【E-1-1】道は交わり、そして別れる
大聖堂の右側の扉が開かれたのと。
大聖堂の左側が開かれたのは。
まさに同じタイミングのことだった。
「あんたたち......!
――そうか、無事だったのか」
「ミハイル!
そして皆さんも......良かった」
カイルとオレットが反応を返すのと。
「オレット......それにカイルさん!」
「とりあえずみんな無事そうだね。
よかった、よかった」
ミハイルとエミールが反応を返すのも同時だった。
* * *
しかし、再会を喜んでいる暇などはない。
ちょうど扉と扉の中央にある青い色の長い絨毯が聖堂の奥まで続いている。
そしてその絨毯の奥。
本来聖像が安置されているはずの空間には。
宙に吊られた状態の檻があった。
それはまさに鳥籠のようで......その中には。
「あれは......姉さん!」
カイルの瞳は捉えたようだ。
中にいたのはカイルと同じ青系の――どちらかというと白に近い髪色の女性だった。
遠目から見ても明らかに疲弊しているのがわかるだろう。
彼女の元に駆け寄っていこうとするカイル。
だが、そんなカイルを阻む存在があった。
彼の前方に姿を現したのは――不死者だった。
そして更にその背後に見えたのは三人の人影。
一人は長髪の美青年。
だがその表情には憂いが満ちている。
ゆったりとした衣を身につけているのが特徴的だ。
もう一人は全身を金属の鎧で覆った人物。
シルエット的に男性だろうか。
頭全体を覆う兜で隠れているため......わかりにくい。
そして彼らの少し前にいるのは黒髪の壮年の男性だった。
ローブを身に纏っているその姿からして――まさに神官という感じだ。
「あんたが......教団の主導者か?」
カイルは問いかけるが......。
「いや、私は違いますね。
ただのしがない信仰者です」
黒髪の男は首を振る。
そして彼が続けるには......。
「私が指導者――いや救世者の名を騙るなど畏れ多い。
本物の救世者は――」
彼が振り向いた先にいたのは。
「わたし」
そう話す彼女の背丈は明らかに成人のものではなく。
全体的な印象としてはまだ小さな子供のよう。
だが、彼女から感じるプレッシャーは確かなものであった。
少なくともただの少女ではないだろう。
それにどこか青白い肌に角――彼女は人ではないのかもしれない。
「はじめまして、カイル。
そして裏切り者さんたちも会うのは初めてだね。
後ろにいるのは冒険者たちかな?
うふ、ようこそ......わたしたちの本拠地へ。
こちらからの歓迎はどうだった?
楽しんでくれたら嬉しいんだけどな」
無垢に振舞う彼女。
その様子が逆に気味が悪い。
「あんたたちの歓迎なんて興味はないさ。
俺たちにとって肝心なのは――姉さんを救うことだけだ。
この力で敵うかはわからない。
それでも――ここからどいてもらうぞ!」
カイルはセシリアを見つめる。
セシリアはそんなに彼に応えるだけの気力がないようだ。
「僕たちもその手助けをするだけです。
セシリアさんを救うために......!」
「これは形としては償いと呼ぶべきかもしれないね。
でもそんな体裁を抜きにしても――僕はセシリア様を救うために全力を尽くそう。
......心からそう思うよ」
――セシリアを救いたい。
カイルのその気持ちに続くのはミハイルとエミール。
そして......。
「ここがきっと本当に最後だと思うんだ。
だから皆さんの力をどうか......貸してください」
オレットは冒険者たちの方を振り返る。
最後の最後まで力を貸して欲しいのだと。
「そう、どいて欲しいんだね?
安心していいよ......わたしたちはもう行くから。
カイルのお姉さんも返してあげる。
お姉さんへの用事はもう済んじゃってるからね。
でも、ただ返すだけじゃつまらないでしょ?
だから......」
また彼女は笑う。
だが今度は無垢な微笑みではなく。
「殺してから、返してあげる」
無慈悲な微笑みだった。
彼女が作り出したのは、不死者の神の拳の一撃。
狙い定めた先は閉じ込める檻だ。
もしこの攻撃が通れば、檻は衝撃で墜落してしまうかもしれない。
そうなった場合セシリアの身はどうなるだろうか。
「姉さん......!」
カイルは走り出そうとする。
けれど走るだけでは間に合わない。
それに不死者や障害が多すぎる。
何か奇跡を起こせる代物でもなければ。
残酷な運命は変えられない。
逆に言えば、たった一つでも奇跡を起こせる力があれば。
セシリアのことを救うことができるだろう。
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あんみつ@GMより
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これからは全員こちらのカテゴリにどうぞ。
最初に再会できますが、それほど長く喋れる時間はないです。
とりあえず諸々喋っておりますが、大事なのは一点。
探求者のトップがセシリアに向けて攻撃をしました。
具体的に言えば、《ゴッド・フィスト》ですね。
完全に発動し影響を受ける場合セシリアはただでは済まないでしょう。
ただ発動をどこかのタイミングで止めることができれば大丈夫です。
また檻については少し高めに吊られているので遮蔽の影響を受けません。
方法については皆様にお任せ致します。
また魔物知識判定を5回程振っておいていただけると、
次回以降の進行が円滑に進みますのでお願い致します。
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