黒服の老婆
ラプンツェルさんの話を総合すると、どうやら外のことは殆ど聞かされていないらしい。
ゴーテルさんがどうやって生計を立てているとか、肉親のことなども。
ラプンツェルさんが、興味を持たなかったのか、それともゴーテルさんが興味を持たせなかったのか
それはわからない。
僕らがドアをこじ開けて外に出ると、外は雨だった。
普段の格好よりは、法衣のほうがいくぶん雨対策には向いている。
向こうから、誰かが来るようだ。
それは近づいてくるにしたがって、黒服の年配女性ということがわかる。
恐らく彼女がゴーテルさんなのだろう。
彼女が毎日、あの塔を登っているのか考えると、ちょっと信じられない。
普通の年配の女性ならまず無理だろうから。
ありがちな会話が展開される。
>「こんなところにいたのかい、ラプンツェル。
私は本当に心配していたんだよ?」
>「ごめんなさい、お婆さん。
わたし......外が見てみたくて」
>「まあ、そんな気持ちになることもあるだろうさ。
でももう十分見ただろう。
さあ、一緒に帰るとしないか?」
>「でも、私お城を見てみたいわ」
>「城だって?
あんなとこいいところでもなんでもないよ!
さあ私と一緒にあの塔まで帰るんだよ......ラプンツェル!」
ゴーテルさんは、大事な娘を王子に取られたという心情が強いのだろう。
僕にもそれはわかる。好きな人は誰にも取られたくはないのだ。
「貴女がゴーテルさんで間違いないでしょうか?」
僕はまず彼女に確認してから話を始める。
「申し遅れましたが、僕らは通りすがりの冒険者です。
ラプンツェルさんから少しだけお話は伺いました。
仲の良い、親子関係だとお見受けいたします。」
少なくとも、ラプンツェルさんはゴーテルさんを慕っている。
「ラプンツェルさんは、今まで外に世界には興味が無かったようですが、
たまたま、こちらの者が、事故で空から落ちてしまいまして、
ラプンツェルさんの髪にひっかかって命拾いをいたしました。
そこでお話をさせていただきましたら、
外の世界に興味を持ってしまった、ということなのです。
僕らは偶然王子と出会いまして、彼(アルフさん)を探しに来ておりました。
そこで話が合ってしまいまして、外にお連れすることになったのです。
ご心配かけて申し訳ありませんでした。」
まずは外に興味を持ったのは僕らのせいだと言っておこう。
連れ出す際に書置きをしてきているから、
それを見れば、僕らの存在は知っているはずなのだが・・・・
書置きまでは見ていないのだろうか。
「親である、ゴーテルさんとしましては、可愛い娘さんをお側に置いておきたいと
思っておられると思います。
今まででしたら、それで良かったと思うのです。
しかしながら、今まで本やお話でしか知らなかった、外の世界というものを
知ってしまったラプンツェルさんを、そのまま塔にお連れしましても、
恐らく、外の世界を渇望されることになると思いますよ。
普通の娘さんであれば、親は、子供を外の世界に触れさせ、社会に慣れさせるでしょう。
ラプンツェルさんを今までそうされなかったのには、特別な理由でもおありなのでしょうか?」
まずはゴーテルさんの話を聞こう。
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コルチョネーラです
グレースの調停力が問われる大事な局面。戦えない男の本領発揮となるか?
ベストの解決は「和解」です。難しそうですね。