【F-1-3】明かされたかもしれない手紙
――父から娘へ一部抜粋
エレミアよ。
これをお前が読んでいるときは――既に私を殺した後であろう。
......それでいい。
イネス亡き後、私とお前はもう昔のようには戻れない。
どちらかが折れるまでは同じ砂の上では咲けないのだから――。
* * *
お前は私を憎んでいることだろう。
それは仕方のないことだ。
私はお前に憎まれるほどのことをしたのだから。
だが、誤解しないで欲しい。
私はお前のことを憎んでいたのではない。
ただ......愛していたのだ。
イネスの面影を残すお前のことを愛していた。
他の者には決して渡したくないと願ってしまうほどに......狂おしく。
お前があの男を連れてきたとき――私は酷く混乱した。
その乱れが私のことを狂気に駆り立て......。
後はお前もよく知っている――。
* * *
私を殺したところで決してお前が全てから自由になるわけではない。
お前に流れている穢れを帯びた血からは決して逃げることはできないだろう。
だが、それでもお前は自分の血を呪うべきではない。
お前に流れているのは気高き私と同じ血なのだから。
そして何よりも我々の誇りであるイネスと同じ血なのだから。
どんな苦境に立たされようとも――お前に通う血を信じるのだ。
私は......お前が――。
* * *
最後に一つ大事な話がある。
私はお前に対して大きな嘘を吐いた。
お前があの男を連れてきた夜。
私はお前が寝静まった頃、その男を殺そうと動き出した。
ただの画家の男を殺すなど私にとっては赤子の手を捻るより容易な......はずだった。
だが、私にはその容易なことができなかった。
今でも何故できなかったのかはわからない。
憶えているのは――お前の顔が浮かんだということだけだ。
ここまで言えばわかるだろう。
お前の愛した男は今でも生きている。
その男は今――。
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あんみつ@GMより
こちらはおまけになります。
この内容は聞いていたことにしても初めて知ったことにしてもいいです。
おまけなのでそれ以上でも以下でもないです。