紺碧の神官デビュー
平穏なシェアハウスでの日常。
そんな中、突然仕事はやってきた。ラキアスが仕事を持ってきたのだ。
管理人から来訪を告げられ、彼女を待合室...リビングで待ってもらっている間に僕は支度をする。
待ってもらっている間、ルームメイトがラキアスに紅茶を勧め、話を聞いているようだ。
「お待たせいたしました。」
恐らく、法衣姿を披露するのは初めてだろう。今回は神官として仕事に行く。
>「グレースさんお迎えに来たよ。嬉しそうな顔しているね。まあ無理ないか。それじゃ行こう。」
「よろしくお願いします。嬉しいのは二つ理由があるんですよ。一つはご一緒に仕事ができることですが。もう一つは、ようやくこの職で行けるようになったことなんです。」
そして、僕以上に今回の仕事の成果を楽しみにしている人がいる。
ラキアスから話を聞いて、目を輝かせているのは、作家の彼女だ。
依頼人が絵本の作家ということもあり、いつも以上に期待をしているのがよくわかる。
「では、行ってまいります。」
ルームメイトに見送られ、
ラキアスから差し出された手を取り、仲間が待っている場所に向かう。
その間にラキアスからメンバーの話を聞いた。
メンバーはいずれもラキアスよりも先輩だ。仕事については実績も信頼もあって当然だろう。
>「わかってると思うけど、これは仕事だからね?いつものように、グレースさんばかり構うことは出来ないよ。
>時に冷たく見えるかもしれないけど嫌いになったわけではないからそこは安心して。」
「その点は大丈夫ですよ。と、いいますか寧ろ僕は身の引き締まる思いがします。
今回の依頼人はリピーターとして貴女方に仕事を依頼をされたわけですもんね。
パーティにとって、お得意様になる可能性のある大事なお仕事にお誘いくださったわけですから。」
僕だって、一応は客商売をしていた。だから一度仕事を請けて、再び依頼をしたお客ほど
ありがたいものはない。絶対に自分の顧客にするべきなんだ。
個人的な感情が後回しになることは、十分承知している。
待ち合わせ場所で、シイノさんに「ご無沙汰しています」と、赤い服の男性...アルフさんには
「はじめまして」と挨拶をした。
ラキアスは、悪気はないのだが言葉の選び方には少々アレな所がある。
僕はそれもわかっているが、アルフさんはすかさずツッコんだ。
>「ちゃ、ちゃらんぽらんって酷いなおいw
いやまぁ私生活を突っ込まれたらちょっと否定は出来んけどね、一応仕事面は(自称)しっかりしてるからな?」
>「確かに突然暴走するところはあるけど、仕事はしっかりこなしているからね。
そこはごめんなさい。 後、ちゃらんぽらんじゃなくておおらかだと直すよ。」
「僕と違って柔軟で、臨機応変な考え方ができるお方だ...と、僕は予想していますけど、違いますかね?」
そんな感じで会話しながら、依頼人の家に向かう。
* * * * * * *
今回の依頼人、エリックさんが、7色の童話集の一つの物語を紡ぐという仕事を僕達に依頼した。
ミステリアスな仕事だ。絵本の中に直接入る...こんな体験はなかなか無いだろう。
7色の童話集は、この前、図鑑の翻訳をしていた時に、ラキアスが話していたあの話...いや、違ったようだ。
>「そういえば、エリックさんお話の結末はハッピーエンドかバットエンドどちらが好みですか?」
>「いや、ラッキー?童話の結末ってハッピーエンドが基本やからね?
>つーかバッドエンドがお好みですって言われたらどーすんの。
>俺たちも巻き込まれる可能性大やからね!?」
ラキアスの発言に、アルフさんが反応する。
これがいつものスタイルなんだろうか。
>「えっ、そうなの?おとぎ話のなかにはえげつない終わり方もあったから両方あるものなのかなって。バットでもそちらが好みなら希望にこたえるつもりだよ。.....
>あ、そういえば本の世界で亡くなった場合はどうなるだろう?死ぬ気はないけど。」
僕は少し思うことがあり、口を開いた。
「バッドエンドのおとぎ話は、多くはありませんが存在します。
ラキアスにとっては、好きではないにしても印象深いお話なのでしょうね。
バッドエンドの物語の多くに一番使われているテーマは、
【約束を守らなかったらこうなる】でしょう。特に、約束事を重視されるシャドウの方々には素通りできないテーマですよね。
ですから、僕達はルールをしっかり守って仕事をすればバッドなことにはならない、
と、思っています。ただ【重要ポイントを見落とし】て損をすることはありそうですが。」
僕もエリックさんに素朴な質問をぶつける。
「絵本作家と伺っていますが、物語が出来てから絵を描かれるのですか?
それとも、印象に残る光景やイメージから物語が生まれるのでしょうか?」
僕のルームメイトは、作家と画家が別人だ。一緒だった場合はどうなるのだろうか、
ふと疑問に思ったのだった。
3人に続いて、僕もサインする。
アルフさんもそうだが、自分に拘りのある人はペンも自前にする傾向がある。僕もそうだ。
「登場人物欄だと、読める字にしないとダメでしょうけどね。」
迷った挙句、交易共通語できっちりと名前を記した後に、崩したザルツ語でサインをする。
二種類も書いたのは僕だけだが、崩したサインは使い慣れているもので、
見るものが見たら僕だとわかるからだ。
僕がサインした後に不思議な光が4人を包む。
そして行き着く先は...どこなのだろうか。
* * * * *
コルチョネーラです。
シャドウのお母さんが子供に読ませたい物語に必ず一冊は「約束」をテーマにしたものが
あるに違いない、そして大体がバッドエンドなんだろうな、と想像してみました。
つまり、バッドエンドな物語は「売れ筋」でもあるという理論です。
絵本は子供の教科書ですし、ましてや有名なお話ともなれば、常識的に判断すればそんなに恐ろしいことにはならないかなぁなんて思っていますけど。
改めまして、よろしくお願いしますね。
あら、知らなかったんだ。訂正しておきました。
グレース@コルチョ ≫ 7色の童話・基準値7 2d6+7 <Dice:2D6[1,1]+7=9>