ふたりの騎士
名前を【七色の童話集】に書きこみ、僕たちは光につつまれた。
あまりのまばゆさに目をつぶってしまう。
目をふたたび開いたとき、僕は抜けるような青空のもと、緑の草原に立っていた。
よく見まわすと、ここは緑のゆるやかなのぼり坂のふもとみたいだった。きっと丘になっているんだろう。
僕のかたわらには、ポチとエクシーだけがいた。
「......エクシーだいじょうぶ?どうやら僕たち、本の世界に入り込んだみたいだね。......でも、他のみんなはどこに行っちゃったんだろう」
やわらかい風を感じながら、自分のいまの状況を確認するために声に出してみる。
そういえば、いつのまにかにぎっている、これはなんだろう。
「しおり......?」
黄色い栞にはなにか書かれている。魔法文明語みたいな、でもちょっとちがう、ふしぎな文字だ。それでもなぜか、その記された意味はわかった。
>『物語の登場人物には各々の役割がある。
黄の栞を手にした者よ。
世界の中で笑いの物語を紡げ......』
「笑いの物語......」
これが、この世界で僕にあたえられた役割みたい。栞には笑顔のマークが5つ。どういう意味なんだろう。
「僕、ここで『笑いの物語』をつむがなきゃいけないんだって。エクシーのはなんて書いてあるの?」
エクシーの手ににぎられた青い栞も気になって、僕はたずねた。
僕の知ってる『青ひげ』には、笑える要素なんてなかったような気がするけど......。それを、なんとかしてみせろ、ってことなんだと思う。
がんばらなきゃ。
そう思ったときだった。
なにか来る。
僕たちのまえに何かが躍りでた。
「!ウルフ!」
僕が反応するよりはやく、ウルフはいっしゅんの絶叫とともに倒れた。
その体には、一本の矢が刺さっている。これが致命傷だ。急所を的確に射抜かれていた。
金属鎧の音がした。ロセウスさんかと思って、僕はウルフの遺体から顔をあげた。
音の正体は、人間族にみえる栗毛の髪の毛の男のひとがふたり。彼らが着こんでいた鎧だった。ひとりは馬に騎乗したまま、もう一頭いる馬はしずかにたたずんでいる。
馬からおりた男のひとが、優しい口調で僕たちに話しかけた。
>「悪いな......こっちに人がいるとは思ってなくてさ。
怪我はなかったかい?」
ちょっとちいさな子にたいする調子みたいなかんじだ。いっしゅんだけエクシーと視線をかわす。うん、ここはあえて訂正しないでおこう。
僕はさりげなく、魔法の発動体である銀の腕輪がはまった右手をハーフマントのなかに隠した。
「はい。あぶないところを助けてくださって、ありがとうございました。僕はフィン。この子はエクセター。ふたりで遊んでいたら、ここまで迷いこんでしまったんです。ここは、どこなんでしょう?騎士様はこのちかくにお住まいの方ですか?」
『青ひげ』の筋書きどおりなら......。この二人の騎士は、さいごに青ひげを殺す役割をもつ、「奥方のふたりの兄」の可能性があると思う。
なんにも知らない子どものふりが、どこまで通じるだろうか。情報はできるだけ集めておかなくちゃいけない。
(ポチ、丘のうえをちょっと見てきて)
僕は騎士と会話をしながら、すきを見てポチをそっと空中にはなった。
「あ、すみません。僕の......ペットの小鳥です。飛んでいってしまっても、すぐにもどってきますから」
ただの子どもだと、ごまかせてるのか、ごまかせてないのか。魔法使いや使い魔なんかについて、このひとたちにどれくらいの知識があるのか。
まだつかめない。僕はどきどきしながら、必死でにこにこした。
――PL(雪虫より)―――
あまとうさん、同じルートですね。よろしくおねがいします。悲劇とコメディの両立、がんばりましょう!
とりあえずは、すくなくとも話しかけてきた騎士には「ふつうの子どもだと思われている」ことを利用して情報を集めてから動くスタンスでいきます。
ポチは放ちますが、まだ視界共有はしていません。今後の展開でチャンスがあったら、ということで。別行動が不利と判断したらすぐに呼びもどします。
【判定結果】
20:56:34 雪虫@フィン ≫ 魔物知識判定 ウルフ 2d6+8 <Dice:2D6[6,2]+8=16>