未来の道へ
廊下を歩いていると、ヴォリアさんが同じ方向へ向かっていることに気づいた
「あれ、もしかしてセリシアさんに用事?」
「わたしはいくつか聞いておきたいことがあってね。まずは体調の確認唐だな」
* * *
ドアをノックするとセリシアさんが応じてくれた
「あ、おはよう。ちょっと話をする時間をくれない?」
とりあえず剣と荷物を部屋の隅に置く。鎧は脱いで来たほうがよかったかな
まあ、そのままでも大丈夫か
「この度は本当に助けに来ていただきありがとうございました。
もし皆さんがいらっしゃらなかったら果たしてどうなっていたのか......。
あまり想像したくはありませんわ」
「うんうん。元気そうで何よりだよ」
始めに会ったときよりも、ずっと生きている感じがする。息を吹き掛けると消えちゃいそうなのは変わらないけど
「実は近頃夢の中でカイルの姿を見ることがよくありましたの。
それだけが――閉じ込めらていた私の唯一の希望でしたわ。
今思えばカイルの側にぼんやりと見えていた人影は――。
お二人を含めた皆さんの姿だったのかもしれませんわね」
ヴィオーラとかいうのによれば、セリシアさんは予知夢を見るらしいけど、嘘っぱちじゃなさそうだな。当然、この力のせいで狙われたんだろうけど
「ただ他に見た夢は嫌なものばかりでしたわ。
死せる者や血を吸う者たちの姿。
それにどこまでも続く闇。
私を捕らえていた彼女たちの目的を直接聞くことはありませんでしたけど......。
恐ろしいことを行おうとしているのはきっと間違いないと思いますわ」
「なるほど...だいたいそんなことをするイメージなんだね」
アンデッドと深く関わりそうだ。具体的なことはわからないけど、知りたかった2つ目の事が得られた
「ここだけの話、カイルは貴方がたのような冒険者という存在に期待しているようですね。
――姉ですから、弟のことはよくわかります。
だからもし、カイルが苦しみ悩んでいるときは力になってあげて欲しいと思っておりますわ。
きっと貴方がたには未来を掴み取る力があると思っていますから」
「もちろん!何時でもかけつけるからね」
"未来を掴み取る力"かあ......いい響きだな。溢れる無限の可能性を感じる
「ああでも、カイルさんも勇敢だったよ。みんなを守りながら戦ってくれてさ
カイルさん自身の力と勇気がなかったら、ここまで来れなかったな」
「...それから最後に、あの教団について知っときたくてね。何もできないかもしれないけど
もし、次へ向かった場所に心当たりがあったら...ちっぽけなことでいいから教えて欲しいな」
* * *
「ねぇヴォリアさん、よかったら何か買い物しない?
前にチラッと見たんだけどさ、ルキスラにはないキレイなのが色々売ってて、目を通すだけでも楽しいよ!」
門を目指して、庭を歩てる。花壇もよく手入れされていて、ポカポカな太陽があう良い眺めだ
それを背に座ってる人影が見えた。向こうも気がついたらしく、立ち上がって近づいて来る
「あ!オレットさんだ」
「やあ、タタラさん。
それにヴォリアさん」
「お二人はしばらく街に留まられるんですか?
僕はまた旅に出ようか......と考えているんです」
「え、もう行っちゃうの?宴会ぐらい参加してけばいいのに」
「無事セシリアさんを助けられたし、また世界を見て回りたいなと思って。
今ならいい歌や音楽が浮かびそうな気もするから。
恩人である嵐の妖精が喜んでくれるような、ね」
「そう...寂しくなるな」
突然だけど、オレットさんはすぐに旅に出るみたいだ。セリシアさんとの顔合わせもあまりしてなかったけど、いいのかな
きっとこの行動力が、オレットさんの持ち味なんだろう。もう少し話をしたかったけど、止めたりはしない
「だから、当分の間は会おうと思っても会えないかもしれない。
でも僕は忘れない。
二人やほかの冒険者のみんな――それにカイルさんたちとセシリアさんを助け出したことを。
この思い出は僕にとって勇気や励ましになるから」
「それはわたしもだよ。これだけの困難を乗り越えたんだから、ずっとずっと強くなれたと思う」
だからこの先にある壁も、ガツンと壊せるはずだ
「それじゃあ、僕は行くよ。
さっきも言ったけど、しばらくは会うことだってできないかもしれない。
でも、僕は二人やみんなにまた会いたいと思っているから」
「あっ ちょっと待って」
大急ぎでカバンを降ろして金貨袋を取り出す。そこから1000G抜いて、残りはカバンの中にぶちまけた
「借りた分はきちっと返さないと気がすまなくてさ。これは魔晶石のやつ」
「本当は物を買って渡したかったけど、今は現金しかないから...」
必要な額を袋に戻たら、オレットさんに差し出す
「それじゃまた会えたら、色んな歌を聴かせてね」
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PL玉鋼より
次回投稿はとりあえず、他PCが一人もいなかったとしても不自然にならないように書き、お声がかかったら、追記したり矛盾点を解消したりしようと考えています