【C-2-2】ちょっとした対立
まるで子供のような姿なのに、何故そこまで戦いの技術を持っているのか。
当然の疑問を真っ直ぐにぶつけてくるフレールに対し、エクセターはまずは質問で返した。
>「ねぇ、フレール。フレールはお父さんとお母さんに最初にしてもらった事はなにか覚えてる?」
それは子供としての自分が親からどう扱われたかの問いかけ。
「んー、昔の話だからな。
俺もはっきりと覚えてるわけじゃねえけど。
かなり優しくしてもらってたはずだぜ。
とりあえず......温かかったな」
フレールから帰ってきたのは極々一般的な回答。
世界に生きる多くの人はその枠に収められるはずだろう。
だが、エクセターは例外の側であった。
エクセターは語る。
エクセターは兵士なのだと。
いや、兵士として生み出されたのだと。
フレールの背中にしがみつく力が強くなる。
彼は気に留めず、丘の上で馬を走らせていた。
風がエクセターの体を通り過ぎていく。
>「けどね、それは別に悲しくなかったよ。
> そもそも親という存在を知らなければ気にすることもないし、
> そうやって育てられたのはエクセターだけじゃなかったから」
ただそれだけがエクセターの全てではない。
彼女は冷たい兵士としてのみ生きてきたわけではないのだ。
姉のような存在が、仲間が、今だってフィンたちがすぐ傍にいるのだ。
内容に呼応するかのようにエクセターの声にも温かさが足されていく。
>「フレールもさ、この仕事が終わったら家族に会いにいけるんだよね?
> 狼なんかぱぱーっと追い払っちゃってさ、会いに行こうよ!
> きっとフレールとミリューが来てくれたらスールも喜ぶと思う!」>「そうと決まったらエクセターも頑張っちゃうよ!
> なんたってエクセターはぶんぶりょうどう...だからね!
> ...さいしょくけんびだったっけ!?」
そして最後にエクセターはフレールに声をかけた。
付け足した言葉はちょっとだけ上手くは纏まらなかったが。
「俺はさ、あんまり勉強とか熱心にやってきたタイプじゃないからさ。
エクセターの話も感覚でしか理解できねえんだ。
それに騎士だから人の体や命を守る力は持っているとは思うけど。
――人の心を守る、まして救う方法なんて知らないんだ。
だから俺からエクセターに言えることはこれくらいだ」
フレールは少しだけエクセターの方向に顔を傾けた。
「信じていればきっとエクセターもいつか姉さんに会える。
未来を掴み取ることができるのは力でもないし知恵でもない。
金や名誉でもない......未来を掴み取りたいと願う気持ちだって俺は思ってるからさ。
こういうこと言うとさ、ミリューには馬鹿にされるんだけどな。
俺は信じてるからいつだって守りたいって願い続けてる。
街の人たちだけじゃなくて――ミリューとスールも。
......勿論今はエクセターだってそうだ」
それだけ言い切ってから再びフレールは前を向く。
「それに今俺がエクセターを乗せてるのはエクセターが都合のいい兵士だからじゃないぞ?
――まあも戦う力がなければ違う理由でここまでは連れては来ないけどさ。
俺たちもエクセターがただ戦うだけの兵士でしかなかったら手伝って欲しいなんて思わない。
少なくとも俺が今後ろに乗せてるのは、面白い奴だって思ったからだ。
今までどう生きていたかなんか関係ない。
俺は今のエクセターしか知らないからな、それだけは何も変わらない」
フレールの走らせる馬は止まることなく草の上へ駆け抜けていく。
* * *
一方ミリューの前に乗せられながら、フィンも丘の上を駆けていく。
この世界について聞く中でフィンにはひとつ気になったところがあったらしく。
>「襲来......街に、ですか?それとも、家畜かなにかをねらって?そういうこと、多いんですか」
ミリューに早速問いかけてみた。
「街というよりは丘の辺り――もう少し外側ですね。
時々こういう風に動物が凶暴化することがあるんですよ。
今回もまた襲われた人がいたので、早急に対策を取ることになった訳です」
ミリューの話だと動物が凶暴化することはたまにあることだそうだ。
特に原因があるとは感じていないようだが。
どう捉えるかはそれぞれの感覚次第であろうか。
――ただ、二人はそんな緊迫した話だけをしていたわけではない。
兄弟の話をする中でフィンはかつてみんなで暮らしていた時の笑い話をしてみせた。
>「とにかく大人数でちいさな家にぎゅうぎゅうになって暮らしてて......毎日どたばたしてて、楽しかったです」
その時の情景を思い出してつい笑みを零しながら語るフィン。
ミリューの顔を見上げれば、彼の表情もまた自然な笑顔になっていることに気づくだろう。
「僕にも覚えはありますが......。
大変だったことでも思い返してみれば楽しいこともあるものです」
少し左上の方をぼんやりと眺める彼の顔はとても柔らかな印象を覚えるものであった。
* * *
>「妹さんのお住まい......青い瓦で、ずいぶん立派ですね」
フィンはポチを通して見た景色の感想を素直に述べる。
「そうですね。
スールの嫁いだ先の相手は相当な富豪であるとの評判です。
尤もスールにとってお金は一番大事なものではありませんが」
ミリュー曰く青髭の男が相当な富豪であることは間違いないらしい。
やはり物語と幾つか合致しているところもあるようだ。
――再度フィンがポチと視覚の共有を行えば城のすぐ傍まで見えることだろう。
大きいが、その巨大さが静かさと空白を増強し、寂しげな印象を掻き立てる。
城の周囲を飛んでも人の気配はあまり感じられない。
部屋の中によっては誰かの姿があるのかもしれないが。
* * *
しばらく馬を走らせた頃。
フレールがエクセターを乗せたままミリューの馬まで少し寄せていく。
「そういえば、この辺りには花畑があったよな。
スールは花が好きだしさ、ちょっと摘んでいかないか。
俺たちからは贈り物を何も用意していないだろ?」
フレールは近くにある花畑に寄りたいようだ。
丘の上にいる妹に贈るのだという。
「馬鹿なことは言わないでください。
僕たちはまだ任務の途中だっていうことはわかっていますよね?
それにせっかく手伝っていただいてるお二人をお待たせするわけにはいきません」
ミリューはフレールの提案については反対らしい。
フィンとエクセターに迷惑をかけることを気にしているようだ。
「まあ......それもそうなんだけどさ」
フレールは理屈ではわかるようだが。
感情では受け止められはしないようだ。
二人だけだと簡単には話が決まらないかもしれない。
フィンとエクセターがちょっとだけどちらかを後押しすれば変わるだろうか。
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あんみつ@GMより
エクセターのフィンとルート進行です。
長文で答えてくれたエクセターにはTPを1点、
かわいいかわいいついでに兄弟もかわいいフィンにはCPを1点差し上げましょう。
お二人は次の行動を選択してください。
具体的なものは以下の2つです。
・フレールの味方をしてみる
・ミリューの味方をしてみる
他にも何かございましたらお好きにどうぞ!