ふたりの騎士

 フィン(雪虫) [2016/04/14 21:38:15] 
 

 名前を【七色の童話集】に書きこみ、僕たちは光につつまれた。
 あまりのまばゆさに目をつぶってしまう。
 目をふたたび開いたとき、僕は抜けるような青空のもと、緑の草原に立っていた。

 よく見まわすと、ここは緑のゆるやかなのぼり坂のふもとみたいだった。きっと丘になっているんだろう。
 僕のかたわらには、ポチとエクシーだけがいた。

 「......エクシーだいじょうぶ?どうやら僕たち、本の世界に入り込んだみたいだね。......でも、他のみんなはどこに行っちゃったんだろう」

 やわらかい風を感じながら、自分のいまの状況を確認するために声に出してみる。
 そういえば、いつのまにかにぎっている、これはなんだろう。

 「しおり......?」

 黄色い栞にはなにか書かれている。魔法文明語みたいな、でもちょっとちがう、ふしぎな文字だ。それでもなぜか、その記された意味はわかった。

 >『物語の登場人物には各々の役割がある。
   黄の栞を手にした者よ。
   世界の中で笑いの物語を紡げ......』

 「笑いの物語......」

 これが、この世界で僕にあたえられた役割みたい。栞には笑顔のマークが5つ。どういう意味なんだろう。

 「僕、ここで『笑いの物語』をつむがなきゃいけないんだって。エクシーのはなんて書いてあるの?」

 エクシーの手ににぎられた青い栞も気になって、僕はたずねた。
 僕の知ってる『青ひげ』には、笑える要素なんてなかったような気がするけど......。それを、なんとかしてみせろ、ってことなんだと思う。
 がんばらなきゃ。

 そう思ったときだった。
 なにか来る。
 
 僕たちのまえに何かが躍りでた。

 「!ウルフ!」

 僕が反応するよりはやく、ウルフはいっしゅんの絶叫とともに倒れた。
 その体には、一本の矢が刺さっている。これが致命傷だ。急所を的確に射抜かれていた。

 金属鎧の音がした。ロセウスさんかと思って、僕はウルフの遺体から顔をあげた。
 音の正体は、人間族にみえる栗毛の髪の毛の男のひとがふたり。彼らが着こんでいた鎧だった。ひとりは馬に騎乗したまま、もう一頭いる馬はしずかにたたずんでいる。

 馬からおりた男のひとが、優しい口調で僕たちに話しかけた。

 >「悪いな......こっちに人がいるとは思ってなくてさ。
   怪我はなかったかい?」

 ちょっとちいさな子にたいする調子みたいなかんじだ。いっしゅんだけエクシーと視線をかわす。うん、ここはあえて訂正しないでおこう。
 僕はさりげなく、魔法の発動体である銀の腕輪がはまった右手をハーフマントのなかに隠した。

 「はい。あぶないところを助けてくださって、ありがとうございました。僕はフィン。この子はエクセター。ふたりで遊んでいたら、ここまで迷いこんでしまったんです。ここは、どこなんでしょう?騎士様はこのちかくにお住まいの方ですか?」

 『青ひげ』の筋書きどおりなら......。この二人の騎士は、さいごに青ひげを殺す役割をもつ、「奥方のふたりの兄」の可能性があると思う。
 なんにも知らない子どものふりが、どこまで通じるだろうか。情報はできるだけ集めておかなくちゃいけない。

 (ポチ、丘のうえをちょっと見てきて)

 僕は騎士と会話をしながら、すきを見てポチをそっと空中にはなった。

 「あ、すみません。僕の......ペットの小鳥です。飛んでいってしまっても、すぐにもどってきますから」

 ただの子どもだと、ごまかせてるのか、ごまかせてないのか。魔法使いや使い魔なんかについて、このひとたちにどれくらいの知識があるのか。
 まだつかめない。僕はどきどきしながら、必死でにこにこした。

――PL(雪虫より)―――
あまとうさん、同じルートですね。よろしくおねがいします。悲劇とコメディの両立、がんばりましょう!

とりあえずは、すくなくとも話しかけてきた騎士には「ふつうの子どもだと思われている」ことを利用して情報を集めてから動くスタンスでいきます。
ポチは放ちますが、まだ視界共有はしていません。今後の展開でチャンスがあったら、ということで。別行動が不利と判断したらすぐに呼びもどします。

【判定結果】
20:56:34 雪虫@フィン ≫ 魔物知識判定 ウルフ 2d6+8 <Dice:2D6[6,2]+8=16>