【C-1-2】バジリスクとコボルド
>「了解だ。
>ああ、その前に、何の用意をするのか、聞かせてくれ。」
「父は――舐めて勝てる相手じゃないからね。
せっかくだからゴーレムでも作ろうかなって。
――不安?......まあ、そうよね。
何ら別に見張っていっても構わないわよ」
ゴーレムを作る......という用意があるらしい。
けれど、そこには若干の含みがあった。
嘘......という程のものではないが。
>「分かりました。そのバレル? って言うコボルドは別に何もしてこなければ放置でいいですか?」
――また、シオンの問いかけに対しては。
「そうね......寝かせちゃおうかと思ってたわ。
あたしの戦いに関係はないし......悪い子じゃないしね」
わざわざコボルドを殺す必要はないようだ。
エレミアは邪魔にならないように、もしくは危害が及ばないように眠らせておくつもりらしい。
おそらく魔法でもかけるつもりなのだろう――これもまた彼女の用意の一つかもしれない。
「それじゃ、二人共よく似合ってるし行きましょう?」
* * *
エレミアが目指して歩き出した先にあるのは、父の棲む館。
翡翠のような屋根と白磁のような壁。
門から見える屋敷の庭には砂漠に咲く亜種だろうか――薔薇の庭園がある。
その赤色の絨毯の中には美しい男女の石像。
まるで"生きている"かのように美しい技巧である。
門には鍵上の魔動機が備えられており、簡単には開かないようになっている。
その門には別の何かが備え付けられているようだ。
知識を探れば、遠くの様子を見るための魔動機と通話ができる魔動機だとわかるだろう。
おそらくこの街に勢いがあった頃の名残の品であろう。
「......エレミア......お前か?」
その魔動機から聞こえたのは、どこか影のある男の声。
「ええ、エレミアです......お父様......」
その声に返すエレミアの声は気持ち悪いくらいに丁寧なもの。
エレミアの口ぶりからして、今話している相手はモノマニア――彼女の父であろう。
「後ろの者たちは......?」
「――お父様の想像しているとおりですわ」
モノマニアとエレミアの間では少し意味深な会話が交わされていた。
「まあいい......中に入るがいい」
「ありがとうございます。
――ああ、そうだ少し荷物がありますの。
バルレにお願いしてもいいかしら?」
「構わない。
すぐに行かせよう」
そこで通信が途絶える。
親子の会話はこれで終わったようだ。
魔動機越しとはいえ、ひどく淡白で事務的なものであった。
カチッと機械的な音がしたあと。
門が独りでに開いていく。
屋敷への招待の準備が整ったのだ。
* * *
「エレミアお嬢様!」
白い毛並みのコボルドが正面玄関から庭園へと駆け出してくる。
「あら、バルレじゃない。
久しぶりね、元気だった?」
バルレと呼ばれたコボルドに対してエレミアが見せたのは自然な笑顔であった。
父親とは異なり、このコボルドについては複雑な感情はなさそうだ。
「はい、わたしもモノマニア様も元気でした!
二年前はお嬢様がいきなり出て行ったのでとても心配していたのですが。
お元気だったようで何よりです!」
「ありがとう......ごめんね。
そういえば荷物の話聞いてる?
あそこの家にあるの、私たちはお父様にご挨拶してくるから。
部屋まで運んでおいてくれるかしら」
エレミアが指差したのは先程キリエとシオンたちが着替えた場所だ。
そこには武器や鎧などの荷物がまとめられている。
「わかりました!
お嬢様のお部屋へお持ちしておきますね!」
そう言ってバルレは深々とお辞儀をしたあと。
エレミアが示した方向へと駆け出した。
* * *
「武器や道具についてはバルレにお任せして。
お父様にお会いしましょうか。
――入ってすぐの部屋よ」
エレミアはそう言って庭園の中へと歩みだしていこうとする。
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あんみつ@GMより
少し進行ですー。
【バルレ】を『人物表』に登録しておきます。
屋敷の門に対しては魔法的な鍵がかけられています。
魔法的な手段で達成値25以上を出せば、解除できます。
魔動機の類については見識判定を試みることができます。目標値は14。
成功すれば、それぞれの機能がわかります。
まあ監視カメラとインターホン的なものですね。
エレミアについていけば屋敷へと入っていくことが可能です。