月光を揺らす風
「なるほど、できないことはないと思うね。 最近はあんまり危険なことはなるべくしたくない主義なんだけど......。 セシリア様の命がかかっているかもしれないし、やれることはやってみようか」
そう言って飛び出したエミールは、見事な反応速度で三日月を避けていった。
その動きを注意深く見ていれば、同じタイミングで渡ることはそこまで難しくはなくなる。
ザラックもかなり掴めてきたようで、かなり落ち着いているようだった。
結果、二人ともそこまでの時間を要さずに突破できた。
後はレオンハルトの傷だ。いくら重厚な鎧でも、あの三日月を止めたのだ。それなりな傷はあるだろう。
「レオンハルトさん。傷は大事無いだろうか?治療が必要なら俺がその間の見張りを受け持とう」
「まあ、大丈夫でしょう。歩きながらポーションでも飲んでおきますよ。」
と思っていたが、そこまで深刻な傷ではないようだ。
流石というか、やはりそれが当然なのか。
同じ龍の身体を持っているが、俺はあれほどまでの衝撃に耐えられる気がしない。一人ならともかく、それが二人分となれば不可能に近いだろう。
「大事ないなら良かった。回復の用意はあるから、必要なら言ってくれ。」
その代わりに、俺には今できることがある。
本当に必要なら、自分から申し出るだろうが、傷ついた仲間は見過ごせない。
そういう心遣いを重ねて生還できる。少なくとも俺はそう思っている。
= = = = = = =
次に俺達の前に現れたのは、真っ黒な部屋だった。
「えっと......魔法文明語ですね。
『深淵の黒は闇の色。心と体を捕らえて離さないだろう。
月に照らされた白の道こそが、我らにとって唯一の救いの道である』か」
「魔法文明語か。魔導機文明だったら読めるのだが...
言語には興味があってな。正直言語の数が多すぎて何処から学ぼうか悩んだものだ。」
そんな事を思い出す。本能で覚えていた妖精語をしっかり学び始めたのが始まりだったな。
「しかし、こういうのを見るたび思うんだが何故わざわざ書いといてくれるんだろうな?
本来の使用者ならどんな仕掛けか知っているはずなのに」
「実は魔剣の迷宮を利用した神殿だとかいう理由でしょうかね。」
「何が正しいにせよ、こうやって俺達が攻略できるヒントがあるんだ。
ありがたく使わせてもらおう。」
その真理はちょっと気になるところではある。が、今は進む時だ。
「あれって浮かんでるだけなのかな。
だったら何かをぶつければ弾いて動かせそうだ」
エミールが言ったのを受け、ザラックとレオンハルトが瓦礫を投げる。
レオンハルトさんは少し気合が入り過ぎている気がするが...いや、そこにさっきの三日月を耐える秘密があるのかもしれない。
そんな事を思っていると、ほぼ理想の配置に球体が位置するようになった。
「二人とも流石だな。さて...あれが少し左で、あのあたりが上に行けば良いか。」
《あれ、あっち。 あのあたり、うえ。 できる?》
そうやって"友達"と会話する。少し待つと、肯定の感覚が返ってくる。
数秒後には球体がすこしだけ動き、照らすタイルが微妙に変わる。
「微調整はこっちで受け持とう。大まかな移動は投石隊に任せますね。」
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遅くなりましたすみません...
《》内のセリフは妖精語です。"友達"は契約している妖精さんです。
そんな妖精好きヴォリア、自ら昔話を振ってみるの巻。
判定はギリギリ成功ですね。
21:17:11 ヴォリア@0Δ 行使判定 2d6+8 Dice:2D6[3,5]+8=16