あえて飛びこむ

 フィン(雪虫) [2016/04/17 19:28:15] 
 

 >「あれ?みんなどこに行ったんだろ?フィンはしってる?
   これがあの本の効果なのかな?うーん...わかんない」

 >「うー、でも一人じゃなくてよかったよー!
   エクセターもう一人はやだもん、一人ってすごく寂しい。
   でも今は、フィンが一緒だから安心だね!あ!ポチも一緒!」

 そう言ってエクシーは僕の手をぎゅっとにぎった。

 「うん、エクシーといっしょでよかった。はやく他のみんなも探さなくちゃ......」

 >「むー柔らかい...癒やしだね、癒やしー」

 肉球をむにむにとさわってくる。これが好きなひとはおおいけど、なんでなんだろう?

 >「うん?これなんだろう?
  各々の...役割?涙で紡ぐ?」

 エクシーも栞に気づいたみたいだった。

 「僕のは『笑いの物語』だったよ。エクシーは、この本の中で『涙の物語』をつむがなきゃいけないみたいだね......」

 と、いいかけたとき、僕たちはウルフの影に気づいたのだった。

※ ※ ※

 >「そうか、怪我はなかったならいいんだ。
   エクセターにフィンか。
   近頃はこの辺も獣が出て物騒だから気をつけるんだぞ。
   ......んで、俺の名前だったか。
   俺はフレール・オルドル。
   そして、こいつが......」

 >「ミリューです。
   僕らはこの丘の麓の方にある街で暮らしています。
   今は丘に現れた動物退治の仕事の最中でして」

 >「俺としてはさっさと丘の上にいるスールに会いに行きたいんだけどな。
   あ、スールっていうのは俺とミリューの妹だ。
   てか、俺たちが兄弟だってのも言ってなかったっけか」

 僕はふむふむと話をききながら、できるだけすばやく頭のなかでイメージを組みたてた。
 兄・フレールさん・騎士、弟・ミリューさん・騎士、妹・スールさん・丘の上に住んでる。
 ということは、ポチはきっと、スールさんの住む家のちかくまで飛んでいったんだ。......たぶん、スールさんは青ひげの奥方。ポチは青ひげの屋敷のちかくを飛んでるはずだ。
 僕はそのゆくえをすこし気にした。

 エクシーはそんなふたりにほがらかに話しかける。

 >「んーとね、エクセターはお絵かきするのも好きだよ!
   それでーお菓子も好きなんだけど、お兄さんたちにお礼としてお菓子をちょっとあげちゃうよ!」

 そうして袋を取り出しながら、ふたりに歩みよっていったんだけど...。

 「あっ......」

 せっかくのお菓子は、エクシーが足をすべらせたひょうしにばらばらと地面に飛びちってしまった。

 >「エクセターのお小遣いで買ったおやつが...!」

 エクシーはわなわなとちいさな肩をふるわせた。

 >「おに、おにいさん...ごめんね...お兄さんにあげるお菓子落としちゃった...」

 そんな彼女の頭を、フレールさんはやさしくなでた。

 >「残念だったな、エクセター。
   でも俺はエクセターがお菓子をくれようとした気持ちだけで充分嬉しいぞ。
   そうだ、後で俺がお菓子を買ってやろう。
   丘から下りる際にまた襲われたら大変だしな。
   だからそんなしょぼくれて顔するなよ......な?」

 丘から下りる......。ふもとの街までついてきてくれるんだろうか。
 さっきみたいにウルフが現れることを警戒して...?
 そのとき、ミリューさんの冷静な声がかかった。

 
 >「兄さん、気持ちはよくわかりますが......。
   僕らには果たさなければならない仕事があります。
   これ以上狼による被害を出さないために、リーダーを狩らないと。
   それに......」

 落ちついた視線が僕をとらえた。

 >「先ほどの鳥はもしかしたら使い魔ではありませんか?
   僕も多少分野は違えど魔法を学んでいる身でして。
   もしフィンさんが魔法を使えるのであれば、丘を下りることくらいは容易なはずです」

 ぎくり。
 僕は体の緊張をできるだけおさえようとした。うまくいったかはわからない。どっどっどっと心臓が走りだす。
 
 ポチが使い魔だと、見破られた。
 
 ハーフマントのなかで右手をにぎりしめる。僕が真語魔法使いだと、どうしてわかったんだろう。
 ミリューさんも魔法を学んでいるらしいけど、どうやら真語魔法ではないようだし......。
 ともかく、ふつうの子どものふりをしようという、いっしゅんでたてた作戦は失敗だ。

 >「そうか、フィンは魔法が使えるのか?
   小さいのに偉いな。
   俺はそっち方面は本当にさっぱりで」

 フレールさんはたぶんそんな僕に気づかず、あかるく言った。

 >「じゃあ、フィン......お前も男ならエクセターのことを頼めるか? 
   それなら俺たちは狼退治に戻るとするか。
   馬もいるとはいえ、二人だけでやるなんて面倒だけどな」

 最後のひとことは、ちょっとめんどくさそうに。
 そんなフレールさんと、落ちついたミリューさんを前にして、僕はエクシーの銃をちょっと見つめ、腹をくくって話しだした。

 「......隠しててすみません。そうです、僕、真語魔法使いです。さっきの小鳥は、僕の使い魔のポチといいます。僕の住んでるところでは、魔法使いは不気味がられたり、警戒されたりするので、知らない人にはあまり『魔法使い』と名のらないことにしてるんです」

 ごめんなさい、と僕は頭をさげた。これはほんとのことでもあった。

 「僕たち、ふしぎな光に触れて、ここまで迷いこんできたんです。どっちが帰り道なのかすら、ほんとにわかりません」

 右手首の銀の腕輪を見せる。

 「おふたりのおっしゃるとおり、僕には戦う力があります。それと......このエクセターも、ちいさいけれど、腕利きの射手なんです。僕たちの住むところでは弓をもちいる以外に、こういう武器をつかう射手もいて......」

 言いながら、エクシーのガンをさし示した。栞の文字は魔法文明時代のものによく似ていた。僕の考えがもし正しければ、ふたりはガンなんて見たことがないかもしれない。
 ふたりの反応を、特に射手でもあるらしいミリューさんのようすを見ながら僕は説明する。

 「えっと、これは...その......。魔法の弾を打ちだす武器、です。あつかいが繊細で、特殊な技術が必要なんです」

 ガンの仕組みの説明なんかははぶいた。
 それよりもふたりは不思議に思うだろう。ちいさな子どもふたりが、とくにエクシーが、複雑な戦う訓練をうけていることを。
 僕はちょっとした賭けにでてみる。

 「あの、おふたりは狼退治のとちゅう、っておっしゃいましたよね。僕たちも、お役にたてるかもしれません。僕たち、こんな風に街のひとたちやいろんなひとたちの困りごとを解決することを生業にしてるんです。助けていただいたことでもありますし、狼退治、お手伝いさせていただけませんか?」

 ポチの一件でわかった。このひとたちに、とくにミリューさんに、慣れない腹芸はつうじない。フレールさんも、どうやらまっすぐな性格のようだし。
 だったら、こちらから飛びこんでしまえばどうだろう。
 『青ひげ』の奥方であろう「スールさん」の「ふたりの兄」を前にして、僕は話せるかぎりのことを話し、ごくりとつばを飲みこんだ。

――PL(雪虫)より―――

まだボケる余裕がない!

選択する行動は、 オルドル兄弟を手伝う です。

不慣れなからめ手はかえって墓穴を掘る結果となる相手と判断しました。ミリューさんおそるべし。
フレールさんとも、正直に話をしたほうが信頼関係をきずけそうです。
ミリューさんの射手としての腕前はさっき見たとおりですし、ふたりだけで任務にあたっているのだからフレールさんもそれなりの手練なのでしょう。
不信感をいだかせて、よいことはないと思われます(びびり)。

ということで、エクシーとフィンは狼退治をお手伝いします。助けてもらった恩もありますし。
狼のリーダーとやらを倒さねばならないのですね。 
 
次からはがんばってボケていきたいです(所信表明)。