約束する

 フィン(雪虫) [2015/11/14 23:34:39] 
 

 >「そういうことでしたか......」

 お父さんの表情はすこし苦しそうだ。

 >「私は見ての通り衛兵の詰所で働いている――ユピテル・カリスという者です。
   フィンさん、おそらくあなたの言うアポロは確かに私の息子でしょう。
   あの子には......確かに予言のような力があることを勿論私も知っていました。
   そして、一連の事件が預言者を狙って起こされたものであることも......。
   だから、アポロには家を出ないように行っていたのですが、やはり結構我慢させていたようでして。
   事件から一週間が過ぎたこともあり、一日くらいは自由に......と思っていたのですが」

 僕たちを信用してくれるかと問いかけた僕の言葉をうけて、クーガさんがつづけた。なんの気負いもなく。

 >「あー。ちょっといいか?」
 >「別に俺のことは信用しなくてもいいから、この親書とフィンのことは信用してくれ。」

 フィンのことは信用してくれ、その言葉に目のあいだがつんとした。僕は歯をくいしばった。

 >「これは......ヴォルディーク家の方からですか。
   カイル殿のことでしたらよく存じております。
   時に神殿にいらっしゃりますから」

 >「で、俺たちが頼みてぇのは街の治安を可能な限り守ってほしいんだ。
   今、俺の仲間がザイア神殿と冒険者の店に協力求めに行くらしいから、確実に両方とも力を貸してくれるだろうな。」

 そう、プリアーシェさんならきっとどちらの協力もとりつけてくれるだろう。

 >「で、俺はこれから"花の夜想曲"にテロリスト共を探す目と耳になるように頼みに行く。
   こいつはどう転ぶかわかんね。ただ、あんたにはこの親書と今言ったことを上に届けて、
   その後はアポロとあんたの家族・・・それとご近所さんを守ってくれ。
   そしたら、あとは無傷のアポロが帰ってくんのを待っててくれればいい。」

 アポロを無事に家族のもとへかえす。そして、これからもアポロと家族と、みんなが暮らすだろうコンチェルティアを、いまのままの姿で守る。
 それは僕の心からの願い......いや、「祈り」だった。

  
 >「......わかりました。
   ザイアの神殿に訪れている方がいらっしゃるのでしたら、問題はないかと思われますが。
   現在街の見回りに出ている者たちに危機に備えることをお伝えしましょう。
   私も衛兵として街の見回りに向かい務めを果たします。
   ......ですから、どうか」

 >「どうか......アポロのことを守ってやってください。
   我侭なところもありますが、私たちの命よりも大事な宝物ですから」

 僕には声がきこえない神様。それでも、お話があります。

 「かならず、アポロは守ります。そしてお父さんたちのもとへかえします。だから、どうぞ安心してください。この街を、ご家族を、守ってください」

 僕は誓ってこの約束を守りますから、どうか、そこから見ていてください。

 >「じゃ、ミハイル、フィン・・・・・しっかり気張れよ?親父さん、親書と言伝宜しくな。」

 そう言ってクーガさんは駆けだした。心配するミハイルさんにピースサインをしてみせる。
 僕は無言でこぶしを固くにぎった。手のなかで楽譜がくしゃりと音をたてた。

 「ミハイルさん、お屋敷にもどりましょうか。この楽譜のことをカイルさんやみなさんに報告しなくちゃ...」

 僕はアポロのお父さんにふかく頭をさげた。そして、安心してください、とほほえみかける。うまく、笑顔を見せられたかな。

 そして、いそいで2番街のヴォルディーク邸をめざした。 

※ ※ ※

 僕はまっさきにアポロのいる部屋にむかった。ミハイルさんがカイルさんのもとへ行ったようだし、僕もすぐに行けばだいじょうぶだろう。
 いつになく大胆になっていることは自分でわかってる。でも、今はアポロの顔が見たかった。

 廊下にエミールさんがたたずんでいる。ぼんやりしているんじゃなくて、気を張ってまわりを警戒しているのが感じとれた。

 「エミールさん、お疲れさまです。アポロはいい子にしてますか?」

 そういえば、エミールさんも詩人だった。コンチェルティアにつたわる呪歌にはくわしいはずだ。僕はためらいなく「楽譜」を彼に見せた。

 「3番街でミハイルさんが見つけたものです。メティシエの『召霊曲の楽譜』だと思われます。これが街じゅうで演奏されたら、不死者がコンチェルティアにあふれるでしょう」

 エミールさんを見あげる。

 「なにか、こういった呪歌について、打てる手立てをごぞんじないですか?」

 それから、ふと気になっていたことをたずねてみる。

 「エミールさん、あの......目覚めの呪歌はごぞんじですか?」

 これは単に僕のおもいつきだから、つい目がおよぎそうになる。

 「殺害されたひとたちはみな、なぜか眠ったように目をとじていたそうなんです。もしかしたら、僕たちもそんなふうに襲われるのかも......」

※ ※ ※

 「ただいま、アポロ。ポチを見ててくれてありがとう。すごく助かったよ」

 アポロはネスさんといっしょのソファに座ってごきげんだった。なにか音楽を聴かせてもらっていたみたい。音楽...空気の振動......。
 いけない、いまはこわい顔をしている時じゃない。僕はできるだけあかるい声でアポロに声をかけた。

 「あのね、いま僕たちのあいだで相談してるんだけど、どうやらこのお屋敷が僕たちの秘密基地になりそうなんだ。もちろんアポロも、秘密基地の一員だよ?これからちょっとそのことでカイルさんとお話してくるけど、いい子で待っててくれる?」
 
 それから僕は息をととのえて、ネスさんに魔動機文明語で説明をした。

 『街にアンデッドが現れた、というのはおそらくほんとうです。『召霊曲の楽譜』が落ちていました。この曲が奏でられるかぎり、どこにでもアンデッドは現れます。楽譜が他にもあるとすると、もしかしたら、街じゅうに...』

 それから、と僕はつづけた。

 『アポロのお父さんに会いました。彼はこの街の衛兵さんでした。彼は彼の務めをはたす、だからアポロをどうか守ってくれ、とお父さんは言いました。僕たち、約束したんです。お互いが守るべきものをかならず守るって』

 お父さんも、つらいだろうに。くちびるがふるえそうになる。ぎゅ、と口もとをひきしめてから、交易共通語にもどしてつづけた。

 「クーガさんは【花の夜想曲】へ行きました。僕、これからカイルさんのところに顔をだしてきます。ミハイルさんがもう、だいたい話してくれてるかもしれませんけど......」

 それからふと、ネスさんに視線をあわせる。

 「ネスさんは......。もし呪歌や魔法で眠らされそうになっても、きっと平気ですよね」
  
 彼は月の光に守られた、シャドウの一族だ。それに、彼自身も呪歌の使い手だ。
 すこしでも安心したくて、たしかめる。

 「...じゃ、僕、カイルさんのところに行ってきますね。今の話を、みんなにもつたえなきゃ」

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PL(雪虫)より

まずはアポロのお父さんに「息子さんはかならず守る」と宣言を。気持ちの問題ですが。
クーガさんを見送ります。アポロのお家のまわりの安全も確保されそうでよかった......。

ミハイルさんとお屋敷にもどり、詩人のエミールさんに「召霊曲」への対抗手段に思い当たることはないかたずねます。
それとともに、「アーリーバード」は使えますかと率直に聞きます。

アポロのお部屋に行き、無事を確認してから、もうちょっとこのお屋敷にいようねと話します。
ネスさんに得られた情報すべてをお話します。

これからカイルさんのもとへ出向きます。プリアーシェさん、クーガさんがもどったら、全員で情報を交換する必要があるかと思います。

...がんばる!