ひとりにさせない
>「そうですね。
スールの嫁いだ先の相手は相当な富豪であるとの評判です。
尤もスールにとってお金は一番大事なものではありませんが」
ポチの景色でお屋敷をながめながら、僕の耳はミリューさんの声を追っている。
「......そういうの、素敵ですね。旦那さんって、どんな方なんでしょうか」
ポチはお屋敷の外壁に沿ってぐるりとまわりはじめる。青い瓦と灰色の壁がなんとなく不安な気持ちをかきたてる。
「スールさんが、旦那さんとのご結婚を決めた、その決め手って、なんだったんでしょう」
「青ひげ」はこの世界でも富豪だけど、「お金よりも大切なもの」を持っていて、スールさんはそこにひかれたという。
もしかしたら、「僕の知ってる『青ひげ』」と、「この世界の『青ひげ』」の違いを知ることができるかもしれない。
僕はそう期待して、ミリューさんの答えを待った。
ポチが、大きな窓のひとつをかすめるように飛んだ。
その窓辺にたたずむ、真っ白な人影。これが、スールさん?いや、ちがう、これは。
(カレンさん!)
僕は動揺した。とたんに、目の前に草原の景色がとびこんできた。集中がみだれて、ポチとの視界共有が切れたんだ。
(ポチ、ちかくの木に止まってそのまま待っていて)
カレンさんが、青ひげの屋敷に。スールさんもいっしょだと思うけど、だいじょうぶなんだろうか。
この世界の青ひげは、いったいどんな。殺人鬼なのか、そうじゃないのか。
どうしたらいい。どうすれば......。
ともかく、カレンさんのもとへ急ごう。狼退治をはやくすませて、青ひげの屋敷へ。
そう思ったとき、フレールさんがエクシーを後ろに乗せて、僕たちのほうへ馬を寄せてきた。
>「そういえば、この辺りには花畑があったよな。
スールは花が好きだしさ、ちょっと摘んでいかないか。
俺たちからは贈り物を何も用意していないだろ?」
「あっ......。あ、えと」
その提案はとても素敵で、ふだんの僕ならいちもにもなくうなずいただろうけれども。
僕は困惑して、フレールさんを見て、エクシーを見た。
>「馬鹿なことは言わないでください。
僕たちはまだ任務の途中だっていうことはわかっていますよね?
それにせっかく手伝っていただいてるお二人をお待たせするわけにはいきません」
さっき、兄弟について語っていたミリューさんのおだやかな表情を思いだして、僕はとっさに「気にしないでください、お花つんでいきましょう」って言いそうになった。
でも、ポチの眼から見えたんだ。青ひげの屋敷にカレンさんがいる。
>「まあ......それもそうなんだけどさ」
僕は背負い袋のなかみをごそごそとたしかめた。そして、もじもじと切り出した。
「あの......。さっき、僕の使い魔の目線からお屋敷を見てみたんですけど、どうやら僕とエクシーの仲間がお邪魔してるみたいなんです......。カレンさん、っていう女性なんですけど」
申しわけなさでちぢこまりながら、僕はなんとか続けた。
「フレールさん、ミリューさん、ごめんなさい...。スールさんへの贈り物にできるようなもの、僕も持ってません。飾りもついてない手鏡や、地味なハンカチじゃよろこんでもらえると思えないし......。だけど、カレンさんもきっと、僕たちとおなじように、突然ここに迷いこんで不安に思っていると思うんです」
どうしたらいい。どうするのがいちばん、いい?......どう、したい?
「僕、カレンさんのそばに、早く行ってあげたいです。もちろん、任務のお手伝いはしっかりします。スールさんへのお土産なら、僕やエクシーが、すこしはめずらしい話をできると思います。僕たち、話、あんまりうまくないですけど......」
そこまでいいかけて、だいじなことに思いいたった。
「とても話の上手な仲間もいるんです。ネスさんっていって、楽器も占いも得意です。それから、国の精鋭部隊にも所属してる戦士のロセウスさんと......。彼らもきっと、どこかにいて、おたがいにおたがいを探してるんだと思います」
エリックさんから見せられた本のページ。みんな、物語の概要はつかんでるはずだ。きっと、物語がつむがれていくなら、その舞台となるだろう「青ひげの屋敷」を目ざして集まるんじゃないかな。
「僕たちが......みんなが、そろったら。きっとスールさんにも、フレールさんとミリューさんにも、もしかしたら旦那さんにも、花束に負けない贈り物ができると思うんです」
僕はどうにかバランスをとると、まっすぐ顔をあげて、みんなを見た。
「だから、すみません。今は、先をいそがせてください」
――PL(雪虫)より―――
PLの気持ちとしては、スールさんにお花をつんでいってあげたいフレールさんに賛成なのですが、青ひげ屋敷にカレンさんがいることがわかりました。
他のおふたりがどこにいるかはわかりませんが、とにかくカレンさんが心配なので合流したいフィンです。
最初の質問では、お兄ちゃん(ミリューさん目線)からでよいので、青ひげとスールさんをつなぐ絆がどういうものなのかを知る手がかりにを得られたらいいなと思います。
お花のかわりにお話をするよ!の提案ですが、やや大人組ネスさんとロセウスさんに投げっぱなした雰囲気もありつつ。
ネスさんだったらスールさんも楽しめるお話ができるだろうし、ロセウスさんとフレールさんって話が合いそうな気がします。