【C-2-1】家族というもの
フレールの後ろか、ミリューの後ろか。
>「...あ......はい、あ、ありがとうございます。では、僕はミリューさんの後ろに......」
フィンがミリューの後ろに乗ろうとしたその時。
>「ジャーンぷ...むぎゅ!?」
エクセターがフレールの後ろにジャンプで乗ろうとしたものの。
跳躍力が幾分か及ばず――馬の装具に正面から激突する。
そんな様子にフレールは口をあんぐりと開き。
ミリューはすっと目を逸らした。
>「...ぴゅ、ぴゅい~♪ぷい~♪」
とりあえずごまかすかのように口笛を吹いてみせたエクセター。
何故かその口笛はそれなりに上手であった。
「よーし、大丈夫だぞ、エクセター。
俺がちゃんと落ちないように乗せてやるからな。
――ん、見た目より重いな......」
フレールはそんなエクセターを持ち上げようかと試みたが。
思ったより重かったのか途中で諦めたようだ。
「まあ、いいさ。
ほらちゃんと場所を開けてやるから乗りな。
難しいなら手伝ってやるぜ」
結局フレールは主にエクセターに任せるつもりのようだ。
勿論サポートはしてくれるが。
一方フィンの方はというと......。
>「す、すみません!あの、乗るの手つだってください!それで、その、ま、前に乗せてください!」
涙目になりながらミリューに懇願していた。
勿論そこまで不憫な様子を見せるフィンに冷たくするような彼ではなく。
「別に構いませんよ......さあ、どうぞ」
そうやって自分の前にフィンのことを乗せてくれるだろう。
フレールの後ろにエクセターが。
ミリューの前にフィンが乗れば、さあ出発だ。
* * *
馬に乗って丘を走ると――なんというか風が気持ちいい。
爽快感で気持ちもすっきりしてくるかのようだ。
>「妹さんのお住まい、丘の上なんですよね。ここから馬でどれくらいなんですか?」
馬に少し離れてきた頃フィンはミリューに聞いてみる。
「馬ならそうは時間はかかりませんね。
本来はもっと早い時間から会いに行く予定でしたが......。
突然狼の襲来があってこうして借り出されてしまったわけです」
ミリューの言葉を信じるならば、馬を使えばすぐにたどり着けるだろう。
もし誰かが危険な目にあっていてもきっとすぐに。
>「妹さん、きっとご結婚されてるんですよね。ミリューさんは妹さんのこと、心配してるってフレールさんが言ってました。フレールさんも、反対されてた、って。どうしてか、聞いてもいいですか?」
そしてフィンは更に質問を追加する。
今度はこの世界における彼ら――特に青髭の男の内情を知るために。
「兄が反対していたのは単に寂しいからですよ。
僕が心配しているのも――主にきっと妹と離れているからなのでしょう。
ただ、確かに引っかかる点がないわけではありません。
あまり妹の夫のことを悪く言いたくはないのですが......。
彼にはあまり良くない噂があるのです。
青髭の妻になった女はいつの間にかいなくなってしまうっていうものですね。
まあ紳士的ではありましたが、寡黙な男でしたので夫婦づきあいも大変なのでしょう。
その点妹は多少マシかもしれませんが。
――実のところ、今回会いにいくのもそれが気懸りだというところもあります」
ミリューの話からすれば、青髭の妻となった女性は少なくとも複数人姿を消しているらしい。
尤も国に帰ったとか他の男に乗り換えたとか色々な風評があるらしいが。
>「ミリューさんは、3人きょうだいの真ん中なんですね。僕も、9人きょうだいの真ん中なんです。上に2人、下に2組三つ子がいて。兄さんはへんくつで、姉さんは心配性で、弟や妹たちはまだちっちゃくて、やんちゃだしマイペースだし......。僕がいなくなっちゃって、だいじょうぶかなってときどき思うんです」
少ししてフィンがミリューに語りかけたのは、さっきまでとは違うプライベートな話だった。
「九人ですか......流石にそれだけの人数は想像したことがありませんね。
まあ僕の兄も妹もどちらかというと騒がしい方なので、いろいろと苦労はしましたよ。
......その分楽しいことも多かったと言えますがね。
フィンさんにも楽しかった思い出の一つや二つあるでしょう?」
ミリューも真ん中としてそれなりの苦労をしてきたようだ。
でも、だからこその楽しさがあったことも付け加えた。
付き合いとは煩わしいこともあれば面白いこともよくあるものだ。
彼も最初よりかはフィンたちに気持ちを開いているらしい。
きっと面白い話を聞かせてやれば喜んでくれることだろう。
>「じつは、ポチには『丘の上を見てきて』って言ってあるんです。今ちょっとだけ、ポチの視界から風景を見てていいですか?」
そんな他愛ない話をしながらもフィンは忘れなかった。
勿論忘れていないのは――使い魔ポチのことだ。
「丘の上の様子ですか。
まあ城が見えるだけでしょうけど......構いませんよ。
ただ落ちないように気をつけてくださいね」
フィンがポチと視覚の共有をすれば――。
緩やかに丘の上を昇るように飛んでいるポチの視界とリンクできるだろう。
そこから見える景色の端の方では城のシルエットが徐々に近づいてくる。
もうすぐその傍まで至ることができるだろう。
* * *
一方、エクセターはフレールの後ろに乗りながら丘を駆ける風をその身に受けていた。
「エクセターって変わっているよな。
そんな小さいのにあんな戦いのテクニックを持っているしさ。
エクセターもどこかの騎士か兵士の家の生まれなのか?」
馬で丘を走りながら、フレールはエクセターに聞く。
たぶん、彼の単純な興味から来る質問だ。
「俺の家も古くから騎士の家系でさ。
剣や馬なんかは親父から学んだんだ。
ミリューのやつはちょっと反抗期で魔法の勉強なんてしてたけどな」
フレールとミリュー、そしてその妹は代々騎士の家系の生まれらしい。
「そういえば、だからなのかな。
スールが求婚されたのもさ。
なんか騎士の家系ばかり青髭の妻に選ばれているんだってさ」
青髭が妻に娶ろうとするのは騎士やそれに近しい娘だという。
スールもだからこそ青髭の妻になったのではないか、と彼は推測する。
「まあ、俺ばっかり話しててもつまんないだろう?
エクセターの話も聞かせてくれよ。
家族のこととかさ」
フレールは魔動機という概念も知らない。
だからルーンフォークという存在も当然知らない。
これは単純に彼の興味から来る質問だ。
―――――――――――――――――――――――――――――――
あんみつ@GMより
こちらはエクセターとフィンの新しいカテゴリです。
今回からはこちらに投稿してください。
エクセターがすっ転んだシーンにCPを1点差し上げましょう。
その後は馬に乗って色々とお話をしたり聞けるだけです。
基本的には文中にあることを聞くことができました。
このカテゴリに記事を投稿する際は、
カテゴリ『2-絆という力』にチェックを入れて投稿してください。