【B-1-4】植物のお医者さん
冒険者たちの祈りは深い。
その祈りの動作に応えるかのように視界は明るくなる。
見上げれば、そうだ。
あの空に浮かぶ満月が凛々と輝いているではないか。
月光が村全体に広がっていくと忌まわしき骨は崩れ、肉は灰になる。
――これを奇跡と言わず、なんと言えようか。
柔らかな光の中、シィノヴィアには何かの声が聞こえた気がした。
『月の仔よ。
其方に紫の導きを』
それは言語ではなく、想いそのままのようなもの。
まるで心に直接届くかのようなその言葉は――果たして誰がこぼしたものか。
どことなく聖像の女性は微笑んでいるような気がした。
そして、シィノヴィアの手にはいつの間にか紫色の書物が託されていた。
こちらも読んでみようとすると、そこに記述されているのは何らかの神話であろうか。
* * *
紫色の書物を使い、聖堂の中へと入っていくと、聞こえてくるのは虫の音。
扉の向こう側は森、いや天井や壁があるため人工的に室内に植物がみっちりと植えられた場所のようだ。
獣道を縫うように人工林の中を抜けていくと、明らかに異質な物体がぽんと置かれている。
それは、木製の机とその上に並べられた七つの植木鉢。
少し大きな緑色の植木鉢を囲むように六つの植木鉢が円状に並べられている。
緑色の植木鉢には土だけしか入っていないが六つの植木鉢にはそれぞれ同じ草が植えられているようだ。
虚弱草――様々な病気にかかりやすい弱い野草の一種である。
一方でその花煎じれば様々な病気の特効薬になるとも言われる。
......そして今目の前で植えられていたのは明らかに弱っている。
赤い植木鉢に入ったものは見るからに明らかに弱っている。
ごく普通にごく普通の病気に罹っているらしい。
黄色い植木鉢に入ったものは若干へたれっている。
生命力が落ちているのかもしれない。
魔術に長けたものが生命力を補ってやれば、きっと瑞々しく蘇るであろう。
藍色の植木鉢に植えられたものはまるで人間が耳を塞ぐかのように花弁や葉が曲がっている。
上手な音楽でも聞かせれば、その硬直は解けるかもしれない。
橙色の植木鉢に植わったものはだいぶ渇いているようだ。
栄養のある液体をかけてやれば溌剌とするのだろうか。
青色の植木鉢の中の虚弱草は一見何もない。
だが隠されたものを見抜く道具を通せば、透明な油のような虫が草を攻撃しているのが見えるだろう。
紫色の植木鉢に植わった周囲に生えた蔦や茨のせいでまともに伸びることができないようだ。
それらから草を解放させてやれば元気になるはずだ。
少し大きな緑色の植木鉢の土の上には小さなカード。
『のびのびと心優しき者には、緑色の知恵が育っていく』
魔法文明語で簡潔にそう記されている。
緑色の知恵――今までの例からすれば緑色の書物であろうか。
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あんみつ@GMより
紫色の本を入手したので更に先に進めますね。
【虚弱草】について見識判定が可能です。
目標値は14。成功すれば『用語目録』に記されたことがわかります。
また同じく虚弱草について病気知識判定が可能です。
目標値は14。成功すればそれぞれの病気がわかります。
誰か一人でも成功すれば、全ての様子が詳しくわかるとしていただいて構いません。
虚弱草の病気を魔法などで回復することができます。
その際の目標値は14です。
虚弱草の周囲の茨や蔦は解除判定に成功することで草本体に傷をつけず取り払えます。
その際の目標値は14です。
残りの4つは特に判定を有しません。
適切な行動を取れれば、元気になります。
全ての草を元気にすることに成功すれば、ラキアスのもとに緑色の本が届きます。