【E-1-4】願う幸せは
この先はどこへ進むべきか。
ひどく迷う様子を見せるラプンツェル。
>「恐らく、子供に恵まれなかったゴーテルさんも、
> 子供を産んで家族としての生活を望んでいたご両親も、
> ラプンツェルさんを見初めた王子も、皆、ラプンツェルさんと一緒にいることを望んでいます。
> 誰と一緒にいたいですか?と言われても急には答えられないですよね?」
そんな彼女にグレースは優しくアドバイスを送る。
まず彼が目をつけたのはキャベツとミズナの夫婦についてだった。
二人がどのように結ばれたのかという話だ。
「まあ......なんだ、実際に口にすると恥ずかしいけどな。
俺からこいつに何回も何回もアタックし続けたんだ。
諦めずに続けたらついには少し振り向いてくれて......。
そこからは今に至るわけさ」
どうやら一目惚れしたキャベツがめげずにアタックし続けたことで結ばれたのだそうだ。
そう考えるとレタスのラプンツェルへの態度は......。
キャベツのそれのリフレインと言えるかもしれない。
尤も二人は現状では結ばれてなどはいないが。
一通りの話を聞き終えてグレースは言う。
ラプンツェルが二人の元に戻ってもいつまでも一緒にいられるわけではない。
キャベツがミズナを愛し、二人の世界を作り出したように。
ラプンツェルも誰かに愛され、その者と共に歩む人生へ旅立つかもしれないのだ。
そして彼が勧めたのは、城へと向かうことであった。
「そんな......でも......」
懇願するような瞳でグレースを、そしてラプンツェルを見つめるミズナ。
そんな彼女の肩をぽんぽんと叩くのは――キャベツであった。
「お前だって本当はわかっているんだろ?
この世界に永遠に続くものなんてないんだ。
それに俺たちが本当に願うべきなのは――自分たちだけの幸せじゃない。
俺たち二人の大切な宝物......ラプンツェルの幸せだ」
優しくミズナを包むキャベツの表情は男の顔、夫の顔......そして父の顔だった。
「でも、せっかく会えたのに......。
また離れ離れにならなければいけないなんて......悲しすぎるわ」
夫の腕に包まれながら――ミズナはほろりと涙を流す。
「問題ないさ......別の世界に行ってしまうわけじゃない。
会いたいと思えば、会いに行けばいいんだ。
今までと比べるとずっと――ずっと近くにいるんだ。
魔女にとらわれているわけじゃないんだから」
ミズナの流す涙を拭いながら語りかけていたキャベツは。
そこまで語りかけ終えた後ラプンツェルの方へと視線を移す。
「ひとつ忘れないでくれ......ラプンツェル。
お前がたとえどこに行ったとしても。
お前の家は――あの村にある。
お前が訪れてくれるのをずっと待ち続けているんだ」
そして彼は愛しい娘をしっかりと抱きしめる。
「ありがとう......お父さん。
お母さんも......ありがとう」
* * *
しばらくしてキャベツが言う。
「お前は一度森の奥へ戻るつもりなんだろう?
目を見ればわかるさ」
そう言ってミズナと共に村の方角へ数歩下がる。
「そう......お婆さんにお礼を言いに行かなくちゃ」
ラプンツェルはやはり一度ゴーテルの元へと戻るつもりなようだ。
「お礼か......まあ、いいさ。
お前の好きにするといい。
――皆さん、この子に合わせてくれて本当にありがとうございました」
キャベツはラプンツェルと冒険者たちを見送ってくれる。
「――王子。
ラプンツェルを宜しく頼みます」
「任せてください。
必ず――僕が彼女を守ります」
そしてそれはキャベツとレタスの間で交わされる男の約束。
「じゃあ、いってらっしゃい。
私の可愛いラプンツェル......!」
最後に見送ったミズナの表情は――素敵な笑顔だった。
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あんみつ@GMより
NPCの掛け合いが多かったので長くなりました。
ラプンツェルは城に行くことにしたようです。
合流とその後のシーンはまたあとで投稿します。