【C-1-4】過ごし方それぞれ
>「えー、本日はこの様な絢爛豪華たる屋敷にて芸を披露させていただける事、誠に光栄でございます。
>私、しがない旅の芸人をしております『サン』と申します。以後、お見知りおきを。」
モノマニアを前にしてキリエは自らの名を偽る。
エレミアはキリエの言葉を特に気に留めていない。
>「まだまだ若輩故、至らぬ事もあるでしょう。
> ですが、このような場で芸を披露できるという、私にとっても又と訪れることのないであろう貴重な機会であります故、全身全霊を賭け、私の芸を披露させて頂きたく存じます。」
そう言って後ろへすたっと下がったキリエに対し。
「ふふ......人族の身ながら私のような蛮族相手にでも芸を見せたいと思うか。
恐れを覚えぬ変わり者かそれとも天性の芸者か。
――まったく、楽しみなものだな」
面白いものを見つけたかのようにモノマニアは唇を歪ませた。
* * *
単なる興味心からか、それとも思惑があるのかはわからないが。
モノマニアは三人に問うた。
――自分が怖いか、と。
>「モノマニア様はバジリスクだと伺っております。
> 私のような矮小な存在が、バルバロスの支配階級におられる方を恐ろしく無い、と言えば嘘になりますね。
> ですが私は芸人として、ここに招かれました・・・私の芸を披露する相手を恐ろしがっていては、芸人としての名が廃ってしまいます故・・・
> そうですね、ここは恐ろしくもあり、恐るるに足らず。とお答えさせていただきましょう。」>「会って間もないの方に言うのは失礼とは思いますが、正直に言いますと、怖いです」
キリエとシオンはそれぞれの答えを出したが。
モノマニアは二人の言葉に対し頷きもせず。
ただただ......視線一つだけを送り続けていた。
* * *
部屋を出て、少し依頼の実行まで時間を取ろうというエレミアの言葉に
>「自分は少し、屋敷を見て回りたいですね。
> 屋敷や美術品にも興味はあります。
> バレルさんをお借りしてもいいでしょうか?」
シオンはこの蛮族の屋敷を見て回りたいと答えた。
「わかったわ、バルレに話しておくわね」
そんなシオンの言葉にエレミアは軽い調子で許可を出す。
「とりあえず空いている部屋に案内するわ。
ついてきて......あとでシオンの部屋にバルレを向かわせるから少し待っててちょうだい」
――それぞれが案内された部屋は何もない部屋だった。
最低限過ごせるだけの家具がある部屋。
狭いわけでなく部屋自体はそれなり広い。
だからこそ寝具などを除いて何もないことに寂寥感を憶える。
――監視用の魔動機などもなさそうなため、そこは安心だろうか。
* * *
何もない部屋の中、キリエが手持ち無沙汰になっていた。
そんな中で時間潰しとして思いついたものがエレミアの部屋への来訪だった。
>「邪魔するよ。」
――エレミアの部屋にノックをして。
キリエが部屋の中を見ると部屋の中央でエレミアはぼんやりと立ち竦んでいた。
どうやらキリエが入っていたことには気がついていないようだ。
>「あー、ゴーレム作るって言ってたろ?
> 見張りってほど信用してないワケじゃないけど、どんなのか気になってさ。
> 邪魔はしないから、おれにも見せてくれよ。」
エレミアに向けてキリエがそうやって話しかけたところで。
ようやくエレミアの時間が動き出した。
「......えっと、来てたのね。
悪いわね――気づけなくて。
そっかそろそろゴーレムも作っておかないとね」
営業スマイルでにっこりと微笑みながら。
エレミアは手に持っていた何かを荷物にしまいこんだ。
――ペンダントだろうか。
「ゴーレムの作成って結構集中しなきゃいけない作業だから。
あまりお相手できないけれど許してね」
エレミアはバルレに運んでもらった袋の中から杖と動物の骨を取り出す。
そして魔法の言葉と動きを交えながら――創造の儀式を開始する。
集中しているのかエレミアにはキリエの姿が見えていないようだ。
斥候の技術を持つキリエがこっそり動いても気づかれないだろう。
* * *
シオンの佇む部屋にコンコンとノックの響く音。
「お休みのところ申し訳ございません、バルレです。
お客様が屋敷内を歩いてみたいということですので。
私がご案内させていただきます」
ドアを開いてみると視界に飛び込んできたのは白い毛玉のような物体。
よくよく見れば――バルレである。
バルレの案内で屋敷を見て回る。
気になるものとしては屋敷内にちらほらと見つかる石像である。
どうやら素材は同一のもので、その姿は性別や種族を問わず美形揃いだ。
「私とモノマニア様の部屋以外はほとんど使われておりません。
昔使われていた調度品が少し残っているだけなんです」
バルレの言葉の通り、幾つかある他の部屋は皆寂しい感じがした。
家具すらない部屋もあり、生活感と呼べるものは何もなさそうであった。
「あ、こちらは......」
バルレの案内のままモノマニアの屋敷を進んでいたシオンであったが。
とある一室の前で足を止める。
バルレが急に目の前で止まってしまったのだ。
他のところに比べると少しだが豪華な調度だ。
ドアの傍には門の扉に備えられていた監視用の魔動機がある。
「こちらはモノマニア様のお部屋ですね。
私も入ることを許可していただいていない部屋なんです。
なのでお客様もお通しすることはできません。
......申し訳ありません」
予想通りここはモノマニアの部屋なのだろう。
蛮族の支配者の居室である。
何か眠っているものでもあるのだろうか。
「あとは......そうですね。
奥様の使われていたお部屋だけは入れませんが。
あとのお部屋はお入りいただいて構いませんよ。
――あ、そうですね!
よかったらお風呂にお入りになるのはどうですか?
魔動機で動いていてあったかくて気持ちいいですよ」
バルレはシオンの――そしてエレミアの思惑など何も知らないのだ。
だから至れり尽せりのおもてなしをしようと考えている。
「そういえばお客様。
何かお困りのことなどございませんか?
もしおありでしたら私に申し付けくださいね」
* * *
――しばらくしてエレミアのゴーレム作成が終わったようだ。
作り上げられたのは骨で組みあげられた獣型のゴーレムだ。
「よし、完成。
お待たせしたかしら?」
キリエの方を振り向いたエレミアの顔はどことなく疲れていた。
一時間通しで魔法の儀式を行っていたのだから当然ではあるが。
「申し訳ないんだけれど――少しだけ休憩させてくれない?
ちょっと休んだら貴女たちを呼びに行くわ。
あまり長引くと父に勘付かれるかもしれないし。
シオンにもそう伝えてくれる?」
―――――――――――――――――――――――――――――――
あんみつ@GMより
進行ですー(*´∀`*)
キリエはエレミアの部屋で隠密判定の達成値13以上を出せば、
部屋の様子を伺ったりちょっとしたことならバレずに可能です。
シオンはバルレに聞きたいことがあれば、聞いてもらって構いません。
作成したゴーレムはボーンアニマルですね。
次回から戦闘に向けて動き出そうかと思います!(*´∀`*)