【E-2-4】塔に虹が架かる
>「たとえ道が一つしかないとしても、歩くかどうかを決めるのはシィノ」
>「命の恩人の行動に感銘を受けたからです。敷かれた道は選べませんが、進むかどうかは選べますから、この生き方の道に進むことにしたんです。
>決して楽ではないとしても、全て自分で選んだ道だと思っています。」
二人の冒険者たちは言い切ってみせた。
自らが歩んできた道を選んで歩いてきたのは自分自身であるのだと。
「そうかい......そう言えるならお前たちは私と違って強いということさ。
ただ強いってこと同じくらい辛いっていうことでもある。
......本当に強ければ、どんな辛さだって乗り越えられるかもしれないけどね」
ゴーテルはどこか眩しそうにしているように見えた。
* * *
それから幾らかの時間が経った頃。
止みかけの雨の中。
森の向こうからやってきたのは四つの影。
よく見知ったアルフェイトの姿。
彼の場を歩くグレースの姿。
そしてレタスに守られるようにして向かってくるのは――ラプンツェルだ。
彼女の髪はかつてに比べてだいぶ短くなっている。
シィノヴィアの呪いが解けたのと同様だろう。
「ラプンツェル......」
その時のゴーテルの顔から見えた感情は極めて複雑なものだった。
驚き、喜び、愛しさ......そして寂しさ。
「戻ってきたわ、お婆さん」
ラプンツェルの表情は実に朗らかだ。
まるで今は雲に隠れてしまっている太陽のように。
「約束は守りました......ゴーテルさん」
レタスの言う約束とはラプンツェルを守りきるというようなものだった。
ゴーテルはそんなレタスの言葉を無視して語りかける。
「......決めたのかい?」
ラプンツェルはその問いかけに少し悩んでから。
ゆっくりと頷いた。
「......うん。
私は......やっぱり外の世界を見てみたい。
お婆さんの思い出と本が教えてくれる世界だけじゃもう足りないのよ。
今この瞬間でも私はお婆さんのことが好き――嘘じゃないって誓えるわ。
だから......ごめんなさい」
ラプンツェルは勢いよく頭を下げる。
その動きに従うように黄金色の髪が流れ落ちていく。
髪の質量は少し前に比べると嘘みたいなほどの少なさで。
それが示しているのは――彼女の自由。
そんなラプンツェルを黙って見つめていたゴーテルは。
「好きにするがいいさ。
そして私のことなんて忘れてしまうがいい。
魔女なんてものはね......記憶に残しておくべき存在じゃないよ」
捨て台詞のように言い残してこの場を去っていこうとしたが......。
――ラプンツェルに腕を捕まれ動きを阻まれる。
「......嫌よ!
私は必ずまたこの森に来るわ。
そしてお婆さんに会いにいく。
お婆さんとの思い出を全部忘れるなんてできないの!」
彼女は意地でもゴーテルの腕を離そうとはしない。
そんな二人に近づいていくひとつの影。
レタスの姿だった。
「忘れないでください、ゴーテルさん。
全ての女性は幸せになる権利を持っているんです。
そこには美醜も老若も――体に流れる血すら関係ありません。
僕は......貴女にも幸せになって欲しい」
女性のために全てを尽くす彼らしい言葉を――ゴーテルにかけた。
二人からの言葉を受けゴーテルは進ませようとした足の動きを止め。
――ゆっくりと振り返る。
「おかしいねえ......私はもっと賢く育てたつもりだったんだけどね。
こんな馬鹿みたいな子に育つなんて思ってなかったよ。
傍にいる男も馬鹿なようじゃもう救いようがないよ。
他にも馬鹿な奴らばかり集まってくるし......でも本当は私も知ってるのさ」
冷酷な魔女ゴーテルの皺だらけの頬を。
「本当に一番馬鹿なのは......私だってことをねえ......」
一筋の涙が道を作っていった。
それは魔女という響きから感じる冷たさとは程遠い。
暖かな人間味に満ち溢れたものであった。
いつしか森に降り続いていた雨も上がり。
雲間から太陽の光が差し込んでいる。
冒険者たちから見て三人の人物の背後には――聳える塔を囲む虹の輪が見えたことだろう。
* * *
『物語は......綴られた』
――そして脳裏に響く謎の男の声。
その言葉を認識すると同時に世界は白い光の中へ溶け込んでいくことだろう。
ラプンツェルのいる世界へやって来た時と同様の感覚だ。
どこかから勢いよくページが捲られる音がする。
最後には本が閉じられる音。
......ふわりと体が浮かんだ。
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あんみつ@GMより
進行です!
グレースとアルフェイトはこちらのカテゴリにご記入ください。
とりあえず今までの動きから鑑みて結末が定まりました。
多分なかなかのハッピーエンド。
ラプンツェルを森から完全に出したことや、
レタスの願いを少し叶えたこと、
ゴーテルを少しでも救ったことなどその他諸々含めて全員にHPを3点お配りしましょう。
最後に場面転移を行っていますが。
それまでに少し暗い言葉をかけたり行動する機会はあります。
なのでこのシーンではお好きな行動をどうぞ。
また次回エンディング投稿となります。
剣のかけら6点程の名誉点を差し上げますので。
計6つのダイスをお振りになってください。
それでは最後まであと少し宜しくお願い致します。