学べる
>「私は......」
ゴーテル殿の答えを聞く前に、ラキアスにさえぎられた。
ラキアスにもラキアスなりに、ゴーテル殿に言いたいことがあるのだろう。
はじめは落ちついて話していたが、最後はかなり声を荒げていた。
>「そういった前に進もうとしないのが気に入らねえんだよ!頭にくる!ラプンツェルさんが一緒に住もうとか考えるかもしれねえだろ!どうして後ろ向きになるんだよ!
>一人寂しいなら仲間に入れてもらえるよう謝りに行こう!説得なら一緒にいってやる!だから命を自分から捨てるな。」
ラキアスのストレートな言葉は、ゴーテル殿にも伝わったようだ。
―*―*―*―
>「そうだね......もう終わりにしようか。
> 今まで充分幸せを感じさせてもらったよ、あの子にね。
> それにもう疲れたのさ、魔女として迫害され続けるのにもね。
> ――私は今日ですべてを終わりにしようと思う。
> これで自由さ......勿論お前もだよ」
見れば、手の甲の文様が薄れて消えていく。
>「シィノさん何ともない?痛くない?」
「問題ありません」
ロクでもない呪いの印だったが、きらきらしていて恰好よく見えなくもなかった。
何の後も残さずに消えてしまった文様を、少し惜しむ。
>「お前はもう森から出るのも自由だ。
> 好きにするがいいさ。
> 私は――独りで森の中で生きることにするよ。
> 最期の時までね」
そう言われるが、シィノには森を出る理由がない。
アルフェイト殿たちはここへ帰って来る。シィノはここで待つ。
魔女であること。
それがゴーテル殿の"呪い"なのだろう。
ならば今、この状況は、呪いの解除だろうか。それとも成就か。
「"独り"がゴーテル殿の安らぎになるのなら、それもいいでしょう」
人に関わるということは、人に傷つけられるリスクがあるということ。
ゴーテル殿が身をもって経験してきたことだ。
「しかし、つなぎとめられるものまで捨てることはないと思いますよ」
人と関わらなければ、人の優しさは得られないのだから。
シィノも最近ようやくわかりはじめたばかりだけれど。
顔をあわせること。言葉を交わすこと。
たったそれだけで、心が救われることもあるのだ。