殺す自由と助ける自由
さすがに多勢に無勢か。奴の前に立ちふさがる不死者たちはどんどん倒れていく。特に太陽ルート組の火力がすさまじく、次々とアンデット達を死体へと戻してゆく。
「あ......有り得ない。
私がこんなくだらない奴らに負ける......まさかそんなはずは。
私の不死者たちが次々と倒れていく。
――く、来るな......来るなあ!」
「ダメじゃないか、もっと余裕を見せなきゃ。多少なりとも他人を導こうと考えていたんだから、こういう時は潔くしなさい。」
自分の過去も、未来も、現在さえも認めることが出来ない男は、無様にもうろたえながら攻撃を繰り返す。
「私は永遠を手に入れるのだ......!
わ......私......は......」
そして、私の振り下ろしたスティールブロウが命中し、男は倒れた。辛うじて生きてはいるようだが。
「永遠へ、一名様ご案内。とは行かなかったけど、何とか全員無事みたいですね。」
自分達以外に動くものがいなくなったのを確認し、スティールブロウを仕舞う。こいつはとどめを刺すにしろ刺さないにしろ縛り上げておくほうがいいだろう。だが、その前に人質の救出だ。
「よかったら姉さんを降ろすのを手伝って欲しい。
飛んでくれたら楽だと思うが......。
それが難しいなら一緒に檻を降ろしてくれないか?」「...よし。ともかく一度檻ごと降ろすぞ。
ミハイルさん...まぁ別の人でも良いが、俺が籠を持ったら鳥籠を繋いでる鎖を撃ち壊してくれないか?
俺は降ろすのに専念したい。」
「ならば、私が鎖を破壊しましょう。」
剣の加護を使って飛び上がり、鳥かごと天井をつないでいる鎖の元へと向かう。何秒使ったかは覚えていないが、多分持つだろう。・・・たぶん。
鎖に向かってスティールブロウの柄を叩き込み、それなりに脆くなっていた鎖を破壊する。結構簡単に壊れたところを見ると、この男を倒すのにもう少し時間がかかっていたならば、落下していたかもしれない。
「よし、一丁あがり。」
鳥かごが無事に地面に下りたことを確認した後、地面に降り立った。
次は、この男の縛り上げか。万が一目がさめてしまってもいいように縛り上げておこう。死亡と同時に自身をアンデットにするアーティファクトとか仕込まれているかもしれないから、とどめを刺すとしてもその後か。
*****
「こいつ...グリードを助けても良いだろうか? 勿論、また襲われないように注意は必要だが...
こういう状態の人を助けるのが薬師なものでな。
蛮族でもないし、今回の戦闘で何か感じればこいつは変われる...気がするんだ。
それこそ"死ぬ思い"をしたんだからな。
皆が反対するなら無理にとは言わない。その時は弔おう。」
男を縛り上げ終わった所でヴォリアが助けようと言い出した。そういえばグリードって名前だったか。だが・・・
「いや、無理だろ。変われる変われないの問題じゃなく、そいつ普通に犯罪者だし連れ帰った所で死罪だろ。かといって、逃がすってのも無理だろ。
まあ、俺達冒険者はある意味での無法者だし、そうしたいと思うなら自己責任でそうするのも勝手と言えば勝手だが......彼らはそういうわけにもいかんだろ」
「私も反対です。この男は落ちるところまで落ちている。それに、最後の台詞はとても何かを感じ、生き方を変える人族の言う言葉じゃない。
まあ、どうしてもって言うならばかまいませんが、その行動には最後まで責任を持ってください。自由には責任が伴うものですから。
ああ、縄は解きませんよ?助けるのは命だけです。」
この男も殺そうとしたんだ。殺されても文句は言えない。
---PL---
とどめはいただいた。さらに縛り上げた。言いたいことも行った。
戦利品に関してはトレジャーハントが使える人がいるならばそちらに任せます。
命を助けることに反対はしませんが自由にすることには反対します。PL的には助けたとしても聞くことを聞き出してその後はきっちりメティシエのところへ送ってあげるほうが後腐れないと思っています。