全体に渡るのであれば冒険者たちだけでは数が足りない。
街を守るために打てる手はどんどん打つべきなのだ。

「......わかりました。
 ザイアの神殿に訪れている方がいらっしゃるのでしたら、問題はないかと思われますが。
 現在街の見回りに出ている者たちに危機に備えることをお伝えしましょう。
 私も衛兵として街の見回りに向かい務めを果たします。
 ......ですから、どうか」

「どうか......アポロのことを守ってやってください。
 我侭なところもありますが、私たちの命よりも大事な宝物ですから」

   *   *   *

「クーガさんは花の夜想曲に行かれるのですね?
 なかなか曲者ぞろいと聞きますが......流石にここまで大事になれば彼らも動かざるを得ないのではないでしょうか。
 ――とにかくお気を付けて」

ミハイルは一度情報を持ち帰ってヴォルディーク邸に戻るようだ。
フィンもついていけば――アポロが待っているだろう。

クーガは再度――花の夜想曲の根城の傍を訪れる......が。

「来ると思ってたわ。
 少しぶりね、クーガ」

デイジーがその場所の前で待機していた。

「私はこういうのあまり好きじゃないのだけれど。
 舞台があまりに広すぎて観客席まで巻き込まれるのであれば仕方ないわね。
 手短に話しましょう?
 あなたもそれの方がいいでしょう――いろいろと、ね」

   *   *   *

目の前で思索にふけり出すフロウライトに対して。

>「いいえ、用事があるのは私の方です。
> 手助けしていただきたいことがあるのです」

プリアーシェは手短に済ませるため、彼を現実へと引き戻そうとする。
時間を無為には使えない故、仕方ないところである。

「ああ、済まないね。
 つい考えすぎてしまうのは私の悪い癖だ。
 それで、用とはいったい?」

プリアーシェの心遣いの賜物であろうか。
彼は無事プリアーシェの話を聞ける姿勢になる。
そして、そんな彼にプリアーシェが語るのはコンチェルティアにアンデッドが出たという事件。
彼女の驚愕の発言に対して、目の前の人物は顔色を変えた――ような気がした。

「それは真ですか?この街に不死者とは......なんということ。
 ああ、これは我が神が我らに与えし試練なのでしょうか。
 いえ、誠実たる我が主に限ってそんなことはないはず......。
 ――いや、すみません。
 貴女の仰ることが事実であるならばここで考えてる暇もありませんでしたね」

流石に彼もぼんやり考え込んでいる暇はないということなのであろう。
彼はプリアーシェからカイルからの依頼書を受け取って言う。

「わかりました。
 現在非番の者も含め、不死者の襲撃に備えるように周知しましょう。
 襲撃の度合いが測りかねる故、我々で全てを賄えるかはわかりませんが。
 これは我々に課されし職務です――全力を尽くして街を、人々を護りましょう」

どうやらザイアの神殿から無事に協力の約束を得ることができたようだ。
尤も弱き者を守るという教えから、彼らが動くことは当然のことであったかもしれないが。

――また、プリアーシェが彼から得られる協力はそれだけに留まらなかった。

「これから私は他の神殿に赴き、僅かでも力を借りれぬか尋ねてみます。
 不死者――不浄なる者は我ら神の信徒の共通の敵対者。
 期待させるほどの助けを得られるかはわかりませんが、僅かながらでも神のため街のため動くでしょう」

   *   *   *

無事神殿からの協力を得たプリアーシェはザイアの神殿を出て、冒険者の店へと向かう。
とりあえず目指すのは七色の調べ亭だろうか。

「あら、いらっしゃい?
 ――何かわかったかしら」

アンネが快く迎えてくれる。
近くにはいつの間に戻ったのやらリオンの姿がある。
  

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あんみつ@GMより

準備フェイズ二段階目です。
それぞれをそれぞれの場所へと移しました。
プリアーシェが向かう店は七色の調べ亭でよかったでしょうか?
問題がありましたらお教えください。

今回も移動の必要がない行動であれば、どのような行動でも可能です。
次のシーンではイベントが発生いたしますので、
イベント発生時に滞在したい場所がございましたら、そちらへ移動を宜しくお願い致します。