【D-1-1】怒れる老婆
>「ゴーテルさん、と仰るのですね。他に肉親や親せきの方はいらっしゃいますか?
> あ、言いにくいようでしたら無理にはおたずねしませんが。」
「ううん、別に言いにくくなんかないわ。
本当に......何も知らないの。
特に不思議に思ったこともないけれど、そうね。
ほかの人から見れば変なのかしら?」
* * *
梯子を登り目が慣れてくれば、そこには農具や野菜の類が収められていることに気がつくだろう。
>「ゴーテルさんは、農業で生計を立てられていたのでしょうか?」
「お婆さんが塔の外で何をしているかはわからないわ。
けれどね、お婆さんは野菜を使った料理が得意なのよ」
ラプンツェルはゴーテルの外の暮らし振りについてまでは知らないようだ。
ただ、野菜料が得意らしいことから、主に自分で使っていたのではないだろうか。
>「ラプンツェルさん。お気持ちはわかりますが、出来るだけお静かにお願いします。いつ敵が来るかわかりませんので」
一方で窓の外を子供のようにはしゃぎながら眺めるラプンツェルにラキアスは忠告する。
そんな彼女の様子に対して目をきょとんとさせて言った。
「どうして?
外に敵なんかいるの?
外って幸せな場所でしょう?」
彼女は何も知らないのだ。
だから外側に夢を抱いている。
危険や驚異なんてものには触れたこともないのだから。
倉庫の中を調べてみても内側から外に出る手段は実力行使以外難しそうだ。
外の音を聞いてみたところで雨音しか響いて来ない。
>「外から鍵がけられているみたいだね。ここからでは鍵開けも無理そうだし」
>「案の定ですね。床も木ですし、掘るという選択肢もなさそうです。」
――どうやら冒険者たちは扉を破って出るつもりらしい。
「――それ以外方法はなさそうですね。
何か問題が起きるようでしたら、僕が責任を取りましょう」
レタスの言葉の後押しもあり――彼らは気の扉を破って外に出た。
* * *
扉の外へと出れば、雨粒が体に当たり次々と流れていく。
「よかったら、これを......」
王子は身につけていたマントをラプンツェルの頭に雨よけのように被せる。
これで彼女の体が濡れることはないだろう。
途轍もなく長い髪はどうしようもないかもしれないが。
森は黒い雨雲によって光が遮られているから薄暗い。
だが、闇をも見透かすラキアスの瞳は森の様子を捉えただろう。
野菜畑の向こう側。
その方角からこちらへ向かってくる黒い影。
黒い服で身を包んだ白髪の老婆。
彼女はこちらの姿をはっきりと見ることのできる位置まで歩み寄り。
そして怖いくらいに優しく語りかけた。
「こんなところにいたのかい、ラプンツェル。
私は本当に心配していたんだよ?」
皺のある顔に笑顔を乗せてラプンツェルに話しかける。
おそらく彼女こそ――。
「ごめんなさい、お婆さん。
わたし......外が見てみたくて」
ラプンツェルの世話を焼く老婆。
ラプンツェルを閉じ込める老婆――ゴーテルであろう。
「まあ、そんな気持ちになることもあるだろうさ。
でももう十分見ただろう。
さあ、一緒に帰るとしないか?」
ゴーテルは一つ歩み寄る。
不自然に優しく押さえ込むかのように静かに。
「でも、私お城を見てみたいわ」
ラプンツェルの言葉を聞いたゴーテルは目を見開かす。
「城だって?
あんなとこいいところでもなんでもないよ!
さあ私と一緒にあの塔まで帰るんだよ......ラプンツェル!」
先程まで浮かべていた穏やかな微笑みは既になかった。
氷のような冷たさと炎のような怒りが主にレタスを見つめていた。
傍にいるだろう冒険者たちもその表情を見せ付けられることだろう。
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あんみつ@GMより
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次回からはこちらへどうぞ(*´∀`*)
ラプンツェルを塔の外へ出したことでそれぞれHPを1点獲得できます。
とりあえず木の扉は好きな感じで破っていただいて構いません。
扉を出るとゴーテルと遭遇しますね。
ファーストコンタクトはこんな感じです。
何かやりたいことがございましたらどうぞ!(*´∀`*)
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