的中してほしくない推理
修羅場の最中、
僕は、ラプンツェルさんの身を案じたが、シィノさんは正々堂々とゴーテルさんに対峙した。
普段は言葉が少ない彼女だが、いざという時は恐れずに言うべきことを言う。
僕はどちらかというと、フォローするのは得意だが、苦言を呈することなどに関しては
まだまだ言えてないと思う。
ゴーテルさんはシィノさんの言葉で、ようやく目が覚めたのだろう。
こういう厳しいことを言う相手というのはあの年齢の人間にとってはかなり貴重なはずだ。
ゴーテルさんは冷静さを取り戻したようだった。
>「私は確かにこの子を愛していた。
>そのつもり......だったさ。
>でも違ったんだねえ......私が愛していたのはこの子を愛している私自身だったんだ。
>だからこの子を塔に閉じ込め、そして更に呪いによって縛っていた。
>私はこの子を愛しているつもりでしかなかった。
>――だから、ちゃんと信じてやることができなかったんだね」
「子育ては、リハーサルありませんし、
母親だって、子供と共に成長をしていくものだと、聞いたことがあります。
ですから、気づいていただけただけでもいいんです。」
完璧な子もいないが、完璧な母もいない。
これから共に成長していく、で良いのではないだろうか。
時間はかかるかもしれないが、良い方向に向かうのであれば、それが一番だ。
それは、養母であろうが実母であろうが変わらない。
しかし、ラプンツェルさんとのやりとりや、レタスさんとのやりとりを見る限り、
殆ど諦めきった言葉ばかりが目立つ。
これはちょっと心配だ。
今までの生き方が変わることで、自分をすべて否定してはいないだろうか。
キャベツさんのご夫人が病気という話なら、僕は行くべきだろう。残りたくても残れない。
「ゴーテルさん、女性の日って知っています?」
僕は唐突に話をする。
「僕らのいた地方では、決まった日に男性が女性にミモザの花をプレゼントするんです。
女性なら誰でもいいんですよ。
もし、森の中で見つけたら、僕からプレゼントしますから、待っていてくださいね。」
時間がずれていなければ、女性の日はまだ先のはずだが、
たぶんその日まで僕らがいるかはわからない。
シィノさんやラキアスには、帰還してから手配する予定だ。
再度ゴーテルさんには念を押す。
「ちゃんと戻ってくるまで待っていてくださいよ?途中で消えるとか絶対ナシですからね?」
なるべく、ゴーテルさんの側に人がいたほうがいい。
一番心が弱っているのは、ゴーテルさんなのだ。
呪いの件もあるかもしれないが、そんなの時間をかけて解決すればいい。
絶対に早まった真似だけはしないでほしい。
そう思いながら僕は、ラプンツェルさんと王子が動くまで待つことにした。
僕から出発を促す言葉はかけない。
いよいよ出発する時に、いつものようにちょっと右手を上げる
「では、いってまいります。」
そして、森の端まで歩くことにする。
* * * * * *
コルチョネーラです。
ゴーテルさんにミモザの花をプレゼントしたい、
そのために森の端に行くまでにミモザの木を探しながら動くつもりです。
ゴーテルさんは今まさにサスペンスで言う「崖の上」状態という感じで心配です。
一人で行くか、最小限の希望者だけで行くつもりです。