後始末
> 「終わったな」
グラディウスさんの言葉に、はいと頷く。
私の出る幕などなかった――いや、今の私に戦場で何かを求められても困るのだけれど。
> 「早くカイルさんの下まで戻りましょう」
> 「ああ、さっさと行くぞ」
グラディウスさんは怪我をしてはいるものの、動きに問題はないようだ。
治癒を今しておくべきか否かを半瞬だけ考え、後でいいと結論付ける。
今は可能な限り早く戻ったほうがいい。
挟撃の形にできれば、クーガさんや護衛に回ったフィンさんたちの援護にもなる。
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
階段の中ほどまで来たあたりで、なにか争うような声を聞いた。
上がり切ったところで、閃光とくぐもった爆発音。
まずい、と直感する。
火球の魔法だ。
第6位階の魔法を使う魔術師の攻撃魔法に子供が巻き込まれたらひとたまりもない。
部屋の入口から中の様子を確かめる。
調度が焼け焦げてひどい有様だったけれど、アポロは無傷。
件の魔術師は床で昏倒している。
ふ、と息をついて中の人たちに声をかけた。
「無事ですか?――どなたかお怪我は?」
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
縛り上げられ、魔法の発動体を取り上げられ、床に転がされた魔術師に視線を据えたまま、私はカイルさんに言う。
「いくつか、ご用意頂きたいものがあります。
まず、外に――少なくともお屋敷の敷地の外に声の漏れない部屋。できれば地下室。
汚れても差し支えのない椅子。頑丈なロープ。
救命草をこの人に――というよりは、この人から情報を引き出すために使ってもよいと思えるだけ。
バケツをひとつかふたつ。それと井戸の場所を教えてください。
ああ、それから、この人に尋ねたいことをあとでリストにして渡してください。
端的な形で、そうですね、5個か10個程度の項目にまとめて頂けると助かります」
さて、と言葉を切って私は彼に歩み寄り、挨拶代わりに軽く顔を蹴って話しかける。
「はじめまして、名も知らぬ暗殺者さん。これからあなたにお話を伺います。
こちらが知りたいことをすべて伺うまで、あなたはこのお屋敷から出ることはできません。
個人的な恨みつらみはありませんが、仕事なので最後までお付き合いいただいて、すべて済んだら衛兵に引き渡します。
――ご理解いただけましたか?」
まあ、理解されようがされまいがやるべきことは変わらないのだけれども。
■PLから
気の毒な赤髪さんにご挨拶するなど。
インタビューの時間だ!