進路と進言
僕はキャベツさんとミズナさんの結婚までの経緯を尋ねた。
>「まあ......なんだ、実際に口にすると恥ずかしいけどな。
>俺からこいつに何回も何回もアタックし続けたんだ。
>諦めずに続けたらついには少し振り向いてくれて......。
>そこからは今に至るわけさ」
ほぼ予想通りの答えが返ってきた。一目惚れ、するでしょうね。
結婚は男性のほうが惚れ込んでいたほうが幸せになるというのが一般的だ。
ラプンツェルさんが迷っていたので、僕が城に行くことを勧めると、
>「そんな......でも......」
ミズナさんは悲しそうな目をする。
普通、結婚が絡むと、父親のほうが難色を示しやすい。
娘は父親の最後の恋人と言われているからだ。
しかし、娘という時代すら共有できなかったのだから、
今回は父親のほうが落ち着いている。
>「お前だって本当はわかっているんだろ?
>この世界に永遠に続くものなんてないんだ。
>それに俺たちが本当に願うべきなのは――自分たちだけの幸せじゃない。
>俺たち二人の大切な宝物......ラプンツェルの幸せだ」
>「でも、せっかく会えたのに......。
>また離れ離れにならなければいけないなんて......悲しすぎるわ」
>問題ないさ......別の世界に行ってしまうわけじゃない。
>会いたいと思えば、会いに行けばいいんだ。
>今までと比べるとずっと――ずっと近くにいるんだ。
>魔女にとらわれているわけじゃないんだから」
僕は頷いた。
「お城の出入りは許されると思いますし、娘さんの外出も許されると思いますよ。
それに、誕生日などのパーティに呼ばれることもあるでしょうし、
思っていたほど離れ離れというわけではないでしょう。」
それから、これは口には出さなかったが、
結婚する場合は、子供ができる可能性もあるということでもある。
キャベツさんもミズナさんもお孫さんの顔は見たいだろう。
これを口に出さなかったのは、子供を持つことが義務だと僕は思っていないからだ。
これは天からの授かりものだ。
王室だと殆ど義務になってしまうんだろうが。
親子の対面はほんわりと暖かな別れで決着する。
一番ベタで、ありがたい方向に。
* * *
>「お前は一度森の奥へ戻るつもりなんだろう?
> 目を見ればわかるさ」
>「そう......お婆さんにお礼を言いに行かなくちゃ」
おや。僕はここで親子3人と王子と別れて二人で帰還と思っていたが、
王子もラプンツェルさんも一旦戻るようだ。
>「お礼か......まあ、いいさ。
> お前の好きにするといい。
>――皆さん、この子に会わせてくれて本当にありがとうございました」
「また会えますよ。」
僕は微笑むと右手をちょっと上げて挨拶する。
そして、僕ら4人は再び元の道に戻っていくのだった。
* * * * *
僕は道すがら、考えた。
子供を欲しいと思っている人もいれば、生まれることを望まれずに捨てられる子もいる。
シーン神殿には、望まれずに捨てられた赤ちゃんを保護することがある。
ナイトメアのシーン神官がいるというのはそういう理由が多い。
(こうのとりのゆりかご制度)
子供が欲しいと思っている人にそういう赤ちゃんを譲るという制度
これをシーン神殿でも本格的にやるべきだろう。
僕も神殿でなんらかの活動をするべき時期に来ている。
捨てられた赤ちゃんに事件性がないかどうか、
そういうことを調査するのは僕が適任だろう。
帰ったら進言してみよう。
* * * *
コルチョネーラです。
とりあえず、帰路までの話はこちらに書きました。
合流後はまた別に投稿します。
剣の欠片は2D(つまり2個)振りますね。
まだ変転温存してますからね。