愛と呪い
ゴーテルさんは僕の質問にはこう答えた。
>「森の中には野獣もいるし、危険な植物もいる。
>そんな中にこの子を連れて行くわけにはいかないよ。
>私の......私の大事な子なんだ......!」
どうやら僕の思惑通りにはいかなかったようだ。
どうしても手放してくれない。
僕らが護衛をするなら安心だろう。
ストーンサーバントよりも強い魔物が森に出るとは考えにくい。
そう言いたかったが、今の段階で手の内を晒すわけにはいかない。
「森に愛されたということは、つまり一切病気をしない、という解釈で宜しいのでしょうか?
また、ゴーテルさんもその恩恵は受けていらっしゃると思うんですが、
髪を伸ばしていないのですね?」
普通に考えれば、塔に閉じこもったラプンツェルさんより
森に出入りしているゴーテルさんのほうが森に愛されると思う。
森から出られないというデメリットはあるが、それを上回る
メリットが絶対にあるはずだ。
いや、ゴーテルさんにとっては森があればいいわけで、
出られないから困るというデメリット感は無いのかもしれない。
それでも、ラプンツェルさんが病気になったとしたらゴーテルさんは大変だろう。
医者を呼ぶような事態になったとしたらどうするのだろうか。
また、ゴーテルさんが倒れたとしたら、ラプンツェルさんは飢えてしまう。
ゴーテルさんが唯一の命綱だからだ。
恐らく、二人とも病気をしなかった。
これが森に愛される最大のメリットなのではないだろうか。
ゴーテルさんが実質的にロープ一本だけで毎日塔を登れているのも、
恐らくそれが理由なのではないだろうか。
しかし、そうだとすると、森に愛された証はどこにあるのだろう。
* * * * *
僕はふと思い出した。
「外の話をすると悲しい目をする」というラプンツェルさんの供述だ。
外とは恐らく「森の外」という意味なのだろう。
「まさか...それは...」
もしかして、森から出られない制約は、第三者がゴーテルさんに与えたものなのだろうか?
ゴーテルさんも本当は外に出たいのかもしれない。
だとすると...すごくまずいことを聞いてしまったかもしれない。
ラキアスはラプンツェルさんを助けたいという気持ちが強すぎるために、
結果的に、ゴーテルさんを追い詰めてしまう。
まあ、これは責められない。
また、王子も同様だ。
心理戦になった場合、ラプンツェルさんに固執した発言は確実に地雷になるのだが
実際にそれを止めるのは難しい。
>「いい気になるんじゃないよ......若造が!
>どうしてもその子を離さないつもりなら。
>その腕を灰にしてやろうじゃないか!」
子離れしていない親と、娘の恋人によくありがちな展開。
ただし親が強力な力を持っているとなると、それはかなり厄介な問題だ。
嫉妬に近い感情もあるのだろうが、だとしたらそれを甘くみてはいけない。
ゴーテルさんは彼女を奪うものをすべて力で解決する気だろうか?
「ラキアス、アルフさん、僕は止めません。」
力を力で押さえつけるという解決法は僕としては受け入れたくないが、
被害者を増やさないためにも仕方ないのかもしれない。
ラプンツェルさんは、塔での生活は苦ではないだろう。
それは、ゴーテルさんが生きてる間に限った話だ。
もし、塔に入れられたままでゴーテルさんが亡くなってしまったら、
ラプンツェルさんは飢え死にすることになってしまう。
そこまで考えているのだろうか?
だから、出られるチャンスを逃してはいけない。
* * * * *
コルチョネーラです。
ゴーテルさんへの質問の返答次第では、
ラプンツェルさんを無事に森から出す方法を見つけるかもしれません。
ゴーテルさんに呪いの文様が確認できた場合、
グレースは第三者による呪いの可能性がより高くなったと判断しそうです。
森でトラブルになって妖精神の不興を買ったために
ゴーテルさん自身も森から出られなくなったのでは?と思うかもしれません。
確かアステリアの聖印は葉っぱでしたよね。
戦闘になったらある意味王子の次に標的にされそうです。推理は時にイヤな場所を突いてしまいますから。