【F-1-3】コンチェルティアの風景

 GM(あんみつ) [2016/04/29 17:18:17] 
 

ヴォルディーク大通り。
コンチェルティアの南北を繋ぐこの道は観光客向けの店が並ぶ場所である。

あそこに見えるのは似顔絵師だろうか。
今はちょうどエルフの女性をモデルに描いているようだが。
見たところ――なかなかに色彩が奇天烈で前衛的な感じだ。

「やあ、そこの君もモデルにならないかい?」

彼に頼めばなかなか奇抜な感じに描いてくれることだろう。

通り道を歩いていると、両端から他にも声が聞こえてくる。

「可愛い童話のヒロイン達のアクセサリーだよ。
 よかったら見て行ってくれないか?」

「妖精にも大人気!
 宝石みたいな甘いキャンディー売ってまーす!」

「神殿からの出品です。
 加護を受けた葉っぱ飾りいかがですか?」

「素敵な恋の歌。
 よかったら聞いていかないかしら?」

大通りはとっても賑やかな様子だ。
四番街の方まで行けば、大小様々な劇場がある。
一番街の方にはアステリアを始めとした神殿があるらしい。
六番街には若いまだ蕾のような芸術家たちのアトリエが建ち並んでいる。

それぞれ巡っていけば一つ一つ趣があることだろう。

   *   *   *

コンチェルティアの三番街。
冒険者の店や道具を売る店が並ぶ区画だ。

その中でも最も大きな店が七色の調べ亭である。

「やっと来たのか!
 遅いぞ、もうこっちは始まってるぜ!」

店の扉を開いて中に入ってきた冒険者たちに声をかけたのは。
先刻の戦いで先頭に立って率いていたグラディウスであった。

店の中では戦士や神官、銃士に楽士ら。
様々な冒険者たちが楽しげに酒を酌み交わしていた。
彼らは主に神殿の前にて教団員や不死者を相手にしていた冒険者たちだ。

キャンプで顔を見ただけの者も多いが。
彼らもルキスラから来た六人の冒険者たちも。
大きな戦いを一緒に乗り越えた仲間である。

――故に今回冒険者たちはグラディウスにお呼ばれしたというわけだ。

「なあ、聞いたぞ?
 お前たち探求者の幹部連中の相手をしたんだってな。
 戦ってる姿を見れないのが残念だったぜ。
 なあ、もしもう少しこの街にいるんなら一緒に依頼で儲けに行かねえか。
 ちょうど手頃な獣の討伐依頼が来てるみたいなんだよな」

冒険者たちに積極的に絡んでくるグラディウスとは一方的に。
リオンはカウンターで優雅にお酒を飲んでいた。
なかなかに高価そうなものである。

「相変わらず騒がしくて優雅さの欠片もない。
 そう思いませんか、アンネさん?」

リオンはカウンターの中にいるエルフの女性に話しかける。
彼女こそ七色の調べ亭の主アンネである。

「でも、リオン。
 実際のところあなたもこういうの嫌いじゃないでしょ?」

――かくして七色の調べ亭の夜は更けていく。

   *   *   *

墓場の下の洞窟の中は沈黙に満ちていた。
あるのは様々な骸だけ。

かつては月神に捧げられた聖堂も。
まるで今では巨大な霊廟のようであった。

タタラはカマル地下聖殿に再度訪れていた。
目的は死んでしまったものや既に死せる者たちを弔うために。

探求者たちもそれぞれは迷える魂を持つ人間であり。
アンデッドたちも魂が救われなかった悲劇の者たちだ。

そんな彼らの魂を救うべく。
タタラは向かっていく。

彼が向かう先は――どこだろうか。


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あんみつ@GMより

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