その瞳が視るもの
>「へー、なんだこれ。
変なの......おいしいのか?」
『お饅頭』を見てふしぎそうにしていたアポロだったけど、ひとくちかじるとまたたく間にぱくぱくとたいらげてしまった。
>「ん、びっくり......?
――あ、さっきの炎のこと?
暑いし眩しいし音おっきいし、おれもびっくりしたな。
フィンは大丈夫だったか?」
「うん、平気だったよ。ありがと」
知らない大人たちに囲まれて、ヴォルディークのお屋敷に連れてこられて、あげく知らない男が部屋に入りこんできて火球をはなった......。
っていうの、ぜんぶ今のアポロにとっては大きな問題じゃないみたい。
『冒険者の仕事』がアポロのおかげで達成できた、っていう風に言ったら、とてもうれしそうな顔をした。
>「へへ、ほんとか?
まあ、おれだからなとーぜんだぜ、とーぜん。
フィンとは違うもんね!」
「そっか。......アポロは、強いな」
思わず笑みがこぼれる。かわいい憎まれ口を言いながら、へへんと胸をはるアポロ。
守れて、よかった。
ぽつりとそんな言葉が胸にうかんだ。
守れる力が、すこしでも僕にあって、よかった。
いっしょに守ってくれる仲間がいて、よかった。
緑茶を飲んで苦そうにしているおさない表情を見ながら、僕は心からそう思った。
――ふぅっと、アポロが顔をあげた。その瞳は紅玉の色をしている。
>「庭に......行かなきゃ」
「......わかったよ」
おどろいた。でも、そのままふらふらと立ちあがるようすを見て、僕はひと呼吸のあいだに覚悟をきめた。
僕の「タビットの勘」がはたらくような危険はない。そのことを信じよう。
アポロが行ってしまう前に、僕はいそいでペンを出すと手近のナフキンに交易共通語でこう書きなぐった。
『アポロが視ました。庭へ』
布端を噛み、そのままむりやり引き裂く。カイルさんにはあとであやまろう。ちいさくちぎられた布をポチににぎらせて、こう言った。
「ポチ、僕たちの知ってるひと、できるだけ多く呼んできて!」
ポチもまた、白い翼をまばたきするよりはやく広げて僕の指先から飛びたつ。
僕は街でそうしたように、左手でアポロの右手をにぎる。そうして、ひろいヴォルディーク邸の庭をめざした。
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PL(雪虫)より
アポロを守れてよかったです。
フィンはアポロといっしょにお庭へ向かいます。
ポチはみなさんのところへ飛ばしました。お屋敷中を飛び回りながらメッセージを見せてまわりますが、気づくか否かはPLのみなさんにおまかせです。