戦いが終わって

 グレース(コルチョネーラ) [2016/03/02 08:41:18] 
 

ラプンツェルさんは、僕の疑問にこう答えてくれた。

>「外のことはね、お婆さんが教えてくれたのよ。
 最近はあなたの言う通り、お婆さんに頼んだ本を読んで勉強することもあるわ。
 お婆さんに外のことを聞くとね......悲しそうな目をするから」


「お婆さん...そうですか。外のことはあまり聞けないのですね。
 そしたら理由までは聞けないですよね。」


ああ、核心はそこにある。と僕は思った。
お婆さんにとっては、外の世界は居ずらい場所なのだと。
社会に馴染めないのかもしれない。

そうすると、彼女にとっては塔の中だけが心穏やかに過ごせる場所ということになり
ラプンツェルさんをそこに置いたというのも納得ができる。
つまり、そういう価値観なのだ。
閉じ込めたというわけではなく、そこしか自分の居場所が無かった、ということなんだろう。


「あの、女性をお婆さんと呼ぶのは抵抗があるんです。その方のお名前は何というのでしょうか?」


   *   *   *

戦いが終わり、僕は癒しきれなかったラキアスを再度治癒した。
目の前には砕けた岩の塊が残るのみだ。

「ウルフよりは戦い甲斐がありましたね。お二人ともナイスファイトでした。」

僕は前衛の二人を労う。

「どうでした?一緒に前に出るのと、回復要員として後にいるのでは、ラキアスにとってはどちらが良かったですか?」

今後のこともあるのでリサーチしておこう。

僕が前に出る場合は、戦闘補助というポジションだから、投げ技がメインだろう。
今回みたいな堅物じゃなければ、全力攻撃や必殺攻撃に効果的な支援になりうるだろう。
後に下がる場合は、回復がメインとなる。
よほど当てられなくて困る相手じゃなければ、後のほうが安心かもしれない。


ラキアスの答えは、僕の予想通りだった。


「そうですね。今のパーティとご一緒できるのであれば、僕は後のほうがいいかもしれません。
 それに、やっていて思ったことですが、前に出ないほうが物事を考えるのに専念できるんです。」


戦闘では支援側だが、非戦闘時は僕は情報収集に努めている。
ラキアスはそれをわかっているらしく、話に加わってこないことに気がついた。
彼女は警備しながら、僕の仕事を支援しているのだ。


ラプンツェルさんは、物陰から顔を出した。
この手のライブ観戦はいささか刺激が強すぎたようだ。

>「戦いってこういうものなのね。 なんだかすごく......怖かったわ」

>「怖がらせて済みません。
 貴女を守りたくて戦って......それで貴女の心を守れないのは男として失格でした。
 けれど貴女にはわかって欲しい。
 僕は貴女のためならば全てと戦う覚悟を持っていることを」

「王子は立派でしたよ。それほどの腕がおありなら大事な方を御護りできるでしょう。
 だいたい、ああいうのは毎度は出てきませんし。
 それに、あのサーバントは戦う以外にも命令によっては色々と役に立ちます。
 例えば、この洞窟を作るとか、ね。要は使い方次第なんです。」


 僕は王子の証言から一つ推理できたことがあった。
 森に住む魔女。彼女はサーバントを使い、この洞窟や塔も建設したのだと。
 あの塔も年数的にはそれほど古くなかったからだ。
 サーバントを土建要員として活用すれば、不可能ではない。

 つまり、森に住む魔女とは、お婆さんのことなのだ。

 まあ、サーバントを使って建設した現場なんか見たら一般の人は恐れるだろう。
 それで・・・いやそれ以前の話なのかもしれないが、操霊術師という立場から
 社会的に不遇な立場になってしまった、のかもしれない。

「王子、僕ら冒険者の立場からしますと、操霊術師や魔術師などは寧ろ有難い存在なのです。
 術は、使い方次第なのですよ。ですからたとえ、ラプンツェルさんのお婆さんがそうだったとしても、受け入れてあげて欲しいんです。」


ラキアスが何やら道具を用意しているのが目に留まった。

「もしかして、薬師の専用道具なのですか? 
 でしたらこちらで処方をお願いしちゃっていいですか?」


回復魔法を使ったことで薬を処方してくれるようだ。
アルフさんの分ももちろん一緒に作る。これは助かる。


あの立派な植物図鑑といい、もともとラキアスは植物には関心があるのだと思う。
僕が金属や貴石といった鉱物に関心があるのと同じように。
こういうのは得意な人に任せてしまうのが一番だ。手持ちの薬草は全部預けてしまおう。


ラキアスが準備している間に、僕は残骸を調べてみたが、
加工できるようなメタルどころかまともな石すら出てこない。
石人形だけにちょっと期待していたのだが、戦利品については残念な結果に終わった。
結婚指輪プロジェクトも、できれば自力で材料を調達したかったのだが。

ラキアスから処方してもらった薬は、粉薬だった。水と一緒に服用するがお勧めらしい。

「ええ。確かに苦いですけど。これくらいなら大丈夫ですね。」

精神力がひどく欠乏している時は、きっとこの苦味が恋しくなるのかもしれない。
しばらくすると、若干あっただるさが消えていった。

「助かりました。ありがとうございます。」

気力を譲渡する魔法はあるものの、本質的に魔法で気力は回復できない。薬師はマジックユーザーにとってはありがたい存在だ。
まともに魔法を使ったのは初めてだっただけに、ありがたみを身をもって実感することができた。

* * * *

体力も気力も万全の状態になった所で、僕らはさらに洞窟を進む。
しばらく行くと、ついに行き止まりになった。

そして、

上に続くはしご。


>「上にあるのは、木の扉のようですね」

>「誰か住んでいるのかしら?」


「まだわかりませんか?
 恐らくここが、先ほどのサーバントを作った方の住まいだと思いますよ。
 森の中の、優秀な操霊術者の自宅です。」


そう。たぶんラプンツェルさんのお婆さんの自宅。
その気になれば、地上を通らずに塔と自宅を行き来できる地下道も完備。
これは、いざという時の避難経路にもなるのだろう。


ラキアスがドアを開けることになるのだろうか。
ノックするかしないかは彼女に任せることにする。

* * * * 

コルチョネーラです。

HPダメージ5のラキアスさんにキュアで回復します。
MPダメージ5に3点消費で 8点減りましたが、
魔香草ひとつ消費、ラキアスさんの処方でMPも完全回復。

ラキアスさん自身はMP回復しなくて大丈夫なのかな?

戦利品は 収穫無しです。


07:14:39 コルチョ@グレース 戦利品 2d6Dice:2D6[3,1]=4
何も見つからなかった模様(笑)

07:13:55 コルチョ@グレース 回復量 r10+8Dice:R10[1,4:2]+8=10
07:12:38 コルチョ@グレース キュア発動 2d6Dice:2D6[1,6]=7