【D-1-1】狙撃者と指令者
>「度々のことで申しわけないですが、
>再び、歌わせて頂きます。ビビット!」
突入前の最後の準備。
フィーリアは再度高らかに歌う。
「ありがとう。
また少し気持ちが楽になったよ」
オレットは彼女の歌で元気をもらえたようだ。
それはきっと他の者たちも同様であろう。
「まあ、悪いとは言わないさ。
準備が出来ているようなら――先へ進もうか」
ナマは準備が完了しているようだ。
タタラは少し緊張しているようだが。
問題はないだろう。
* * *
廊下を進んでいった先は重々しい扉があり。
それを開いた瞬間。
......向こうから一発の弾丸が飛んできた。
その弾丸は誰にも当たることはなかったが。
顔のすぐ横を過ぎ去っていったかのように感じたかもしれない。
「残念......当たらなかったみたい」
扉の奥は広い聖堂になっていた。
とは言っても本来のシーンの神殿のそれではない。
歪な装飾、不気味な照明。
そして聖堂に飾られていたであろうシーンの像は打ち砕かれ。
彼女の顔だけがこっちを見るように落ちている。
本来この像があるはずの場所には美しいがどこか陰のある青年の姿があった。
不死神メティシエの像と呼ばれるものだ。
そしてその像の周囲には二人の女性。
銀色の長い髪をした両手銃を持つ者が一人。
一見して人間のような姿であるがその肌は青白く、瞳は血のように赤い。
彼女はノスフェラトゥと人族が交わることで生まれる存在――ラルヴァだ。
そしてその隣にいるのは黒髪の女性、こちらは人間であるようだ。
彼女は弦楽器を手に持ち、周囲に二人の女性のようなものを侍らせている。
「私にはそもそも当てる気はないように見えましたけど」
今喋っているのは黒髪の女の方だ。
まず間違いなく先ほどの銃撃は銀髪のラルヴァの仕業だろう。
「黒髪の女......お前がヴィオーラか」
カイルは黒髪の女性の方には心当たりがあるらしい。
「あら、カイル様。
よく私のことを知っていらっしゃいましたね」
女性は慇懃無礼な態度でカイルに答える。
彼女がヴィオーラであることは間違いないらしい。
「ふざけるな!
お前がコンチェルティアを攻撃しようとしていたことは知っているんだ。
覚悟しろ......俺はお前たちを全て倒して姉さんを助け出す」
カイルは腰から剣を抜き、盾を構える。
「貴方が私たちに勝つって?
笑わせないで欲しいわね。
そんなことより少しでも時間があるならお話しない?
教えてあげるわよ......貴方のお姉さんが今どうなっているか」
銀髪の女は不敵に笑う。
「知りたくありませんか?」
ヴィオーラも妖艶に笑う。
「姉さんが......どうなっているか?」
二人の言葉を受けて勇み立っていたカイルが表情をなくす。
彼は確実に二人の言葉に惑わされている。
「カイルさん......しっかり!」
オレットがそんなカイルを心配そうに見つめる。
「――知りたいでしょ?」
女は長い銀髪を撫でる。
彼女の狙いはなんなのか。
単に惑わすだけなのかか、それとも本当に何かを教えてくれるのか。
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あんみつ@GMより
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奥には二人の女性が待ち構えていました。
ヴィオーラのそばにいるのは妖精なようです。
オレットがいるので【ウンディーネ】と【シルフ】だと正体がわかります。
弱点及びヴィオーラたちの情報ついては魔物知識判定を計4回どうぞ。
ちなみにヴィオーラたちは魔物ではなくギミック扱いとなります。
その他の部分についてはお好きなように。
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