鍵のない箱
> 何をする気なんだ?」
「お聞きになりたいですか?」
にっこりと笑みを作って首をかしげる。
言外に、聞かない方がよいのでは、という意味を含めて。
知りたいことを列挙したカイルさんに、みっつ付け加えてもよいですか、と確認した。
「彼の直属の『コンダクター』の名と容貌。
彼がどこで、どのように教団と接触したのか。
教団の構成員が集まる場所があればその場所」
ひとつずつ指を折って口にする。
「セシリアさんというのは姉君でしたか。
直截なのは悪いことではありませんが、彼が知っていそうなことから尋ねたほうがよろしいかと」
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
うつろな表情の魔術師を連れて、エミールさんと私は庭に降りた。
庭の一隅、そこに地下室がある。
> 「ここは......昔そういう用途で使われていたみたいだよ。
> 探せば君が欲しいものはいくらでもあるんじゃないかな。
> ちなみに井戸は裏庭にあるからご自由に」
わかりました、ありがとう、と返事をする。
> 僕はそれだけでやっていける世の中だとは思わないけれど」
「綺麗事を押し通すのも、清濁併せ呑むのも、どちらも相応の度量と覚悟が必要です」
彼はそのどちらなのか、あるいはどちらでもないのか。
今まで見たところ、どちらでもないようにしか見えない。
まあ、見込み違いというのはあり得る話だ。
「さて、暗殺者さん」
咳き込んだ赤髪の魔術師に話しかける。
腰から提げていた銃を手に取り、弾を抜き、銃身のほうを手に持って彼が縛り付けられた椅子の周りをゆっくりと歩きながら。
「先ほどお話したとおり、これからあなたにお話を伺います。
――と、その前に、」
服に付いた埃を払うような風情の何気なさで、銃把を顔へ――正確には口許へ向けて振り抜いた。
手に何かが折れた感触が伝わる。
回避どころか受け身すら取れない状態で(縛られているのだから当然なのだが)顔面を強打された魔術師が椅子ごと倒れた。
額のあたりを踏みつけ、今度は銃口を魔術師の口にねじ込む。
二度、三度と捩じるようにしてあらかたの歯を折ったあと、髪を掴んで椅子ごと引き起こした。
「私としたことが忘れていました。
舌でも噛まれては台無しですからね。
あなたにとっては最後の機会だったわけですが」
いいですか、と前置きして続けた。
「あなたは何を言っても言わなくても構いません。
無論、本当のことを言っていただけるならそれが一番いいのですけれども、残念ながら私たちはあなたが本当のことを言っているのかどうかについて確証を持つことができません。
ゆえに、あなたが嘘をつきようがないと確信できるまで――そのような状態になるまで、同じことを続けます」
「壊さなければ開けられない箱の中身をあなただけが知っていたとして、その中身をあなたが正直に喋ったとしても、結局のところ箱を壊さねばあなたが正直に喋ったかどうかは解らない。そうですよね?
ですから、私たちは、あなたの人格という箱を壊して中身を確かめることにします」
言うだけ言ってから、もうひとつ忘れ物をしていたことを思いだした。
「――あなたが寝たときに起こすための水を汲んでおかないといけませんね」
床に置いてあったバケツをふたつ手に取り、ひとつをクーガさんに渡す。
「ひとつ分、手伝っていただけますか?」
そのままエミールさんに向き直って続ける。
「先に始めていていただいて構いません。
殺さないこと、寝かせないこと、喋れない状態にしないこと、この3点さえ守っていただければ、あとは何をしていただいても結構です」
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
庭に出る私たちとすれ違うように、白い翼が地下室へ舞い降りてゆく。
庭にいたのはフィンさんと――アポロだった。
■PLから
歯を折って(自殺対策)、これから何をする予定かをざっくり説明したあと水を汲みにお庭に参ります。
アポロとはそこで接触できるかなあと。
尋問は基本的に何をするということもなく、淡々と暴力を振るい続けるだけなので端折っていただいて構いません。
あと、3点ばかり質問を追加いたしましたのでよしなに。
エンディングについて特に希望はありませんが、時間があればモーリスのところへ捕虜から引き出した情報を持っていきます。