狭間

 シィノヴィア(紫乃) [2015/12/09 20:03:21] 
 

本だらけの部屋。
話に聞く図書館みたいだと思ってから、ここが図書館だと思い出した。
いや、本当にそうだろうか。
シィノたちが移動したのなら、ここは図書館ではないかもしれない。
風景が変わっただけなら、シィノたちはまだ図書館の中だ。

誰か来た。
きしみながら戸が開く。

>『あら、ようこそ。
> いつの間にかいらっしゃっていたのですね』

レーヴ嬢と名乗った女性が言うに、ここは図書館の夢の中。
不思議だ。
夢なのに、こんなにも鮮明。
シィノの見る夢はもっと変で、起きた瞬間に何の夢だったかわからなくなることもあるのに。
建物と生きものでは、夢のありかたも違うものなのか。

そんなことを考えているあいだにも、レーヴ嬢の話は続く。
物語を目覚めさせるとは、どういうことか。

レーヴ嬢がひとつの扉を開く。
真っ暗だ。
目を凝らしたけれど、やはり暗い。暗いというか、黒い。
光の加減で暗いのとはわけが違う様子。

>『扉の奥には最後の鍵が待っています。
> さあ、どうぞお進みになってください。
> 勿論罠などございませんわ――夢ですもの』

夢の中だから罠がない、とはどういう理屈かわかりかねるが、案内人が言うのだからそうなのだろう。

「行きますよ」

棒を手にして探っているラキアスに声をかけて脇を通り抜け、扉をくぐった。