【A-4-1】世界から世界へ
神殿の椅子に腰掛けつつヴァーミリオンは答える。
>「出来れば少し休ませて貰えるかな?
>実は連戦でクタクタでね。その後に剣を使い帰ろうと思う。
>一度自分で試した方がまた来やすい様な気もするから」
「そうですわね......ヴァーミリオン様はあれ程まで戦いになられたのですから。
この神殿にはお休みになれる部屋もございますが。
ご利用になられますか?」
エールは少し披露した様子のヴァーミリオンを気遣ってくれる。
神殿には寝具の用意された部屋もあるようで。
その場所をヴァーミリオンに貸してくれるとも語る。
そんなエールの言葉に耳を傾けつつ。
ヴァーミリオンは目を閉じながら此度の冒険を思い返す。
>「私はこの世界を見て回った訳じゃない。
>でもわかる事もある。ここは良く自由を表している。
>自由は縛られる事だ。如何な自由にも束縛がある。
>人が人である限り様々な義務感からは逃れられない。
>意志あるものは自分自身の思いに縛られているんだ。
>ここグランド・フェザーにいるのも言わば此処に居たいと思う自身に縛られていると同じ」
ここは自由の神と呼ばれる神ル=ロウドに関わる世界である。
だからこそ、この世界には自由の姿が表現されているのだと。
ヴァーミリオンは開いた目でエールを見据えて言葉を続ける。
>「ならば我らの自由とは何か?
>私はこう思う。自由とは自身を繋ぎ止めるモノを自ら選ぶ事である、と。
>だからこの剣も私のもとに来たのだろう。
>この王国とラクシア何方に縛られる事もできる様に」
――エールはただ静かにヴァーミリオンの言葉に頷いていた。
それから席を立って窓の方へ体を向ける。
神殿の外に広がる景色は自由な空と美しい森が続いている。
「この世界は......何のためにあると思いますか?」
窓の外を見ながらエールは語る。
「この世界が生まれた時から、巫女も竜も鳥も妖精も......。
それぞれがそれぞれの責務を持っているのです。
このどこまでも自由に続く空の下で――私たちは決して自由ではないのです」
窓の外から空へ向けて彼女は手を伸ばす。
どれだけ伸ばしても自由な青との距離はゼロにすることはできない。
「古き時から続く巫女の教えにはこうあります。
ここは自由な世界ではなく、自由を知るための王国なのだと。
それはつまり舞台装置である私たちは自由ではなく......。
ヴァーミリオン様のようにこの世界を訪れた方こそが自由のであるのだと」
彼女の背中は悲しげに見えたかもしれない。
けれど振り返ってヴァーミリオンの方を見つめるその顔には。
――穏やかな微笑みがあった。
「ですが、私はそれでも構わないのです。
自由の神のため、その教えのように自由に生きようとする人々のため。
私の力を貸せることは掛け替えのないことなのですから」
彼女は巫女としての生に十分なほど満足しているようだ。
そこに本物の自由がなくても。
いや、ヴァーミリオンの言葉を借りれば――彼女のこの選択こそ自由の証拠なのかもしれない。
* * *
少し休んだ後、ヴァーミリオンは模造の剣を手に取ることだろう。
空間を割くことのできる剣。
世界と世界の間にある障壁を切り開くものだ。
その手で力強く空を切れば。
空間に不思議な裂け目ができるだろう。
そこから見えたのはヴァーミリオンにとって親しき世界。
「外の景色ですわね。
ヴァーミリオン様の本来生きるべき世界。
きっとヴァーミリオン様にとっての真の自由がある場所です。
――神のご加護が常にお傍にあることを祈っておりますわ」
エールは笑顔で見送ってくれる。
これは決して永劫の別れではない。
ヴァーミリオンにはその手に剣があるし。
そんなものがたとえなくとも......彼はこの世界を訪れようとするだろうから。
――裂け目を通っていけば。
そこは真の自由な世界――ラクシア。
抜けた先の景色はヴァーミリオンだけが知るだろう。
ヴァーミリオンの探究はまだまだ始まったばかりだ。
それはきっと世界から世界へ――どこまでも。
―――――――――――――――――――――――――――――――
あんみつ@GMより
約2か月間お疲れ様でした。
ヴァーミリオン最後の進行となります。
こちらはエンディング専用カテゴリとなります。
こちらの記事への返信を投稿いただければ、ヴァーミリオンは解放となります。
剣のかけらやSQ達成報酬など今回の報酬は、
募集の方に記載しておくのでご確認ください。
内容については最後なのでお好きなように書いてください。
ヴァーミリアンの冒険に素敵な締めを(*´∀`*)
このカテゴリに記事を投稿する際は、
カテゴリ『4-世界の意味』にチェックを入れて投稿してください。