廃墟に佇む蛮族の城
飛んでくる砂に耐えながら目を見開き、ただ一点を見つめ、走る。
シオン君も妖精を頼りに『サンディの導き』とやらを追う。
小さな旋風の足は速く、少しずつ、少しずつ、私達との距離は離されてしまう。
「くっそ・・・速い・・・!・・・あっ・・・」
一瞬だった。
砂から目を守ろうと腕を目の前にかざしたその一瞬で、ついにサンディの導きは私の視界から姿を消した。
>「今辿ってきた道筋はあたしも初めてだわ。
でもきっと間違いなく街へと近づいている。
なんとなくわかるもの」
砂漠の炎天下の中結構な距離を走ったおかげで、滝のように汗が流れ、ついでに頭もクラクラしてきたが・・・
結果オーライってやつか。このまま順調に行くといいけどな。
「はっ・・・はっ・・・
ははは・・・砂漠で全力疾走なんて・・・するもんじゃないね・・・
・・・あー・・・まずいな、幻覚まで見えてきたよ、ははは・・・」
多分目的地とは違う方向。
視線を逸らした先に緑豊かなオアシスが見えてきやがった。
流石に都合よくオアシスなんてあるわけないし、サンディに付く前に死ぬかもな・・・
>「あれは......まさか......!」
おいおい、冗談だろ、真に受けないでくれよ。
こんな都合よくオアシスなんてあるわけ・・・あるわけ・・・
あったよ。
フラフラになった足を引き摺りながらエレミアの後を追うと、場違いな緑と豊かな水。
出発前にエレミアが話していたオアシスが、確かにそこに存在していた。
「はは、ははは・・・マジかよ。
神の恵みか?それとも死ぬ前の餞別か?
まあいいや・・・とにかく。」
助かった!
荷馬車の中にあった空き瓶を借りて水を掬い、一気に飲み干すと、生き返るような心地がした。
ああ、飛び込みたい。けど我慢。
>「砂漠に残った伝説の一つにね。
砂が泥を経て水に生まれ変わるというものがあるの。
おそらくこのオアシスのことを面白おかしく語ったんだと思うわ。
でも......この水にそれなりの効能があるのは確かよ。
例えば――石像を人に戻したり」
オアシスの水を掬いながら、エレミアは語る。
石像を人に戻す、ねえ。
救った水を調べる、とまではいかないが、じっと眺めてみると、微かにだが純粋なマナが混ざっているのを感じた。
これのおかげで石化を治す効果がある、なんて伝説が広まってるってワケか。
試しにその辺に転がっていた岩に水をかけてみるが、何も起こらない。
まあ、当然っちゃ当然か。
>「あなたたちも何か持っていたら汲んでいったらどう?
父はバジリスクだから――何があるかわからないわよ」
忠告だろうか。
砂漠の伝説だとかはイマイチ信じられないけど、念には念だ。
「あ、そんじゃこの瓶借りるよ・・・っと。」
瓶を1つ借り受け、水を汲む。
さあ、サンディに向かうとしよう。
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>「着いたわね。
――サンディに」
オアシスを出て少し。
砂漠の中に見える街並み、いや、廃墟の群れ・・・か。
エレミアに先導され、足を踏み入れるが、まさにゴーストタウンといったところで。
人影は勿論、動物も蛮族も、生命の気配が全く無い死んだ街。
向うに見える場違いな屋敷さえなければ、先の文明の名残を探索するのを満喫できただろうに。
とてもそんな気分にはなれないな、残念。
>「少し前までは他の蛮族たちが根城にしていたんだけど。
その大半を父が追い出しちゃったのよ。
――見た目が醜いって言ってね。
まあ有事の時と定期的な巡回には来るようだけど、今はその時間じゃないわ」
一応他の蛮族はいるのか。
まあ、今は居ないなら居ないで結構。
要らん小競り合いをしなくて済むに越したことはないしな。
しかし・・・
見た目が醜いから追い出した、か。
蛮族の高位種には人族に化ける連中もいる。
確かバジリスクやドレイクといった支配種族は大半が美男美女の姿を取ったはずだ。
実際、ウィークリングとはいえ、目の前にいるエレミアもかなりの美人だし・・・
バジリスクが人間に化けるのは自分の本来の姿を醜いと思ってるから・・・だったかな?
シオン君の説明ちゃんと聞いとけばよかった。
まあとにかくだ。
醜い自分の姿を嫌い、人に化けるバジリスクが、同族たちを醜いと言って追い出すのは、皮肉というか滑稽というか・・・
まあ思うだけで口には出さないが。
>「とりあえず綺麗そうな家を借りちゃいましょう。
そこで着替えていくわよ。
ちゃんとした格好じゃないと会ってくれないかもしれないし」
エレミアから荷物を受け取り綺麗そうな家を適当に探してみる。
丁度いいのがあった、ここで着替えていくとしよう。
さ、お待ちかねの衣装のお披露目だ。
なんてな。
「それじゃ私はこっちで着替えるとしようかねー。
・・・覗くなよ?なんて。」
ニヤリと笑ってシオン君に一言。
まあ別に見られて困るようなものでも無い・・・が・・・
エレミアと比較して、自分で言ってて悲しくなってきたよ・・・
------PL
08:06:34 シイナ@キリエ 薬品学判定 2d6+1
Dice:2D6[5,6]+1=12
判定は技能持ちなので自動成功に期待して一応振ってみました。
がそう簡単に出るわけないですよねーおのれいちたりない(血涙
オアシスの水は1つだけ、キリエ的には効果は半信半疑ですが持っていくことにします。
キリエはあと100年位したら背も伸びてないすばでー()になってます。多分。
成長期が遅いんですね、仕方ないね。
・追記
達成地に知力ボーナスを加え忘れていたようなので、実際は判定に成功してました。
なので、RP部分だけ進行に影響ない程度に修正させていただきました。