【D-2-1】嗜虐者と暗殺者
>「これをこうやって・・・あれ?」
ちょっと手間取ってしまったもののレオンハルトは薬草でミハイルの精神を癒そうとする。
>「ミハイルさん、レオンハルトさん、良ければ私も手伝いましょうか?
> 私も薬草の扱いは知っていますので。」
一方で同じく薬師としての知識を持つヴォリアも手伝うと話すと。
「もし僕のために使ってくれるんでしたら、それはとても助かります。
でもヴォリアさんも少しお疲れでしょう?
ヴォリアさんがご自身にお使いになられたいのならそれで構わないですよ」
ミハイルは自分に使ってもらえるなら嬉しいが。
それよりもヴォリア自身のことが気になるようだ。
一先ずの薬草を使い終えた後。
「ありがとうございます、レオンハルトさん。
またちょっと頑張れるような気がしてきました!
ううん、頑張らなくちゃ......いけませんよね」
ミハイルはぎゅっと杖を握る。
ここから先は空気が違う。
気を引き締めていかなければいけないだろう。
......と言っても。
>「だろうな。とどのつまり、冒険者なんてものは平穏で利口な生き方が出来ない阿呆共の事だ。
> なら、その道行きの先にあるのはろくでもないものに決まってる。
> 先にあるものが解っているなら後はどうにかするだけの事。どうにかできなきゃそれまでだ」
ザラックは気楽に構えているようだ。
彼には彼なりの人生観というものがあるのだろう。
「そういう考え方、僕も好きだな。
......僕も冒険者になってみてもよかったかもしれないね」
エミールはそんなザラックを多少気に入ったらしい。
――そんなこんなありながら、軽く準備を終えて冒険者たちは奥へと進む。
* * *
進んでいった先はどうやら居住区のようだった。
ただそこには明るさや優しさ、和やかさのようなものはなく。
漆黒の中で仄かに灯る青や紫の照明に彩られた不気味な世界だった。
「ここが......無限の探求者の拠点ですか。
僕も初めて見ました」
ミハイルはキョロキョロと内部の様子を伺う。
「僕らだって、来たのは初めてだし当然さ」
おそらく寝室などに続いているのだろうか。
左手の壁には幾つもの扉がある。
その内の少しは扉が開いたままになっている。
先ほどここから誰かが飛び出していったのだろうか。
一つ一つ部屋を探そうとすればとても膨大な時間がかかるだろう。
尤もこの空間は更に奥へ続いている。
こんな扉が開け放たれたままにされている場所にセシリアがいるとは考えにくいか。
――どしん。
突然向こう側から響く重い音。
その音を発生させた正体は――岩でできたゴーレムだった。
「ロックゴーレム......!
あれを使役するためには相当な腕前がないといけないはず......まさか」
ミハイルが目の前のゴーレムを見て身を竦ませる。
「まあ、ここからが本番ってことだろうね」
気楽な態度でごまかそうとするエミールだが、その表情の硬さは隠しきれていない。
そんな二人が見ている先――ゴーレムの傍に姿を現したのは。
「お久しぶり......裏切り者さんたち。
よく私たちの前に姿を表せたものね。
――殺されに来たの?」
ルーンフォークの黄色い髪をした女性と。
「前は殺すの失敗しちゃったからなー。
またチャンス巡ってきてラッキーじゃん。
な、アリスっち?」
短く切り揃えられた白い髪をしたシャドウの男性。
「苛つくからそういうこと言わないで。
あと名前もわざわざ呼ばないで」
アリスと呼ばれた女性は軽い調子の男の言葉に多少気が立っているようだ。
一方のミハイルはそんな二人を見つめている。
タビットなのでよくわかりにくいが......所謂怖い顔をしているのだろうか。
「アリス・ウィッパー。
指揮者の一人で"嗜虐者"の役を持つ者。
もう一人は......おそらく"暗殺者"。
その名前は確か――エッジ」
ミハイルは考え込みながら、ある名前を口に出す。
それは過去の記憶から導き出されたものなのだろうか。
「流石ね、ミハイル。
よく私たちのことをご存知でいらっしゃることで。
でもね......」
アリスの口が歪む。
それは悪魔のような微笑み。
「私たちは同じくらいあなたたちのことを知っているのよ?」
アリスが視線の先をずらす。
そこにいたのは三人の冒険者たちか。
「ねえ、知りたくないかしら?
この二人の知られたくない秘密について」
彼女は知っているのだという。
二人が隠している秘密を。
「ひゅー、さっすがはアリスっち!
今日もいい切れ味だぜー!」
他に音の聞こえない静かな空間の中で。
男――エッジの軽口だけが響く。
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あんみつ@GMより
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奥にはひと組の男女が待ち構えていました。
お供に【ロックゴーレム】を従えています。
ミハイルがいるので正体がわかります。
弱点及びアリスたちの情報については魔物知識判定を計3回どうぞ。
ちなみにアリスたちは魔物ではなく【生物型ギミック】扱いとなります。
その他の部分についてはお好きなように。
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