命の行き先
「私は......永遠が欲しいのだよ。 救世者の使命は永遠を齎すこと。
私は高い地位でそれを待っていればいいだけだ。
――頂きに立つのはそれからでも遅くないだろう」
グリードは俺の質問にそう答える。
正直、聞きたかったのはその先だったのだがそうは時間が許してくれなさそうだ。
「側近にまで永遠を分けてくれるとは、メティシエは随分と寛容なんだな。
お前が永遠で何をするかは知らんが、たった一人で止められると思うなよ...!」
敵の数や質は中々に良かったが、それ以上に良くこちらの攻撃が通っている。
合流したからというのもあるのだろうか、凄まじい勢いで前線が押し上げられる。
召喚したのであろう戦車...デュラハンも、その勢いを抑えることはできず、10秒もかからず崩れ去る。
「あ......有り得ない。
私がこんなくだらない奴らに負ける......まさかそんなはずは。
私の不死者たちが次々と倒れていく。 ――く、来るな......来るなあ!」
そのまま切り伏せられ、グリードが倒れる。
「私は永遠を手に入れるのだ......!
わ......私......は......」
「...まずはその"下らない奴ら"を見直してみろ。
今回の戦闘でわかったはずだろう?」
それは己の弱さ、結束の強さ、はたまた別の事かもしれない。
でも転機にはなっただろう。...生きていれば、まだ何かできるだろう。
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「カイル......」
「姉さん、助けに来たよ。 今から姉さんを出してあげるから待っててくれ」
まだ籠越しではあるが、セシリアとカイルがお互いの無事を喜んでいるようだ。
身体も或る程度回復している。今から治療すれば、命に問題は無いだろう。
「よかったら姉さんを降ろすのを手伝って欲しい。
飛んでくれたら楽だと思うが......。
それが難しいなら一緒に檻を降ろしてくれないか?」
籠はそれなりな高さにある上、さっきの戦闘でそれなりにダメージを受けているようだ。
それに、レオンハルトは戦闘で既に結構な時間飛んでいる。あれ以上は負担が大きいだろう。
ついでに自慢では無いが、俺は不器用だ。飛びながら籠に穴をあけるのは少し難しいか...
一通り考えた後、翼を広げて少し動かす。
「...よし。ともかく一度檻ごと降ろすぞ。
ミハイルさん...まぁ別の人でも良いが、俺が籠を持ったら鳥籠を繋いでる鎖を撃ち壊してくれないか?
俺は降ろすのに専念したい。」
そう言って翼を思いっきり動かし、籠の元に行く。
念の為、籠への直撃を塞ぐように位置取り、籠を持つ。
「もう少しの辛抱です。ちょっと揺れるかもしれませんから、できるなら俺の体の何処かを掴んで。」
無事に降ろせれば、この檻を解体するのは容易いだろう。
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さて、後は回復だが...
「こいつ...グリードを助けても良いだろうか? 勿論、また襲われないように注意は必要だが...
こういう状態の人を助けるのが薬師なものでな。
蛮族でもないし、今回の戦闘で何か感じればこいつは変われる...気がするんだ。
それこそ"死ぬ思い"をしたんだからな。
皆が反対するなら無理にとは言わない。その時は弔おう。」
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半ば予想はしていたが、出てくるのは反対意見のみだった。
普通に考えれば今まで殺しに掛かってきた敵を逃がすなど愚の骨頂だ。
この反応が当たり前と言えば当たり前だろう。
「わかった。変なことを言ってすまん。」
ザラックの言うとおり、カイル達からすれば気持ちにいいものでないだろう。
明らかに配慮が足りない。そういう意味もあり、しっかりと頭を下げる。
「もし回復させて尋問させたいなら協力しよう。
その必要がないなら、こいつで一突きするだけだ。」
そう言って持っている槍を少し持ち上げる。
// PL ==============
ミハイルを指名した理由は、ここまで同行してて魔法を見ているからです。
フィーリアにしようかなと思ったら銃持ってなかったという理由もあったりしますが。
助けられる命は助けたい。それなんて神官?的RPになりました。
もし、グリードが何故助けたのかと聞けば、
「残念だが、重症を負っている人を見殺しにしたく無いのでな。
さぁ、ここから先どうする? 誰にも指示はされない、自由に決めればいい。」
と答えます。
例え敵だったとしても、人が死にゆくのを見届けるのは最低限にしたいので...
そして反対多数。という事でちょっと追記しました。
現実は非情である。