霊獣の追跡と
「あれは......?」
闇夜を見通す目はあれど、ここから深い穴の底を把握することはできないようだ。
だがこの目は、穴の中にほのかに光る、何らかの光源を見逃さなかった。ほんの一瞬ではあったが、あそこには間違いなく何かがある。
さらに周囲に目を向けると、背後に特に大きな山、その向こうには......あれは何だろうか、島のようなものが見える。それも、宙に浮かんで。
「よくわからないな、ここは。また妖精の仕業か?」
《あ、なんか私にわかんない言葉で貶してない?》
《してない。近い》
私の頭にのしかかるフィルギャをひっぺがしていると、ニコデムスがまた何かを感じ取る。
『しばらく見ない間に鋭くなったな。―上にいるな』
『そう』
ニコデムスの背に乗ったままそちらへ目をやると、見上げるような巌の上に翼の生えた犬のような獣の姿があった。
それはすぐにこちらに気づき、私たちの前に降り立つ。そして私たちに向けて言葉のようなものを発した。
《何よ?アレは》
《ケルブ、幻獣だ。幸運を呼ぶとかなんとか......言ってること、わかったか?》
《ぜーんぜん》
『強い?』
『わかるんだろ?私たちの敵じゃない』
ケルブはこちらをしばし見つめた後、おもむろに背を向け歩き出す。何か喋っていたのは、警告か何かだろうか。
《......慌てて逃げてるようには見えないわねぇ。悠々としちゃってさ》
「追ってみるぞ。穴を調べるのは後でもできる」
あの幻獣はついてこいと示したようにも見えたし、ただこちらへの興味を失ったようにも見えた。だが何より、私があれに興味を持った。それだけで追う理由は十分だ。
振り返り、ひときわ高い山を目印に現在位置と浮遊島の方角、幻獣の進行方向を頭に叩き込む。さらに、スケッチブックとペンを取り出してそれらを簡単に描き込んだ。
かなり短い時間でかいたが、まあまあの出来だ。
「―よし、行こう」
後を追うよう指示を出したのだが、ニコデムスはゆっくり歩きながらもしきりに空に顔を向けたがる。どうしたのか問うと、
『ドラゴンがいるかも。ニオイがする』
と返ってきた。どこにいるとか、距離はどうかとか聞いてみたものの、そこまでは分からないようだった。
『......会ってみたいか?』
『うん』
『わかった。だが、ひとまずはケルブを追う』
まだ周囲を気にするニコデムスを諌めながらも、私は高揚していた。耳につけた、龍の瞳石に触れる。また龍に会えるかもしれない。その強大な存在に、私は多少なりとも魅了されているのだ。
フィルギャにも会話の内容を伝えると、自分はニコデムス以外に見たことはない、ぜひ見たいと声を弾ませた。
「楽しみだ」
『タノしみ』
《楽しみね》
それぞれ一様に期待を胸に、私達は歩を進めた。
PL
穴の探索はするつもりですがひとまず後回し。
前回の投稿でまもち+15で振ってしまっていましたが、実際は+14です。すみませんでした。
地図作っときます
00:36:20 キャスパー@ティキ 地図作製判定 2d+13 Dice:2D6[3,6]+13=22