読み込み、読み取り
>「やあ、おかえり」
目を開けると、依頼人の部屋。
体を動かし、異常がないことを確認する。
エリック殿も、話の結末は知っているようだ。
テーブルの上の本の挿絵の塔には、虹がかかっていた。
>「......難しい話だよね。
> 僕たちはどれだけ自由に見えてもそれぞれの塔の中で閉じ込められている。
> たとえどんなに力を持っていてもそれは変わらない」
そうだろうか。
「塔」を「生まれ」と言い換えるなら、たしかにそれは変えようのないこと。
シィノがシャドウであることも、孤児であったことも。
ゴーテル殿が話したように、自分では選べないことだ。
>「でも、僕たちは塔という空間をどこまでも広げることはできる。
> それは塔という狭い檻を超えて森の中まで。
> そこで留まらずに森の外にある世界まで。
> 君たちはそういったことを示してみせたんだ、物語の中でね」
閉ざされた世界で、ラプンツェル嬢は無知だった。
変えたのは、人との出会いだ。
>「自分の力、知識、心。
> そして大切な仲間たちとの絆。
> そんな者たちを総動員して、新しい世界へ新たな自由を求めて冒険に出る。
> 冒険者っていうものって本当に素敵な存在だね。
> だから......僕も君たちに期待しているんだ。
> 僕の想像力を超えた物語を生み出してくれることを」
ああ、なんとなくわかった気がする。
本を読むということは、ひとつの冒険なのだ。
文字の上で出会い、経験し、感じる冒険なのだ。
本を読むことは、知識を得る手段や娯楽だけでないか。
そうか。本を読むということは、おもしろいんだな。
―*―*―*―
エリック殿から報酬を受け取り、礼を述べた。
>「今回はお疲れさまでございました。
> 今後、回復メインで活動することになると思いますので、
> ご用命がございましたら、ラキアス経由でかまいませんのでご一報くださいね。」
縁があれば、また同じ仕事を受けることもあるだろう。
うなずいて応えた。
なにか、久しぶりに本が読みたくなった。
今夜はあの神話集でも読み直してみようか。
今度は、前とは違った読み方ができる気がする。
――――PL――――
名誉点ダイスもうひとつ振ります。
アイベックスさんも振っちゃっていいですよ。
17:55:46 紫乃@シィノ ≫ 剣の欠片 1d6 <Dice:1D6[4]=4>